暗殺
翌日、エリーンたちと俺はジェローリアに戻った。むこうでは夜だが時差を気にしてはいられない。
「わらわはレンドル公爵第一皇女でこの荘園の主である。スティリアスよ、よく来た。ここにいるのは全員ショウの妻で、これからそなたとともに家族として力を合わせる者たちじゃ、みなそなたを歓迎しておる。」
リム、青筋立てて話すのやめて。
「ペルカです。山の民です。よろしくお願いします。」
いつもの土下座攻撃だ。すんなよ。
「ミドリです。理由があって人型ですが、ほんとは畑の民です。」
「ハルカです。ミドリと同じく、ほんとは畑の民です。いつもは町におります。」
メレンタスがなんか言おうとしたので、いつものように排除した。
「サフィアスの母サイクスです。ほんとに美しい人ですね。その上魂の波動もすばらしくて、さすがショウ様のお眼鏡にかなった人です。」
おい、リムの血管切れるぞ。
「皆さま、この度は縁あってショウ様の元に参りました。皆さまのような素晴らしい活躍ができるか不安ではありますが、全力でショウ様にお仕えいたします。」
その後はささやかに宴会となった。みんながスティリアスのこれまでの事を聞いて、改めて南半球でのカソーピアの蛮行を意識した。
「スティリアス、そのペンダントはどうしたのじゃ。」
「あ、これですか、祖母が亡くなる直前に、形見で持っておくように言われました。」
「ちょっと、見せてくれるか。」
「はい、どうぞ。」
リムがペンダントを壊さないかはらはらしながら俺は見守る。
「ありがとう。」
リムは何事もなくペンダントを返した。その夜からスティリアスは新たに建てられた小屋を割り当てられ荘園に場所を得た。
その夜はリムと一緒だった。当面しっかり罪滅ぼしだ。
「今日はどうしてスティリアスのペンダントを見たんだ。」
リムは人型で俺の腕を枕にしている。
「ペンダントなどは平民が持つものではないぞ。」
「そうなんだな。」
「ペンダントには中心の宝石とそれを取り巻く飾りにはその家の家紋がデザインされるのが通常じゃ。なので紙に移しておいた。」
リムが紙を差し出した。凄いな。
「これは正確なのか?」
「馬鹿にするでない。空の民は見たものを意識すれば記憶に留めることができるのじゃ。」
そんな特技あるのか。
「その紙をどうするの。」
「実家の儀式担当に問い合わせようと思うておる。」
「何のために?」
「それは家族のことを深く知るために決まっておろう。」
「家族と認めてくれるのか?」
「それはショウが選んだ娘じゃ。わらわが認めないなどありえん。」
「ありがとう。」
俺はリムを抱きしめた。
翌日みんなが山小屋前の広場で朝食をとっている。スティリアスも出てきて、サイクスとメレンタスがフォローしてくれている。サイクスが俺を手招きする。
「みんな、おはよう。お義母さん、おはようございます。スティリアスよく寝たか。」
「はい、素晴らしい小屋です。」
「ところで、スティリアスの親戚はモウルさんの建設作業に来てるんですか?」
サイクスの質問にスティリアスは少し考えて答える。
「兄弟が2人といとこが5人来ていますね。どうしてですか。」
やはり多いな。
「明日から迷宮に行ってもらうのでその段取りに必要なんです。」
「でも、私も他の者もレベル1ですから、役にたちませんが。」
「大丈夫よ。いるだけで良いから。」
そんな話をしていると、エリーンが近づいて来た。
「ショウさん、覚醒用のMP薬はこれで足りますか?」
それから相談をして、ショウルの迷宮で45階層まで行きエルフ3人、獣人8人を一気にレベル45まで上げることにした。
前衛パテ ショウ、リム、フォイヘス、サフィアス、メレンタス、ペルカ、スリニー
ファロリアス、シュレンモハン
中衛パテ エリーン、レモルクス、獣人8、
後衛パテ サイクス、コントピロ、アカシュ、シュレンモハン、メイガロマトン、
ビジェイ、エルフ3
防具が完全に良いのができていないので、獣人とエルフの新人に良いのを付けさせて、少し落ちるのをHPの高いドワーフが付けた。すまんな。30階層入り口と、45階層入り口で居座る予定なので、移動中は前衛重視でどんどん殲滅する。リムは今回フォイヘスに乗って、エリーンは中衛で回復に集中する。ケンタウロスが4人いるので物資運搬は余裕ありになっている。後衛では異常事態に備えてサイクスが目を光らせる。居座ったところでパテを組みなおして、新人に経験値が入るように調整する予定だ。今までのレベル上げは上位迷宮だったので、今回は間違いなく時間がかかるはずだ。難易度が低い分、仕方がないが、普通の迷宮でのレベル上げの時間も分かるだろう。
翌朝、参加者はリショウム迷宮からショウム迷宮に移動した。30階層から一度地上まで戻る。そこでモウルとスティリアスの親戚を呼び集める。全員が集まり、侵攻手順を説明する間、俺は黙々と覚醒とMP薬を飲むのを繰り返す。事情を知らない奴らは、珍しいものを見る目で眺めている。また下痢になりそうや。
「さあ、行くよ~。」
モウルのちょっと間延びした掛け声で一同は迷宮に進んだ。エルフたちは既にレベル30なので気楽な感じだが、獣人は全員が初迷宮なので緊張している。でも前後を守られているので、問題はないはずだ。
30階層までは、出てくる魔物を瞬殺して進んだので、後衛が後ろから魔物に追いつかれることもなかった。迷宮が初めての獣人たちにとって、前の方で騒いでるのを垣間見ながら小走りで迷宮を進むという奇妙な初体験となった。30階層に到着したのでパテを組みかえて左、中、右の編成にしてなるべく均等に経験値が入るようにした。時間はかかった、感覚的には上位迷宮の3倍だ。しかし30階層では舐めプで、前で戦ってる後ろで獣人やエルフが食事の調理をしてる。一日かかって獣人全員レベル30になった。これでステータスもあがり、中層でも安全だろう。スティリアスのステータスを見る。
スキル 加速 特技 暗殺
なんじゃ、こりゃ。俺はスティリアスに近づき、耳打ちした。
「おい、暗殺の特技はまだ誰にも言うんじゃない。」
「わ、わかりました。」
スティリアスは震えながら答えた。他の獣人たちやエルフもステータスをみて歓声を上げている。この光景はいつ見ても良い。
「さあ、これから本番だよ~。行くよ~。」
またまた、モウルの気の抜けた掛け声で31階層に向かう。30階層で順に休憩していたからここでは休憩なしだ。
31階層から35階層までは、アイスウルフ3、熊2、バッタ1だ。バッタ対策で中衛との間を前後とも少し開ける。後は一方的な殺戮で進む。道はサフィアスがレーダーで探知するので1時間で1階層を抜けていく。36階層への降り口で休憩をとる。また後ろの方でエルフと獣人が調理してみんなに振舞う。今まででは考えられないのどかな風景だな。
36階層から40階層までは、バッタ3、へび3、大蟻10だ。コントピロを前衛にあげて、へび対策の状態異常回復に備えた。後は淡々と殲滅していった。ここも5時間で通過だ、順調だな。同様に食事を採って、魔法が来る41階層だ。
くらげ1、虎1,ヤマアラシ2か、話にならんな。また淡々とオーバーキルを繰り返して45階層まで5時間で到着した。何回か獣人が雷の麻痺を受けたが、みんな歓声を上げて珍しがっている。緊張感なさすぎや。45階層でもまた後ろで新人たちは調理して前衛に振舞った。完全な舐めプや。そして一日で新人はみんなレベル45になった。
「三日かかりませんでしたね。」
サイクスがスープを飲みながら俺を見る。言いたいことは分かる。
「まだ物資は半分以上残ってますね。」
リムやエリーン、モウルも寄ってきた。
「ショウどうする?」
リムが俺に聞く。
「みんな、ショウの家族じゃ。ショウの判断に従うぞ。」
空中で舞うリムを捕まえて抱きしめる。
「50まで行っとくと、またスキルや特技が手に入るかもしれない。ここで先にレベル上げて、その後リムの迷宮に行こう。」
みんなが歓声を上げた。おれはサイクスに呟いた。
「暗殺って特技知ってますか?」
「それならクリティカルがでたらほぼ相手を瀕死にする特性ね。」
即答かよ。
「凄く強力だけど、そもそもクリティカルが確率低いからあまり頼れないわね。」
「確率はどれくらいなんですか?」
「普通は1%以下だけど、弓技とか剣技あると5%だったかしら。」
これは低いな、これなら人に知られても良いな。
「ショウ様」
スティリアスが近寄ってくる、涙目だ。
「どうしたんだ。」
「なんか変なことになってます。」
スキル 加速 剣技 特性 暗殺3
「お、おまえ、スキル抽選全部当ててるのか!」
「確か抽選は1割くらいだと聞いていますが。」
こんなやつにガチャ引かせたい。
「とりあえず内密にしておけ。」
スキルや特性は2以上になると簡単な説明が自分でも見れる。聞いてみると、
暗殺2 クリティカル率が5%上がる。クリティカル発生時、すべての防御効果を無効にして相手のHPを1%にする。
暗殺3 クリティカル率が10%上がる。クリティカル発生時、すべての防御効果を無効にして相手のHPを1%にする。
何と剣技と合わせて15%か、加速を使えばすさまじいな。




