#002C 帰り道 / Way Back Home
なんでこんな遅いの?
会話シーン書くの苦手すぎて嫌になる。
作戦会議室を出て基地の飛行場へと出た僕の思考はいまだに霧の中にあった。
――この世界には奇妙な事象が多すぎる。
たとえば、知的種族が皆同じ言語を持っていることは
もはや当たり前のことと化しているけど、よく考えればおかしいよね?
古い文明がいくつもあるのに、僕たちはあくまでその残骸から
過去の記憶を掘り起こすだけで、直接的に継承された知識というのは
実際のところ今まで一つも知られていない。
それぞれの文明の間にある断絶はあまりにも不自然な形なんだ。
たとえ大きな災害で滅んだとしても何かしら
次の世代とのつながりがないのはおかしな話で、
これだとまるでその文明に属していたすべての種族が一度絶滅して、
次の世代が新しく生まれたように感じられる。
もしそうなら、旧文明の者たちは
今の世代の祖先ではないということにもなるかな。
ここまででも歪な構造だと思うけど
僕の知っているおかしなことはほかにもある。
それはこの大陸、いや、この世界にはだれが作ったのかわからない
大規模構造が多数存在していることだね。
昔、僕たちのコロニーのすぐ近くで出自不明の遺物がみつかって
大きな発掘調査が行われたことがある。
掘り出されたのはどれも既知のどの文明の様式とも一致しない奇妙なものばかり。
それに――ん? ……。
コロニー、発掘現場……柱……。
ああ……。
それに気が付いたとき、身体から命そのものが抜けるような感覚がした。
身体を流れる赤い血が青く染まり、氷のように冷たくなるような。
思考も身体も言うことを聞かず、頭の中はただ
同胞たちに迫る危機という一色に染まってゆく。
あれは……あの柱を見たときの既視感の正体は。
僕があれを初めて見たのはコロニーの近くの発掘現場から
掘り出されて運ばれる遺物の中だ。
運搬用の台車に収まり切らないほど大きな柱。
あれは単なる装飾品なんかじゃない。
みんなのもとに帰らないと! 軍に知らせてあれを取り除かないと!
僕は動くことを拒む体を、杭で打ち付けられた脚と翼を
引きちぎるようにして強引に動けと命じた。
でも、地面を蹴って体を宙に放り出そうとする脚は唐突に動きを止める。
ああ……混沌とした僕の意識の中に残された理性がそれを阻止したんだね。
浮かび上がる仲間たちの姿。
そしてあの柱のすぐそばに住む人間たちの姿。
彼らを助けないとという恐れと焦燥に支配されてなお、
僕のどこかには冷静さが残っていた。
そうだね、このまま飛び立ったところでどうすることもできないんだ。
生身で飛んだらここからレア村までは1日以上かかる。
たとえたどり着いても機密情報を漏らすわけにはいかないし、
結局は王国軍に任せることになる。
なら戻ってあの二個体にこれを知らせた方がいい。
まだこの基地にいるはずだよね? そうであってほしいと願うばかりだよ。
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冷静さを取り度した僕は会議室の近くまで戻り、
憲兵にあの二個体の行方を尋ねる。
「通常ならそれは教えられないがね、あんたの場合は
教えた方がいいんだろう。マティス中佐なら指令室に戻っているから
事情を話せば入れてもらえるはずだ」
彼はあきれた様子で顔に手を当て俯くけど、それでも答えてくれた。
これも僕の今までの功績のおかげ……なんだろうね。僕自身に感謝しないと。
「ありがとう、本来こんなこと聞いちゃダメなのにね。じゃあいくよ」
答えてくれた憲兵に礼を言い、指令室へ急ぐ。
必要なことだけを簡潔に伝えて、僕は僕で仲間のところへ向かうべきだろう。
事情を説明して中へ入れてもらい、僕は故郷のすぐそばにあるあの遺物――
例の柱について説明して現地の王国軍と連絡を取ってもらうように頼んだ。
あそこは直轄領じゃなくて属国の領土だから手続きに時間がかかるかもしれない。
でも、やらないよりはやった方がずっといい。
彼らに任せつつ僕も故郷へ帰ろう。
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基地の居住棟を出るとそこはすぐ飛行場だった。
空調の効いた室内から出たせいですごく暑い……。
雲一つない快晴の空の下にある駐機場には
連合防衛軍の一般的な輸送艇が1機、攻撃艇が4機。
でも、今はそんなことはどうでもいいんだ。
早くテレイルに戻ってケーリムと合流しないと……。
周りに誰もいないことを確認して、さっそく飛び立とう
――そう思った時、遠くからかすかに聞こえる回転翼の音に気が付いた。
その響き方からしてちょうどこの基地にある輸送艇と同じくらいのサイズかな。
何はともあれ上に上がって様子を見てみようか。
改めて安全確認をして、傷が嘘のように消え去った体で僕は空へと上がる。
音がするのは西の方だね。……あれかな?
旋回しつつ高度を上げていくとちょうどテレイルの方の空に
こちらへ向かう輸送艇の姿が見えた。
速度を落として着陸態勢に入っているし
どうやらこの基地に戻ってくるみたいだ。
戻ってくるのなら少し様子を見てみようかな?
僕は高度を下げながら輸送艇の後ろまで大きく回り込んで、
着陸の最終接近に入るそれの後を追いかける。
そして、乗降用のランプが見える位置に一緒に着陸した。
少し待つと輸送艇の回転翼は止まり、ランプが開いて乗員が降りてくる。
乗っているのは標準的な装備の連合兵と……あれはケーリムだよね?
――彼のもとに戻ろうと思っていたところなのに、
彼の方からこっちに来てくれた。
「ケーリム?」
「セルン! 君が大けがをしたって聞いて心配してたんだぞ!」
輸送艇から降りる中僕の声でこちらを振り向くケーリム。
お互いに目が合った瞬間、迷いのある僕の言葉にまっすぐな彼の言葉がぶつかった。
傷が完治したことを聞いて様子を見に来てくれたんだろうね
……本当に、ごめん。ケーリム。
「心配をかけて本当にごめん。
生身になった瞬間これなんだ、僕もまだまだ未熟なものだよね」
こちらに駆け寄ってきて傷跡がないか僕の身体を観察する
ケーリムに対して僕が発した言葉はやはり弱弱しくて……
普段の僕のそれとはまるで異なるものだった。
自分でも信じられないくらいに。
でも、今僕が彼に言えることなんてこれくらいしかない。
「セルン……装備なしじゃみんなそんなものだよ、君は気にしすぎなんだ。
だからこそ僕はいろんな装備を開発してるわけで。
まあとにかく、少なくとも体は元気なようで何より」
ケーリムが僕に掛けた言葉は、励ましているようで少し呆れているような。
でも間違いなく明るいものだった。
はぁ……。君は前向きだね。
前向き……。ラスもよくそう言っていたな。
つらい過去ばかり振り返ってはいけないって。
失敗から学ぶのは大事だけど、それに引きずられてはいけないって。
うん……君の言う通りだよ、ラス。
「……まあ、そうだよね。装備を外したまま
無茶をするものじゃないよね。ありがとう」
不安と焦りに……ある種の劣等感? 砂漠の地下で傷を負ってから、
明らかに弱さと迷い、そして恐れが
僕の頭の中でちらつくようになってしまった。
「ほんと、もっと僕の技術を頼ってよねぇ。
ま、快復したことだし一緒にテレイルに戻って
装備調整の続きといこうじゃないの」
「そうだね。こっちまで来たばかりですぐにまた帰るというのは
変な話だけど……うん。3日もあったんだし、
君の仕事の結果を楽しみにしているよ」
「ふっふっふ、完璧に仕上げてあるから試してみて驚くといいよ」
でも、いつの間にか普段通りの自信満々な態度に戻っている
ケーリムの言葉はとても心地よかった。
必要以上に心配しない。いつも通りであることそのものが
今の僕を落ち着かせてくれる。
「うん。期待してるからね、ケーリム」
装備がなければ僕はただのどこにでもいる平凡なワイバーンだ。
でも、それは別に僕に限ったことじゃない。
同胞たちも同じだし、他の種族でもまた同じ。
発掘キャンプでの失敗は冷静さを欠いたゆえのものなんだ。
普段の僕ならもっと慎重に進めることができたはず。
だから、今の僕に必要なのは精神的な安定性。
その精神の安定がどこから来るのか? 答えは簡単だよね。
強力な装備があれば心に余裕が生まれる。
そしてその余裕は落ち着きをもたらすんだ。
「……えー、悪いけど整備が終わったらまたテレイルに戻ってもらえる?」
「あー、了解。機外に出てしばらく待っててください」
……おっと。
操縦士の彼には悪いね。
はは、せっかく気持ちの整理が一段落したというのに締まらないなぁ。
「ま、まあ輸送艇の準備ができるまで僕が寝てる間のこととか教えてよ」
「もちろん」
輸送艇から降りて邪魔にならない場所へ移動する彼の後に
続いて歩きつついつものように交わす会話。
僕もケーリムのおかげですっかりもとの調子に戻ったみたいだ。
TO DO: Any
何か書くことあったらあとから追加します。




