35話_5歳児と新しい白玉
■リーブル宮殿 謁見の間
ハンスは反対したが、前内務卿アルベルト・シュターナー伯爵の長男を午後遅くに引見した。
不思議なことに白玉が目の前にいる。
人違いなのか?
こやつの父を殺したのは俺だというのに。
外務卿と軍務卿の子弟は、反乱を起こそうとしていたが・・・こいつは?
「クリス シュターナーよ。苦しうない 面を上げよ。」
30歳ぐらいだろうか?
臆することなく、俺の目を真っ直ぐ見返している。
「そなたは、余の領地での改革に異を唱えておると聞いたが、真であるか?」
「陛下、恐れながら申し上げます。それは、私の本意ではございませんでした。言い訳がましくなりますが、私が不在の際に陛下の使者がお見えになられたのです。」
「その際に、私の母である元伯爵夫人が陛下の使者に大変失礼なお返事を差し上げたと聞き、改めてこの場でお詫び申し上げます。」
「私は陛下のありがたきご配慮に感謝し、当家から新しい組合へ人を入れさせていただきたく存じております。また、この度の無礼な振る舞いについても、如何なる処分であれ、甘んじて受けさせていただきます。」
「ならば、良い。」
「・・・、良いと仰いますのは?」
「咎めはせぬと言うことだ。」
「・・・陛下の広いお心に感謝申し上げます。」
-白玉の言うことは信じることにしておるからな。
「じゃが、その方たちの家はどうするつもりじゃ?今までと同じ暮らしはできぬぞ?」
「はい、母たちをもう一度説得いたしますが、もっと小さな家を探して移るつもりです。使用人も二人ぐらいなら養っていくだけの蓄えはございます。」
「陛下にご紹介いただく組合には弟に入ってもらえば、そちらも家計の足しになると考えております。」
「そなたは、どうするのじゃ?」
「私は諸国へ旅に出る予定でございます。」
「旅とな?」
「はい。父には、以前から家督を継がずに旅へ出たいと申しておりましたが、認めてもらえませんでした。今回の件で・・・、改めて自由になりましたので、かねてからの夢を実現させていただこうと思います。」
「そなたは、余を恨んではおらぬのか?」
「恐れながら申し上げます。私は父を尊敬できる人物だとは思っておりませんでした。無論、父のことは愛しておりましたが・・・、領主として、大臣としての振る舞いは私の考えとは異なっておりました・・・、ですので、以前より旅に出たいと考えておったのです。」
「陛下にあらせられましては、必要なご判断をされたのだと理解しております。」
-白玉でなければ信じられん話だが・・・
「そうであるか。旅はどこへ行く予定なのじゃ?」
「まずは、アメリア連邦の国を周ってみたいと考えております。」
「ならば、そなたは今一度リーブルと余のために、働いてみる気は無いか?」
「と、仰いますと?」
「うむ。余も他の国へ行って見聞を広めたいと思っておった。じゃが、余が国を離れるわけにはいかんのでな。余の代わりに他国を周って、いろんなことを教えてくれぬか?」
「旅に必要な資金は余が出そう。そなたは年に数回、余のものとへ立ち寄って。諸国の話を聞かせてくれるだけで良い。どうじゃ?」
「勿論、私に異存はございませんが、・・・本当によろしいのでしょうか? 父のこと、この度の母の振る舞い、いずれも嫡男たる私にもその責めがあって当然のことかと。」
「構わぬ。そなたの父のことは、余も残念に思っておる。国を考える上での違いがあったが故にあのようなことになってしもうた。」
「じゃが、そなたが父の考え方に与せんのであれば、関係なきことよ。」
「むしろ、引き続きリーブルと余のために力を貸してくれるならば感謝しようぞ。」
「陛下。もったいなきお言葉でございます。このクリス、生涯忠誠を誓うことをお約束します。」
-うむ。これで白玉の仲間が増えた。
-やはり、会ってみないとわからないものだ。
■リーブル皇帝 寝所
「黒狼よ、おぬしは大活躍であったな。」
「褒めてつかわす。褒美は何が良い?」
相変わらず、こちらをじっと見るだけで頷きもせぬな。
「そうか、肉か?よし、では明日は更に肉を増やしてもらおうぞ。」
うむ、おぬしの好きなものはそれしか知らんからな・・・。
しかし、明日トットナムの子弟を捕らえれば、今回の件は終わりだろうか?
北の密偵はどの程度、わが国で活動しているのか?
北からの攻勢は本当に無いのであろうか?
・・・さっぱり、わからん。
考えてもわからんときは、寝るに限る。
昼まで寝ておっても、5歳児は寝つきが良いのだ。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
ログインしてブックマークと☆をたくさん押していただけるとうれしいです。
こちらもお勧めですよ。
https://ncode.syosetu.com/n7335gg/




