微笑み68
それからとても大変だった。
その日の内にシオンの婚約者が決まった事が全国に知れ渡り、次の日には周辺国にも伝わった。
「あの………気持ちは嬉しかったの。だけどごめんなさい」
最初に告白したクロウ様に正式にお断りの返事を返して、次にアーレスト様にも頭を下げた。
「気にしないでいいよ。残念だけどシオンが幸せなら僕は気にしないから」
アーレストは清々しい気分だった。
胸に少しモヤモヤはあったが、自分は二人に対して出遅れていたし、好きな女の子が幸せならそれで良いと心から思ったからだ。
しかしクロウはかなりショックを受けていた。
自国を救ってくれたシオンに感謝し、本気で惚れていたからだ。
『シオンが幸せなら、諦めないとな』
時間が掛かったが、ゆっくりと立ち直っていった。
「シオンを少しでも悲しませたら許さないからな!」
レオン王子に活を入れるように殴るとその場を去っていった。
「本当に色々な人達に迷惑掛けたのかも………」
「お姉様が気にすることはないですよ。それよりおめでとうございます!」
「シオンねぇおめでとう!レオンのアニキを選んでくれて僕は嬉しいよ」
領地に帰るギリギリの日ではあったが、シオンが婚約者を選んだ事で、急遽両親がくるまで滞在が許可された。
そして───
「まさか、1番可能性の低いヤツを選ぶとは………」
「あら?私は期待していましたよ?あのコーディネートの時だってウエディングドレスを選んでましたしね♪」
父は渋い顔をしていて、母は嬉しそうな顔でやってきた。
「あ、あの………婚約者を選ぶのが遅くなってごめんなさい」
「あらあら♪私は気にしていないわ♪シオンの気持ちが1番大事ですもの。それより、レオン王子のなれそめを聞かせて♪」
お母様、楽しそうですね?
「実は──」
屋敷の応接間に移動してからソファーに座って、シオンが真っ赤になりながら話すと、お母様はキャーと食い気味に聞いていた。
「はぁ~顔を隠して接近だなんて、なかなかやるじゃない♪」
ピキピキッッッ
「あのクソガキめ。うちのマイ・エンジェルの足を舐めただと………どう殺してやろうか………」
お父様は血管を浮かべながら呪怨の言葉を吐いていた。
「シオンお姉様が幸せなら許せるわ。来年には私達も入学するし、しっかりと目を光らせて置きますね!」
「頼むぞ!あのクソガキがシオンに指一本でも触れたらヤッていいからな!」
「父上、それはシオン姉が可哀想ですよ」
「そうよ。あなたシオンの幸せが1番だって言っていたじゃない」
ウグッ!?
「わ、私はまだあの小僧を認めた訳ではないからなっ!」
お父様は子供じみた言葉を吐いて横を向いた。
「まったく子供なんだから」
そんなお父様をみるお母様の慈愛に満ちた顔が、夫婦円満な証拠なのかもしれない。
シオンの両親が領地から急いでやってきたのには訳があった。婚約者に選んだのがこの国の王子だったので国王陛下にお目通りしなければならないからだ。
「明日は朝一でお城へ行かなければならない。カイとリンも一緒に来なさい」
「えっ?自分達もですか?」
「家族全員で国中の貴族達に顔見せするのよ♪」
勘の良いカイは気付いた。
もしかして自分達の婚約者も探すためかな?
能天気なリンはただ楽しみと喜んでいたが、父親である公爵は、王妃となるシオンのためにはフレイムハート公爵家の威厳を周囲に示すために、家族揃って登城するつもりであった。
愚者の声
「はぁ~結婚報告に彼女や彼氏の実家に行くのって緊張するよね」
シオン
「そこはビシッとして欲しいですわね」
愚者の声
「いやいや、男性の方が緊張するから!」
シオン
「何を言っているの!女性の方が緊張しますわ!彼氏の実家に住むことになると、嫁姑問題が発生するので、最初の挨拶は大事なのよ!!!」
心の叫び!
愚者の声
「え、あ、はい。すみません?」




