第三章
生きてます
【平成十三年 十二月二十七日】
「…って、感じです。」
「ん。ありがとう」
午前九時ガゼボにて、あきめとよつはが会話していた。本日はダージリンティーと柚子のジャムを添えたレアチーズケーキ。さっぱりとした優しい味わいのレアチーズケーキに、甘さの中にほんのりと皮の苦味を残した柚子ジャムがよく合っていた。
「…美味しいです。」
「良かった、お口に合って。」
「柚子は今が旬ですから。」
「…そう。」
よつははふんわりと笑い、一口食んだ。ふとあきめは辺りを見渡して、花を見た。
「なんだか、花が枯れ始めてませんか?ちょっとだけ、萎れてる気がします。」
「…あら、水を与えるのにどうしてかしら。」
「なら肥料が問題なんですかね?」
「さぁ…」
そう言いながら椅子から立ち上がり、近くに置いてあった霧吹きでそっと水を与え始めた。水を与えるよつはの周りにヒラヒラと常磐色の蝶が十三頭、山吹色の蝶が一頭。全部合わせて十四頭舞っていた。それを見たあきめはハッとしてよつはに声をかけた。
「そういえばこくり叔父さんに常磐色の蝶がくっついてたんだ。だけどそれは叔父さんには見えてなかった…。」
「…そう。そしたら、あきめの幻覚かしらね。」
彼女は振り返ることなく淡々と答え、一通り水を与え終わると肩に山吹色のたった一頭の蝶が止まり、よつはは指に移した。
「少なくとも、ここにいる子たちは現実よ。ゆらりゆらり舞って甘い蜜を吸って生きている。」
「……」
「けどね、本当は十七頭いたの。気づいたら三頭死んでた。とても綺麗な山吹色の蝶だったのに…」
ヒラっと指に乗っていた蝶は飛んでいった。そして花にとまり蜜を吸い始めた。
「…よつはさんは、標本とかは作らないんですか?そんなに綺麗だったなら、そういう方法もおすすめですよ。」
少年はそっと呟くと彼女は一瞥し、ため息をついた。
「綺麗だったけど、二度と見たくなかったから…それでいいの。」
「そ、そう…ですか。」
「最初の一頭は、だんだん衰弱していった。綺麗だった山吹色も色褪せて、このガゼボで一番綺麗で私も自慢だった。だけど花の蜜を吸う手前で落ちていた。少し高い場所に咲いていたから、辿り着かなかったの。」
「……」
「次の二頭目は、とても綺麗な姿のまま息絶えた。数少ない山吹色の蝶の中でも一番綺麗だったわ。けどある日、蜘蛛の巣に絡まって身動きが取れなくて、気づけば蜘蛛に食べられて死んでいたわ。」
「へぇ…」
「三頭目は、水たまりの上でボロボロになって死んでたわ。右の前翅と左の後翅が千切れていて。いつの間にか外に出ていたみたいで、そのまま土を被せたわ。」
あきめは少し呆然とし、それが蝶の理かとも思った。改めてあきめは蝶を眺めた。
「…みんな、違う動きをしてますね。」
「それはそうよ、蝶だもの。自由に、優雅に、舞い続けるわ。」
よつはは椅子に戻り、一口紅茶を飲んだ。そっとカップを揺らしながらあきめに声をかけた。
「…今日は、ここでゆっくりしていても平気なの?」
「はい」
「…そう。」
「あ、そういえば聞いてください。僕、初めてラノベというものを読んだんです。」
「ラノ、ベ?」
「普通の文字ばかりの小説ではなく、イラスト。絵を多用した小説のことです。」
「そんなものがあるのね。タイトルは覚えてる?」
「確か、怪盗アマポーラ…だった気がします。」
「面白そうね」
「おすすめです。」
その後ものんびりと会話してあきめは5巻しか読んでいないが、よつはに怪盗アマポーラを話したりして一時間半くらい経過した。よつはがそろそろ戻ってほうがいいと言い、あきめは椅子から降りた。
「今日もご馳走様でした。また明日も来ますね。」
「…えぇ。」
あきめはぺこりと一礼をして出て行こうとしたその時、よつはが「あきめ」と呼び止めた。
「はい?なんでしょうか。」
「…さっきの、怪盗アマポーラ?かしら。その怪盗は、変身して戦う系なのね。」
「あー…はい、どちらかといえば。」
「その子は、変身時に左手に持ったアイテムを三回、武器を出す時右ポケットからまたアイテムを出して三回、叩くのよね?」
「…はい。先ほども説明した通り。」
「ありがと。少し忘れてしまったから。」
「今度、持ってきますよ。書斎の本は汚さない限り、庭でも読んでいいので。」
「…ありがとう。」
よつはは笑顔であきめを送り出した。あきめはふと、よつはが改めて聞くものだから少し考えながら屋敷へ戻った。
「よつはさん、ラノベ知らなそうだったし…気になったのかな。」
あきめは玄関を上がったあと、書斎へ向かった。あのラノベを探すために。階段をのぼってるとまつとばったり出会った。
「あ、あきめくん。」
「まつ。」
「…さっき、お祖父様とこに行ったんだ。」
「そうなんだ。」
「す、すっかり変わっちゃったね…。とても、心配。」
「きっと元気になるよ。僕はそう信じてる。」
「うん。だって、その…手を握ったら、握り返してくれた…」
「良かったね。」
ふとまつの格好を頭のてっぺんから足先まで見た。ベージュの無地でまつの体格より大きめでダボっとした長袖Tシャツに黒のスキニーパンツと、シンプルな装いになっていた。前下がりボブはハーフアップにまとめていた。
「どう、したの?」
「…いや、ハーフアップ。大丈夫かなって。」
「うん大丈夫。髪に関しては何も言わないって、父さんと約束されてるから。」
「そうなんだ。」
「前に、話さなかったっけ?」
「してないと思う。」
「そっか。記憶違い、だったか…」
「…うん。」
「…長い髪…好きだったのになぁ。」
そう言ってまつは毛先を撫でた。あきめは、まずいことを聞いてしまったと思いサッと目を逸らした。
「きっとまた伸びるよ…」
「無理だよ、どうせ母さんが切る。この髪型だって渋々了承してくれた。母さん、本当は坊主にしたかったって。」
「……」
「僕ら双子に人権も何もない。せめて父さんが守ってくれるだけ、僕らに人権はある。」
「…ごめん、まつ。」
「いつものことだから。…またあとで、あきめくん。」
そう言ってまつはあきめの横を通り過ぎていった。あきめは振り返り見送ることもなく、書斎へ向かった。
◇
「確か…こっち進んで、曲がる…。」
隠れんぼのことを思い出しながら、あきめは一段ずつ本を見ていった。かの段に行きつき「怪盗」なのですぐに見つかると思いきや、どこにも見当たらなかった。
「…あれ?」
あきめは数回行ったり来たりしたが、どうしても見当たらなかった。結局、誰か借りているのだろうと自分を納得させた。
「別の本を探そっと。」
一旦あのラノベは諦め、他に読みたかった本があることを思い出し、そちらの方へ移動した。お目当ての本を手に取り、部屋に戻った。その戻る途中、また電話をしているこくりの背中を見つけた。あきめはまた遊んでもらおうと駆け寄ろうとした、その時。
「…言い訳なんて、最初からないよ。あるわけない。」
「っ?」
こくりは一体、何の話だろうとあきめは首を傾げ、つい聞き入ってしまった。振り返ったこくりと目が合ってしまい、二人は目を丸くして、玉響に見つめた後、こくりは「あとは、自分自身でどうにかする」と呟き、電話を切った。そしてあきめに近づきしゃがみ込んだ。
「どうしたのかな?あきめくん。よく吾輩が電話する時…鉢合わせるね…」
「ご、ごめんなさい…。遊んで、もらえるかなと、思いまして。」
「…何して遊ぶ?本の読み聞かせ?それともまたトランプとか…」
と、こくりが立ち上がった次の瞬間。右ポケットから財布がポロリと現れた。革素材で色は水色。
「こくり叔父さん、そんな財布持ってたっけ?」
「っ!?」
こくりは急いで拾い上げ胸に抱え込んだ。
「さ、最近…買い直してね。なけなしのお金だけど…買えて。」
「…こくり叔父さん」
「何かな?あきめくん」
「外のファスナーに揺れる、チャームのイニシャル“U”ってなに?」
「え…?」
「だって、こくり叔父さんにもつきかさんにも“U”なんてイニシャルいないよね…?」
「これは、その…」
動揺してるこくりの手元に一匹の常磐の色の蝶がふわりと現れたかと思えば、たちまち6頭の蝶がこくりの手に集まりだした。あきめは自身にしか見えてないのかと思っていたが、しかとこくりにも見えていたようで、悲鳴をあげた。
「っ!?何だよ、この蝶!払っても払っても逃げない!どうして…!」
その声に気づいたよひらにてんじ、続々と皆が集まりだし、錯乱状態のこくりをなんとか宥めてリビングへ連れて行った。
◇
「紅茶です。ゆっくりとお召し上がりください」
ゆきかはそっと紅茶を置いたあと、静かに出ていった。こくりは震える手で紅茶を一口飲んだ。大人の話だからとリビングには城ヶ崎三兄弟のみ。あきめはリビングの外で聞き耳を立てていた。
「…落ち着いたか?こくり。」
「少し…」
「突然、どうしたんだよ。てめーは。」
「…手に、たくさんの蝶が…いて、さ。」
「んなもん、いなかったぞ。なぁ兄貴。」
「うん…」
「嘘だ!本当に手に…大量に…今でも手に残ってる…あの感覚が」
「わかった、もう蝶の話はしない。ただ、これだけは聞きたいことがあるんだ。」
「…何…?」
よひらはテーブルにそっと先ほどの財布を置いた。
「これは、何だい。こくり。お前がいつも持ってる財布はがま口のやつか、マジックテープのやつだよな?それに、つきかさんはほとんど財布を持たない人だったよね?」
「っ!」
「それに、この家族にイニシャルに“U”がつく人なんていない。ましてやこの財布のブランドは“U”がつくところではなさそうだ。これの本当の持ち主が、イニシャルに“U”がつく人なんじゃないか?」
「……」
「…おい兄貴。つまりはこいつが窃盗したってことか?」
「それを聞くのは僕じゃなく、こくりじゃないか?」
てんじはこくりを見つめ、口を開いた。
「どうなんだ、こくり。」
「……」
こくりは紅茶を見つめ、ため息をついた。そして、静かな声色で告げた。
「…やったよ。最低な行為だと知りつつも…」
「テメェ…!」
「落ち着け、てんじ。」
「逆になんで、兄貴は冷静なんだよ!」
「…こくり、お金がないなら…相談してくれ、って言ってるじゃないか。どうして…」
俯いていたこくりはぎゅっと手を握り、勢いよく顔をあげ声を荒らげた。
「吾輩は落ちこぼれだからだ!!」
「!」
「そりゃ…助けを求めたかった…だけど、そんな真似したら、もっと父さんを怒らせるだけじゃないか…。」
「こくり…」
「だからもう、兄弟に金を貸してと頼むくらいなら…自分で稼ごうと頑張った。頑張って、スーパーの店長になれた。」
「…」
「でも、それでも…お金は全部つきかに消えていく。払っても払っても、湯水のように流れていく…」
「なら離婚すりゃあいい話だっただろーが。こくり。」
「てんじ…」
よひらはそんなことをいうてんじにそれは言ってはダメというジェスチャーをした。てんじは小さく舌打ちするとタバコを吸い出した。こくりは、もう一度俯き、絞り出すような声で口を開いた。
「…それでも、愛してるんだ…つきかを。尻に敷かれようが、ひっぱ叩かれようが、愛してた。」
「こくり…」
「今でも…初めて人の財布を盗んだという怖気は覚えてる。冷や汗も、心臓がドクンドクンと脈打つ感覚も…。」
こくりは震える手を硬く握り、よひらは背中をさすった。こくりは世ひらのさする手を叩きどけた。
「…そういう優しさが辛いんだ、よひら兄…。偽善者は嫌われるよ?」
「ごめん…こくり…」
「犯罪者のくせに偽善者だの綺麗事だの、どの口が言ってやがる」
一本吸い終えたてんじが割って入った。そしてこくりに近づき胸ぐらを掴んだ。
「こくり、自主するかサツ呼ぶかどっちにしやがる。今すぐ言え。」
こくりは少し悩んだような顔を見せたあと、視線を逸らし、小さな声で「自主するよ」と答えた。てんじはパッと手を離し、こくりはシャツをパッパと払った。
「…車は置いていくよ、つきかが困るかもしれないから。歩いて警察署に行くよ、この山の麓から少し歩いた場所だっけ…」
「そうだ」
「必要ないかもしれないが…少しだけ何か荷物を持っていくよ…」
こくりはそう言い、リビングから出た。と、近くのソファーに座っていたあきめと目が合った。こくりはにこっと微笑み、あきめの前にしゃがんだ。
「…叔父さん、少し遠くへ行くことになったんだ。帰って来れるかもしれないし、帰って来れないかもしれない。」
「…また隠れんぼとか、読み聞かせ。できる?」
「きっと」
そう言った後、立ち上がり自室へ向かった。つきかにはスーパーで少しやり残したことがあるから先に帰るといい、車は置いていくと伝えた。
「えー…あーし運転しなきゃダメなん?だるー…」
「ごめんよ…つきか。」
こくりが荷物を整理してる時もソファーで寝っ転がったまま、つきかは携帯から目を離さず生返事を返した。こくりはふと荷物整理の手を止め、振り返らずつきかに聞いた。
「…つ、つきか。」
「何?」
「吾輩たちが、出会った時のこと…覚えてる?」
つきかは携帯を触る手をとめ、少し考える素振りを見せてから、「まぁ」と答えた。
「確か、あれっしょ?大学のサークルの飲み会で。」
「そ、そう。」
「それが何?」
「…いや、覚えていてくれて…嬉しいなって。」
「あんた、ただの人数合わせで来ただけっしょ?それにあんた、場の盛り上げ役やってたし、嫌でも覚えてる。」
「そっか」
「急に何?」
こくりは振り返ってつきかを見た。
「ずっと…好きだよ、つきか。君が吾輩を好きじゃなくても。」
「……あっそ」
「じゃあ、またね」
「ん」
こくりはやはりああいう反応かと思った。
◆
…こくりはつきかと初めて出会った日に一目惚れをした。こくりは自ら告白するのはビクついて怖がる人間だった。なのに勇気を出して2回ほど告白したが玉砕。だが誰かから聞いたのか、自分の家がそれなりに金持ちであると知った途端、つきかから付き合いたいと言われた。こくりはその瞬間、お金目当てかと思ったが、ずっと片思いだった人からの告白が嬉しくて「お願いします」と言ってしまった。だからこくりは、つきかは別に自分のことを好きなのではなく、自分の背景にあるお金に惹かれたと思っていた。片思いの人が側にいるだけでこくりは幸せだった。つきかが願うならなんでもした。つきかに好きになってもらうためじゃない、つきかとただ一緒にいたかった。つきかが豪華な結婚式にしたいと言ったらそうしてあげた、ブランドものが欲しいというなら買ってあげた。お金が足りなくなったなら、さらに働けばいい、倒れようが二倍働いて、それでも足りなければ三倍働けばいい。お金の切れ目が縁の切れ目になって欲しくなかったから。…とうとうお金が底をつく寸前になってしまった。どうしようと考え込んだ時、鍵の開いてるロッカーを見つけた。閉めてあげようと扉に触れた時、鞄から出てる財布を見つけた。そこで止まればよかった。こくりは手袋をしてこっそりと開けるとたんまりとお金が入っていた。…千円、千円抜いても…バレないかな。そう魔が刺した。その日を境にお金を抜いては財布を戻したり、金目のものがあるなら盗って、防犯カメラ映像を消すのを繰り返していた。連日だと怪しまれるかもしれないと思い、日にちを空けたりしていた。だがあまりにも物がなくなると副店長に言われ、こくりは
「とうとうバレるか…?」
と心臓が警鐘を鳴らしたが、防犯カメラを増設しようと提案をした。それで皆の気が収まるならと思った。…それでもこくりは盗みをやめられなかった。そしてこくりはバレることなく、帰省するからとスーパーを副店長に任せた。副店長はすぐさま警察に相談した。だが、現時点では犯人を特定できるだけの証拠がなく、警察も動くことはできなかった。だがスーパーから帰る際に防犯カメラ映像を映してるテレビ横のゴミ箱を見ると黒い手袋が捨ててあった。副店長は疑問に思い、ふと防犯カメラを確認すると、ゴミ箱フォルダに何か映像が捨てられているのに気づいた。開いてみると店長が他の店員のロッカー前で何かゴソゴソとしている映像だった。限界まで拡大してみると黒い手袋をつけて財布からお金を抜き取っていた。副店長は開いた口が塞がらず、しばらく呆然としたがハッとして、こくりの連絡先を見つめた後そっと静かに警察へ連絡をし、翌朝、警察による調査が入りこくりの窃盗が確立した。副店長は、警察がスーパー内を調査している最中、こくりに電話をした。あなたの窃盗が確定したこと、これから逮捕状が出るであろうということ。しばらくの沈黙の後、こくりからの返事は
「…言い訳なんてないよ。謝って済むものじゃないのは重々分かってる。だが、心の底から反省はしている」
だった。副店長は電話を切った後、その場にへたり込み、声を殺して泣いた。
◇
〈城ヶ崎家 ガゼボにて〉
アッサムのミルクティーを一口飲み、豆乳を使用した生クリームをカステラに乗せて一口食み、膝の上に乗せている本をペラリと捲った。と、蹄の音がカツカツと彼女に近づく音がした。よつははふと顔をあげ、目の前にいる真っ白な鹿を見つめた。
「あら、こんにちは。カミツレ殿。」
『何を見ているのじゃ?』
「…ラノベ、というものよ。最近の者は、こういうのを見るのね。小説も随分と進化したわね。」
『それ、五巻じゃないか。もう、前の話は読んだのか?』
カミツレがそう聞くと、よつはは「いいえ」と答え、パタンと閉じると、たちまちその本は緑に輝く蝶へと姿を変えた。
「これは私が作り上げた本、実際には存在しないの。だから、前後の話も何もないわ。」
『またけったいなことを…』
「あきめくんへのヒントのためだもの。ミステリー小説の主人公は何か小さなヒントを得て、真実に辿り着くでしょ?」
よつははそう言い、クスリと笑った。カミツレはため息をついた。
『君が満足するなら儂は何も言わん。』
「ありがとうございます。そうだ、カミツレ殿も食べますか?カステラ。」
『別に儂はいらんが、其方がどうしてもいうなら…』
カミツレはちらちらっとカステラを見て、欲しそうにしていたので、よつはは一口あげた。
『人間の菓子も…随分と変わったな。』
「洋菓子が増えましたからね。」
よつはは紅茶を一口飲んだ後、「さて」と言い指を鳴らした。すると、枯れ果てた白いヒナギクは地に還り、次に生えるは白と赤のゼラニウムとその間を縫うようにまっすぐ生えた向日葵。
『…次は、二人か。』
「ええ。けどまだフルコースは三、四品目。まだまだ序盤よ。」
『そうかい』
よつはがカステラを一口、食べようとしたその時、一匹の蝶が目の前を飛び去り、外へと出ていった。よつははカステラを噛みながら、その蝶を目で追いかけた
「…また蝶が減ったわ。あの子はどこに行くのかしら。」
と呟き、紅茶を飲み干した。カミツレは、そろそろ戻ると言い、ガゼボから退出した。
続




