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守護の記録  作者: ツギハギ
悪魔侵攻編

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211/217

第169神 魔王がどこかへ行ったらしい

 みくまりとの戦いを終えて、次の日。

 気持ちも消沈して、疲れた気持ちを抱えていても学校はある。

 朝梨や桃梛達から、顔色が悪いことを指摘される。


「…大丈夫?蓮くん」

「ありがとう…」

「蓮どしたん?」


 茶髪の男──宝が笑いながら俺の背中を叩き、一馬と蜜柑も心配そうに俺を見る。

 ふと、小さな違和感を感じて一馬を見つめる。あ。


「…あれ、一馬目の色…」

「うん、紫から戻した」

「赤色だったんだなぁお前の目…」


 黒髪に赤い目をした一馬が珍しく微笑んだ。

 隣にいた朝梨が目を瞬いて一馬を見つめてから気づく。


「カラコンだったの!?一馬くん!」

「ああ。最近、赤色に対して誰も言わなくなってるから、もう外しても良いかなって思ってさ」

「赤は呪いの色、ね〜」


 宝が苦笑いを浮かべる。その宝の目は緑色で、ここにいる奴らだけでもカラフルだ。桃梛は桃色、朝梨は水色、俺とるんは青色。蜜柑は紫色。

 赤は最近見慣れた色だったから、呪いの色だと言われていたことすらすっかり忘れていた。


「…いーじゃん、そっちのが一馬っぽいよ」

「ありがとう、蓮」


 表情筋が全く動かないあの一馬がまた微笑んだものだから、女子勢が湧く。

 ……こういう表情を、あの女子高生も見たかったのかな。ふと、守護者になるときに守りたいと思った、あの女子高生を思い出してしまった。

 みくまりの出来事が、思いの外俺の中でダメージとして入っていることがわかり、少しだけ目を伏せる。


「蓮くん、また明日ね」

「またな!蓮」

「またねー」


 最近あまり起きていない不幸は、任務のたびにいろんな形をして返ってきている気がする。

 俺に対する直接的な死に関するものではない、俺以外の誰かが傷つくような、そんな不幸な動きをしているような気がした。

 気のせいかもしれないけど。

 朝梨達に手を振って西城学園から家に帰ることにした。



 アルバートさんが、魔界にあまり帰ってきていないらしい。

 …らしい、と俺が言ってる理由は、西城学園からの帰り道、家へと行く方向に歩いていると、曲がり角を曲がった先で、悪魔が悪魔を召喚していたのを見てしまったからだ。


「…えっ」


 固まる俺に黒髪オールバックのツノが生えた男が勢いよく振り向いた。


「!神無蓮!貴様、我らがアルバート様がどこに行ったか知らないか!全く帰ってこないんだ!」


 悲しげな顔でわぁあっ、と青い紐をつけた一人の秘書のような悪魔が顔を覆う。


「…えー、学校では見かけましたけどねえ」

「じゃあなんでこっちに戻ってこないんだ!我々を見捨てたと言うのか!アルバート様はそんなことをするお人では無い!慎め人間!」


 すごい…全てに対して人を見下してる…悪魔ってこんなんなんだ…。

 近寄ってきた秘書さん?が俺の首元をじっと見て、悩むそぶりを見せた。

 数秒も経たないうちに悪魔が俺の首を叩いた。


「いった!な、なんですか急に!」

「いいか、何か聞かれたら『悪魔が悪魔を召喚しているのを見た』と言え」

「え??」


「そして!アルバート様を見つけたら即教えろ、じゃあな!!!」


 バサっと羽を広げて空を飛び立つ悪魔の姿を唖然と空を見上げる。ここは神無なので、俺が一人突然上を見上げた変人になっていたことに後から気づいたのはご愛嬌だ。




 これが後の、悪魔事件の入り口となることを、俺はまだ知らない。

またしても何かに巻き込まれたことだけはわかった。




「…ってことがあってさぁ」


 家について早々、部屋の真ん中にある丸い机で煎餅を食べながら風伯たちにこぼす。


『アルバートが、ねぇ』

「学校では普通なんだけどね」

『…ふむ』


 ピンポーーン。


 下からチャイムが鳴る音。今家には誰もいない。俺だけだ。お母さんも妹たちも買い物に出掛けている。


「…ごめんくださーい」


 扉の奥から声が聞こえる。玄関の扉に手をかけ、開ける。


 白い軍服のようなマントに、青いワイシャツ、黒いネクタイ。いつかに見た政府職員の中にいた人の制服姿。


「こんにちはー、神無警察です。

 神無蓮くんのお家ですよね?お聞きしたい件があって…少しお時間よろしいですか?」


 にっこりと笑った青い髪の毛に星型のピンをつけた男の人がそこにはいた。




 玄関台の上に座る男の人──ガクさんは、メモ帳とペンを取り出す。俺は一旦お茶を入れに行く。


 …なんか、初めて会った気がしないんだよなぁ…。

 これも前世か?またハチスなのか…。


 一瞬嫌気がさす。いやいや、何をこんな時にどうでも良いこと考えてるんだ俺は。

 首を振って考えを吹き飛ばしたら、お盆に乗せた暖かいお茶をガクさんに渡す。


『なんでそいつがここにいるんだ』


 風伯のそんな呆れた声が聞こえてきた。

 振り返れば風伯と火雷が階段から降りてきていた。家族がいないときはこうやって姿を見せているから自由に過ごしている。

 というかその言い方だと風伯はガクさんを知ってるみたいだな…。

 俺の顔に出ていたのか風伯がガクさんを見てから、俺に視線を向けた。


『蓮、こいつは神だぞ』

「え!!」

「どうも、星の神様です」

「そんな軽い!?」

「今回はそのために来たわけじゃ無いからね」

「あ、…ああ、お聞きしたい件って言ってましたっけ」

「はい」


 俺の方を見つめたガクさんは徐にペンで何かを描き出す。


「…蓮くん、君は最近何か、変なものを見たよね?」

「──え…」


 どれのことだ、ありすぎてわからん。

 最近だとみくまりを討伐する時に、妖怪を見たりした。悪魔が悪魔を召喚する姿とか…。


「…見たら、何かあるんですか?」

「実は、この数日悪魔が活発的に動いているんです」

「…悪魔が」


 アルバート様がいない!そう騒いでいた今朝の悪魔のことを思い出す。

 大人しくしていた悪魔たちが、隠り世ではない世界で暴れている、という情報です」

 その手は相変わらずペンを動かし、俺たちを見るわけでもなく話す内容にあの、悪魔たちが…?と疑問を感じてしまう。


「病を流行らしたり、街を荒らしたり……本当なら大きな騒ぎになる前に防ぎたかったのですが…」

「日本の方で原因不明の病としてメディアにすでに取り上げられてしまいまして」

「犠牲者も多く出ています。犠牲を出さないための情報収集です」

「…さて、蓮くん、単刀直入に言わせてもらいます」


 ガクさんが描く手を止めて、俺を見る。

 何を言われるかわからなくて少し怖くなる。


「…あなたはいま、呪いにかかっています」


「──は…?」


 ぱらりと見せられた紙には花が描かれている。


「貴方の場合は厄介なもので直接かけられた呪いに加えて、なんらかのものによる二次被害の呪いが付与されてるんです」

「え、え、混乱する…つまり、完成された呪いとは別にもう一個未完成のものがあるってことですか?」


 ガクさんは頷く。


「そうです。うちにいるよく視える、白藍くんからね、蓮くん君に呪いがかかっているのを見つけたんですよ」

「白藍さん…あ、あぁ…浄化課のあの帽子の人…」

「そういうタイプの二重呪いは大抵悪魔の召喚陣に当てられた人のもの。もう一つは、それとは別の…なにか」

「二重で!?俺に…!?どこで………あっ」


 ふ…と、記憶の片隅から出てくる悪魔の召喚を思い出す。風伯と火雷もそれを思い出したのか一瞬、同じ顔をした。

 ガクさんは、流石に警察をやっているだけあって見逃さない。


「何があったのかお聞きしても良いですか?」

「い、いや!その前に、一つだけ…」


 両手を前に出してガクさんを止める。


「ちなみにその呪いの位置ってどこですか?」


 恐る恐る聞くとガクさんはキョトンとした顔をした後、右の首を指して、「ここです」と言った。


 同時に俺と…おそらく風伯たちの脳内につい先程の出来事が駆け巡る。


「…あー、と…俺、さっき『悪魔が悪魔を召喚しているのを見ました』」

「てことは、やっぱりその呪いは召喚したことによるもの!」


 ガクさんのハッとした顔に俺は眉を下げる。

 ごめんなさい、多分…あなたは今、アルバートさんを探すための探知機として使われてます……。

 あの秘書さんはこれを見据えてこんなことをしていたのか…わからないが、何にせよ。


『巻き込まれたな』

『巻き込まれたねえ』

「…いつものいつもの…はぁ」


 ガクさんだけがペンを走らせ、俺たちだけが、あーあ。と思惑を察する羽目になったのだった。

 

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