47話_5歳児の婚姻外交
■リーブル宮殿 皇帝執務室
即位式の準備はほぼ終った気がする。
だが、やはり何か忘れている気もする。
これが、<不安>と言うものなのだろう。
ハンスは賛成してくれんが、5歳児がこんな不安を感じるのは理不尽だ。
もっと、無邪気なはず・・・
「陛下、即位式に関してご報告がございます」
「なんじゃ、ハンス?」
-まだ、働かせる気なのか?
「陛下からご指示いただいた、アメリア主要国との会談でございますが、概ね調整がつきました」
-うん、完全に忘れてた。
「各国の王は即位式前日にご到着になります。本来はフラン王国からお会いいただくべきなのでしょうが、お時間の調整がつきませんでしたので、前日の午後にノットランドのフリッツ皇帝、モンハルのカーン族長にお会いいただくようにいたしました」
-ノットランドは技術力の高い国
-モンハルは馬と強兵の国
「即位式当日の昼にフランのカール王とご会談いただき、サウザンドのデトルト王とウラーナのゴルビン王は即位式翌日の午前と午後で会談を予定しております」
-サウザンドは、人は多いが飢えている国
-ウラーナは神を信じる国
「承知した、ご苦労であった」
-何の話をするかを考えねばならんな。
「陛下、他国との会談および謁見であらかじめ、お耳に入れておくことがございます」
「なんじゃ?」
「今回の即位式では、多くの国から陛下へ縁談の申し出があるはずでございます。先方からお申し出があった場合は、すぐには断らないようにお願いいたします」
「縁談? 余のか?」
「無論、陛下のご縁談でございます」
「何度も申しておるように、余はまだ5歳じゃ。いくらなんでも早すぎるであろうが」
「無論、今すぐご結婚と言うわけではございませんが、間違いなく婚約の申込があるはずでございます。各国ともリーブルとの関係強化を求めておりますので」
「仮にそのような申し出があったとして、何故断ってはいかんのじゃ? 先も言うた通り、まだ5歳じゃ、断っても問題にはならんであろうが?」
「私としては、以前も申し上げましたように陛下のお世継ぎは多ければ多いほど良いと思っておりますので、ご縁談は多いほど良いと思っております」
「ですが、それだけではなく、今回の即位式は陛下がお考えになる以上に大陸中の注目を集めております。同盟国の縁談を受け入れる、断ると言うことが大きな問題となりますので、お返事は一旦保留にされてください」
「そなたの話はわからんでは無いが、余は気乗りがせん。いっそ、全て断れば問題無いのではないか?」
「陛下・・・、でしたらこのようにお考えください。陛下に年齢の近い女性たちが宮殿にたくさん居て、お茶や食事を一緒に出来るようになる。如何でしょうか?」
-なるほど、年の近い者が増える。
-ひょっとすると、お友達に・・・
「ハンスよ、判った。断らぬようにしようぞ。じゃが、本当に申し出があるであろうか?」
「間違いなくございます」
■リーブル皇帝 寝所
「なあ、黒狼、白虎よ。ハンスはあのように言っておったが、婚約の申込などあるであろうか?」
「無いこともないであろうが、そう慌てる必要は無いであろうに」
「じゃが、余もいつの日か妃や側室を迎えることにはなるであろうな」
白虎はそっぽを向いて寝ておる、この話も興味が無いようだ。
黒狼はこちらを見ているが、やはり興味が無いようだ。
「だが、お前たちも同じ部屋に寝ることになるのだぞ。お前達にも関係ない話ではないだろうに」
そういえば、こいつらの結婚はどうするのだろう?
二人とも、俺より大人のはずだ。
「お前達の伴侶も探さねばならんが、神獣はどうすれば良いのじゃ?」
「森に行っても良い相手は見つからんだろうし・・・」
「ドリーミアの教皇に頼めば、伴侶を送ってくれるだろうか?」
「・・・」
やはり、二人とも興味を示さん。
こいつらは、何に興味があるのだろう?
・・・・
そうか、俺を守ることだな、それ以外に無い。
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