表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で過ごす休暇の為に  作者: ますかぁっと
38/38

聖魔術師キエラ

『賢者』は魔術を極めた魔術師の位階の一つである。


ちなみに聖『魔術』を極めた者は『司祭長』とか呼ばれたりするが、それは多くの聖魔術師を擁する教会側が俗物的な呼び方を良しとしていない為だ。


ともかく今現れたキエラとゆう人物も聖魔術に秀でた賢者の1人だ。



「重度の内蔵損傷…内出血もそれなりにしていますね…。とりあえずは痛みを和らげて治癒活性を高めておきます…。」



アンナの腹部と当てていたキエラの手との間から暖かい光が零れてくる…。聖魔術独特の光だ。



アンナが浮かべていた苦悶の表情が和らいだ様に見えた…。



「…大丈夫そうだな。じゃあ、俺は戻る。」



壊した物を治すことに関しては俺は正真正銘の素人だ。


何よりその道のプロが看てくれているのだ。心配する必要も無い。



「……さてと……倒してくるわ……。」



「……怪我しないでね…。」



気絶していると思っていたが既にアンナには意識があった。


「なんだ起きてたのか、心配して損したわ。」



「えぇ?!。……珍しく心配してくれて嬉しかったのに……。」



あーあ、損した…。でもまあ、



「仇くらいは取ってやるよ。じゃあな。」



「うん…。私の分まで頑張ってきてね。」



アンナと目が合う。久しぶりに自分からなにかしてあげたいと思った…。


アンナに蹴りを打ち込んだケイオスに対してイライラしているし、アンナからの言葉に少しポカポカもする。不思議な感覚だ。



ゴンっ!、ズシャァァァアッッッ……。



とか考えていたら誰かが吹っ飛んできた。



とゆうかジャックが吹っ飛んできた。



「そ、そろそろこっちの方も手伝ってくれませかね?。」


「…あっ!、そうだった。いや、今から行く所だったんだよ。」



ジャックを見てみると…大した傷は無さそうだ。顔にあざのような物がひとつ見えるが…他は問題なさそうだ。



「私との力の差の前ではその男は回避で精一杯だったぞ?。まあ、それでもこうしてダメージを負わせているがな。」



ケイオスが現れた。


依然としてダメージらしい物は見当たらない。


あの狼男のような姿が解除される兆しも無い(時間制限なしの変異とゆうことは二度と人の姿に戻れないとゆう事でもあるが)。



「あれ?ジャックさん!!。何故ここに?。」



キエラがいきなり高い声を上げた。



「んん?…。キエラさんこそ逃げ遅れたのですか?。早くここから去ってください。」


「何言ってるんだ?。彼女も立派な『賢者』だぞ?。俺よりは古株の。」



キエラは5年前に21歳で賢者になった人物で、俺の次に若い賢者なのだ。



「……そうでしたか…。子供達も無事ですか?。」


「はいっ!。既に避難させたので戻ってきたのです!。」



中々に大きい胸を張りながら得意気に答えるキエラ。いいからアンナを運んでくれ……。



「おい、そこら辺の話は後にしてくれ。ケイオスが待ってる。」



「あぁ、これは失礼。まずはこちらが先ですね。」



「おいケンラ。お前は私以外の賢者にも敬語を使わんのか?。本当に出来たやつだな、親の顔を見てやりたい。」



まあ、基本的に敬語は使わないな。


敬語に関しては人物よりも場面で使い分ける感じがある。

まあ、とりあえず父さんと母さんをバカにしたのだけは分かった。




「それならてめぇで見に行けよ。俺が送ってやるから迎えに来て貰えるよう言っといてやる。起動・極化多光撃(ギーヴ・テラレイン)!!!!。」



起動・血(ギーヴ・ブラッド)障壁(プロテクト)っ!!!。」



ケイオスの前に現れる赤い障壁。


血の魔術は実際に血を使うものと血のような現象体(物理干渉する魔力)を発現させるものの2種類ある。



ケイオスの場合は後者で激しく流れる鮮血のような物が盾のようにケイオスの前に立ち塞がり、そこへ光撃が当たる。



先程までとは強度が段違いだ。



「後ろから失礼。」



「押し売りはよそに行け。」



ジャックが突き出すナイフ左腕を魔術の維持に使っているためそれを右手1つで捌く。



後ろに引いたナイフを再び突き出すジャック。ひたすらに…突く…。



だが何度やっても捌かれる。腕力や瞬発力に大きな差が有るのだ。



少しして後ろに引くジャック。ケンラの射撃が止まったので1度引いたのだ。



(ふう…まだですかね…。)


召喚・血(サモン・ブラッド)(テンペスト)っ!!!。」



詠唱をするケイオス。それが終えると突如街が赤く照らされる…。



「俺に力を寄越したこいつは…確かに魔術を使うには向いていない…。だがな、それでも神の力は絶大なんだよ!!。」



上を見上げるジャックとケンラ。


そこにはとてつもなく大きな魔法陣が赤く輝いており、その光が彼らと…彼らの街を照らしていたのだ。



「もうこの国は無理だ…。お前らのせいで俺の印象は最悪だ……。1度綺麗にこの印象を『精算』してから俺はここを去ろう。」



「ふむ、ケンラさん。あれは見た目通りの危険な魔術なのでしょうか?。」



ジャックが聞いてくる。確かに彼は魔術についての知識がゼロだから分からないのだろう。



「そうだなぁ。この街よりいくらか大きい範囲に俺の極化光撃級の魔術が降り注いでもおかしく無さそうだ。」



それほどまでに強大で、強力な魔術だった。



王都ラナトリスが丸々消滅するとは思えないが、建築物は全て瓦礫に、死傷者多数(多数というより最早過半数は確実に超える)……魔法陣を見ただけでは範囲と威力と性質しか分からないが…。



「こ、これは…ケイオス様が発動させたのですか?!。」



「キエラ?!……。もうアンナを運んだのか?。」



1番近くの病院でもそれなりに距離があるはず…。



「あぁ、アンナさんは病院へテレポートさせて頂きました。ちゃんと床ギリギリに転移させたので衝撃もそんなに無いはずですよ!。」



床ギリギリっ?!……。

それは下手したら床にめり込んで圧死する奴だぞ……。



だが…、ここに賢者がもう1人いてくれて助かった…。俺一人では出来ないことが出来る。



「キエラはあれが発動した時どうにかできるか?。」



「え?……む、無理ですよ。そもそも事象召喚級の魔術でただの破壊魔術を放つなんて聞いたこともありません!!。」



召喚魔術は2種類ある。生物や生命体を呼び出す召喚とあらゆる事象や過去に起きた、あるいは何かの再現を顕現させる事象召喚。



どちらも起動系の魔術を上回る難易度や術式規模を誇る…そんな超級魔術がゴロゴロある。



勿論これは高度な魔術(水の揮発する温度を下げる等)を発現させるのにはその規模がいると言うだなのだ。


燃え盛る業火を作り出すにはその熱量を再現する魔力を魔術でまとめればいい。だが龍の形で暴れ回る炎を作り出すには…同じ熱量でも龍の形と動き回るとゆう性質を添加する為の魔力と魔術式が必要になる。



つまり攻勢魔術は単純であればあるほど効率がいい。



上空に浮かぶ膨大な魔術式で魔力に干渉する魔法陣も…おそらくそんな『単純な攻勢魔術』をただ大規模にしたものだ。



戦争時に交戦が危険な敵部隊を遠隔地から吹き飛ばす戦術級魔術……いや、都市1つを吹き飛ばすなら…その魔術自体が都市機能を消失させるとゆう『戦略的な意味を持つ』…



「『戦略級攻勢魔術』……防御は難しいか……。」



「……破術(ディスペル)はどうでしょうか?。単純な式なのでかなりの量の式を破術しないといけませんが……防御よりかは可能性があります!!。」



確かに…、既に半ば発動しているような気もするが…、それでも破術を進めれば威力が落ちたり、規模が狭くなったりはするだろう。


それならば…



「分かった、キエラは破術を頼む。ジャック!、ケイオスにちょっかい出して発動を遅らせるぞ!!。」



「ん??、作戦会議は終わりましたか?。ズズズズッ……。」



気の抜けた返事をしたジャックは通りの店でお茶を楽しんでいた。


「お前なぁ、最後の晩餐にはまだ早いぞ。」



「あぁ、あれは名画でしたねぇ。ですが残念、イエスは翌日処刑されましたが…」



口をつけていたティーカップをそこら辺に放り投げ、切り分けたケーキを1口頬張ると立ち上がるジャック……。



「私…切り裂きジャックが処刑される日は来ません……。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ