1コル銅貨
風呂からでると、ドロンが山小屋に帰ってきていた。
「ドロンさん、募集ありがとうございます。どうでした。」
「やはり、年棒一万コルだと、殺到しました。千人ほど応募がありましたが、良さそうな五百人をリストアップしました。」
「それはご苦労様です。早速迎えの船を出しましょう。」
「我々の島、ベルーティアは裏側ですので船だと、遠いですね。甲板にずっといるのも辛いです。できれば迷宮経由が良いかと思います。」
「ベルーティアには迷宮がいくつかあるのですか?」
「はい、3か所見つかっています。二つはエンタブルの人間に売却してますが、一つは草原の民なら使えます。」
「そうですか、早速その迷宮に迎えのパテを送りましょう。」
500人だとゲート利用料が五千万円だが、今の財布なら問題ない。シュレンジュに段取りを丸投げした。
そうしていると、次はメイガヘリスがシンリアスで技巧を獲得した親戚を連れてきた。なんと技巧3が4人もいる。技巧2も10人以上いる。
「これは凄いな。」
「ショウ様、技巧持ちがどのような働きをするか相談に来ました。」
「技巧3がこれだけいると工房も色々できるな。メイガヘリスはどう考えてる?」
「はい、造船、シンリアスの運搬改善、宝石、魔道具などが良いかと考えます。」
「そうだな、それなら技巧3の4人は年棒10万コルでその仕事で良いか?」
4人の技巧3は驚き顔を見合わせている。
「そんなに、いただいて良いのでしょうか?」
「それだけの価値のある仕事だ。問題ない。技巧2も年棒3万コルで雇おう。」
一同は歓声を上げた。
「メイガヘリスには別の事を頼みたい。」
「何でしょうか?」
「1コル銅貨を作って欲しいんだ。」
「1コルですか?」
「そうだ、今の百コル銅貨だと、高すぎて使いにくい。銅1%、鉄99%の硬貨をシュレンビータの鉱山で作って欲しい。向こうで銅鉱脈が見つかったからな。1コル銅貨は数がたくさんいるから、その仕掛けも考えて欲しい。」
「はい、わかりました。早速とりかかります。」
実は宮脇先輩とゾンタークにコンサルを頼んでいた。最初はそんな雲をつかむような設定ではできないと断られたが、大きな宝石を報酬にすると言ったら、しぶしぶ引き受けてくれた。それからが大変だ。データをあれもこれも持ってこいと言われて結構苦労した。俺だけではやり切れないので、経営持ち一人をそれ専任で雇った。その下にケンタウロスやドワーフ、ノーム、オークを付けて数字の収集や聞き取りのチームを作った。
貨幣経済を入れることが最初のチャレンジだったが、その為には貨幣の流通量を飛躍的に上げる必要があるようだ。俺はそんなことしたら貨幣の価値が下がるんじゃないかと言ったら、二人に鼻で笑われた。物々交換の土地を貨幣経済にするのは膨大な量がいるようだ。そんな中で百コルだけでなく1コルの銅貨も作るように言われた。よくわからんが。
その日も色々な人が次々と来て忙しかった。日も暮れたので、アイの護衛はそこまでだ。その後は俺はエリーンのスケジュール表に従って夜を過ごす。
「アイ、今日もありがとう。ここまでで良いよ。」
「はい、毎日お忙しくて、お体は大丈夫ですか?」
「心配してくれてありがとう、少し体が凝ったが大丈夫だ。」
「よろしければ、マッサージ致しますが。」
「そんなことができるのか?」
「はい、カソーピアで奴隷の生活の準備で、」
アイは下を向いた。
「そうか、それはつらいことを思い出させたな。すまない。」
「いえ、王様に喜んでいただけるなら、むしろありがたいことです。」
「そうか、それなら頼んで良いか?」
「はい、喜んで!」
アイの目が輝いた。俺は小屋からアイを連れて清里に飛んだ。
「ここは、清里ですね。」
アイは袋から出ると、廻りを見回した。
「そうだ、この前一か月みんなで過ごしたところだ。」
「時間が遅くなる、魔法の場所ですね。また来れて嬉しいです。」
アイの耳が赤く染まる。何を思い出しているんや。清里は寒い。俺はストーブに火を入れた。そして布団を敷いてそこにうつ伏せに寝た。
「じゃあ、頼む。」
アイは、防具を脱いで、手に持っていた俺の服を横に置いて、マッサージを始めた。なかなか上手や。
「人質のみんなは少しは元気になったか?」
「はい、おかげでほとんどの人が落ち着いてきました。」
「まだ、ダメな人もいるんだな。」
「はい、数人はまだ、時間がかかりそうです。」
「そうか、ゆっくりでいいから、5人がしっかりサポートしてくれ。」
俺の背中に涙が落ちる。
「どうかしたか?」
「いえ、王様のやさしさに、」
「家族のことだ、当然だよ。」
「あのように、忙しく働かれて、その上お気遣いいただき、感謝しかありません。私はそのような王様にこんなことしかできません。」
「いや、マッサージ上手だぞ。」
アイの指に力が入る。痛い。
「王様のお傍にいると、社会が複雑な仕組みで動いていることが少し理解できました。」
「俺にも深くは分からないが、できることはやっていくよ。」
「それに、種族を差別せずに使われる姿勢も素晴らしいと思います。」
「さすが、アイ、よく見ているな。」
「それでは、上を向いて下さい。」
俺が上を向くと、アイは俺にタオルをかけた。
「どうしたんだ。」
「いえ、刺激が強いので。」
「アイにはずっと人型で苦労をかけているな。」
「お役目ですから当然です。」
「これから週に2回はここでマッサージをしてくれ。体が楽になる。」
そう言いながら、俺はアイを抑え込んだ。
「そ、それはいけません。エリーンさんに怒られます。」
「いやか?」
「とんでもない!嬉しいです。」
「エリーンには内緒だ。」
3時間ほどして、俺たちはストーブにあたっている。アイは赤道付近の島出身なので寒さには弱い。
「寒くないか?」
「はい、トレーナーというのを着せていただいてますから。」
これは眼福だ。
「差し出がましいことですが。私はこんな時間をとっていただいて幸せですが、他の4人ももう少し王様とゆっくり時間を過ごしたいと思っていると思います。」
「そうだな、昼の時間はそんな使い方を考えよう。」
リムと交渉だな。恐らく決裂しそうだから。昼は2部制やな。




