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守護の記録  作者: ツギハギ
西城学園七不思議 幕間
58/61

第46神 守護者が必要な理由

 ──そうして、今は竜胆さんから許可を得て一度執務室に集まっている。

 それぞれ、執務室にあるソファにゆったりと傷に触らない程度に座る。

 まだ、風伯たちの声は聞こえない。いつになったら声が聞けるんだろう。

 執務室のソファに沈んだまま、俺は喉を撫でながら、掠れた声が出るようになり医術の凄さを実感した。


「大丈夫か?お前ら」


 鷺沼さんが改めて俺たちの身体を見る。


 守護者の怪我なんて見慣れているだろうに心配してくれる先輩に少し申し訳ない気持ちになる。

 …結局、守られていただけの人間なのに…。


「今回の件を私たちに任せてくれた理由を聞かせてもらってもいいですか?」


 朝梨の言葉に鷺沼は一つ頷いた。


「幻治郎さんが、『これはこの三人でいいよ』と仰ってな」


 その言葉に桃梛がショックを受けた顔をした後、俯いた。


「私だけでは、長くかかりすぎたと言うことでしょうか?」


 桃梛が不安そうな顔でそう呟いて、胸に置いてある手をぎゅっと握った。


「…適材適所だ。桃梛は複数相手には向いてないだろ?鏡の能力は桃梛の報告書通りなら特に。」

「…ですが、任されていたのは私です」


 唇を噛んで悔しそうにしている桃梛の頭を鷺沼さんが撫でる。


「そうだなぁ」


 つまりはそういうことだ。鷺沼さんは優しいから言葉を濁しているが、時間がかかり過ぎていた。


「桃梛…」


「でも私…」


 朝梨は桃梛の隣で笑う。


「桃梛ちゃんと任務ができてよかったなぁって思ってるよ!」

「全然話せなかったけど!」

 折れた足を見せながら朝梨が笑う。


「…朝梨ちゃん…」


 にこ、と笑う朝梨に桃梛も笑う。


「…ありがとう」


 2人の会話に俺と鷺沼さんもホッとする。

 …ふと、何かの引っ掛かり。


「ん?でもアルバートさんもいましたよね??」



「その件については俺が説明しようじゃないか!」


 ガチャ。


 ドアノブをひねる音共に強く扉を開けて入ってきたアルバートさんはズカズカと来て椅子に座る。


「俺の怒りを聞いてくれ」


 目が覚めて最初に話そうとしていた件だと俺は気づいた。

 アルバートさんはアレは七不思議から出て君たちを医療課に届け終えた後の話だ…と何やら語り始める。


「医療課を出て少し歩いた先にある庭で日向ぼっこをしていたんだ俺は」


 何で日向ぼっこなんてしてんだ悪魔が…というツッコミを心の中にしまう。


「そしたら幻治郎がきてね……」




『────アルバート』


 幻治郎がアルバートに声をかける。

 赤紫の羽織を着て、灰色の着物に黒の帯を纏う赤歳幻治郎がそこにはいた。

 その羽織には赤歳家の紋様と、守護者の紋様が描かれている。


『なんだい?』

『よくやってくれた、七不思議を解決してくれてありがとう』


 赤い目が、アルバートを見て微笑むように目だけをゆるりと細める。


『…は?』

『それだけだよ、感謝を伝えたかったんだ。それじゃあね』


 目だけ細めて微笑むようにして去って行ったあの男は言った。





「『──これでお前はこっち側だ』ってね!!!!

 つまり全部あいつの掌の上だったのさ!あー!腹立たしい!」



 えー?どういうこと??と混乱していると鷺沼さんが補足する。


「…多分、便利アイテム、動く攻略本(アルバート)をお前らに渡したってことだと思う。」


「幻治郎は俺が楽しい方向に動くことも、君たちの記憶を思い出させない派にいることも!七不思議について知ってることも!!

 全部わかった上で君たちと同じ舞台に立たせたんだ!

 あー、俺舞台に立つつもりなかったのに!

 だから嫌いなんだあの男!」


 あーあ、とアルバートさんが項垂れる。


 その場にいた俺たちは全員が、「えー、あの幻治郎さんがそんなことするかー?」なんて思うし、なんなら鷺沼さんは言った。


「するさ!君たちは知らないんだ!彼の底知れなさ!俺の人生で1、2を争うくらい彼は策士だよ」


 いまいち今までの幻治郎さんからかけ離れてる話をアルバートさんにされてしまい全員が首を傾げる。


「はー、まあいいや。それで?七不思議の話だろう?

 マガツヒのせいで反転してたってことは今は元気にこっちの世界で活動してるのかい?」


「ああ、確認済みだ。1番目の少年は無邪気に番人となぞなぞをして楽しんでいたよ」

「あの…俺、番人の謎かけで出てきた守護者の記憶について聞きたいんですが」

「はぁ…あれね」


 アルバートさんは小さく呟き、目が半目になる。


「どぉせ、幻治郎はそれも込みで俺や君らを七不思議に放り込んだんだよ」

「ん、ん〜〜…やるか、やるか……あの人なら……」


 何かを飲み込み、思い出すように呟いた鷺沼さんは、はぁ…とため息をついた。


「なるほどなぁ。

 うん、守護者について改めて説明し直そうか。説明的になるけどいいか?」

「疑問が出たら聞くので大丈夫です!」


 朝梨がふん!と両手で握り拳を作る。


「なんとなくは知ってるので補足できるところはします」


 桃梛が補佐に入るように言った。

 アルバートは深く腰をかけ、鷺沼もまたソファに深く腰をかけた。


「まず、守護者の話をする前にマガツヒについて理解してるかの確認だ。ここが大前提だからな」


「マガツヒの特性は覚えてるか?」

「物語と性質の反転…。」


「うん、それを壊せるのは守護者だけ。

 これは神が生み出したものだから、同族殺しはできない。

 だが、人間を介せばできる。そのために生まれたのが守護者だと最初の方に説明したのは覚えてるな?」


 朝梨も桃梛も、守護者になる時にみんなこれを最初に説明されるということなのだろう。

 七不思議中にアルバートさんに説明してもらったので、俺も理解はしている。

 うん、と頷くと鷺沼さんが全員の目を見る。


「で、それを倒すために守護者はある」


 鷺沼さんもまた頷き返してくれる。



「ここまでは守護者が必要な理由だ」





 シン…とした静かな空気が流れる。

 無意識に息を呑んだ。


 ……また、自分の知らない“自分の話”が始まる気がした。


 鷺沼さんの表情は真剣そのもので俺たちも一緒に身が引き締まる。



「ここからは守護者になる条件と、その制度や仕組みに関してだ」


 静かな空間にその言葉は強く響いた。

 俺は1人、視線を逸らしてしまった。

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