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1.夢見た話

全身を鎧で纏った、屈強な姿をした人物が鋭く、険しい、道なき道をただひたすら上に、上に進み続ける。

辺りは暗く、風は吹き荒れ、侵入者を拒んでいるように感じる。

それでもその者の目は怯むことはなく、前を見つめ続ける。

辺りは次第に明るくなり、風も弱くなる。

視界が広がる。

目の前には一つの光景が広がっていた。

光に照らされ美しく輝く一つの檻、その中には儚さを覚える程美しい女性が一人。

思わず、生唾を飲み込む。

女性があまりにも美しかったため、ではない。

その傍ら。

女性とは対照的に全てを飲み込んでしまうような黒。

女性を閉じ込めているその檻が小さく見えてしまう程に巨大な体躯。

その体は光を反射しない程深く、黒い鱗で覆われており、その鱗一つ一つの大きさが人一人ほどある。

太く、長い首の先には砕けるものはないであろう顎門。

竜。

一度姿を見せれば、それだけで人々に畏怖だけでなく信仰心までも覚えさせる存在。

ここまでの道のりで全く疲れを見せなかった体に緊張が走る。


「はー…」


息が漏れる。

鎧から小刻みに音が鳴る。

体が震えている。

竜から目を離すことができない。

ただそれは畏怖などではない。

興奮だ。

遥か彼方で飛んでいる姿しか見ることのない竜。

それに加え多くの人間が立ち入ることすらできない領域に入り込んでいるという事実に、ただ興奮している。

ガシャン。

唐突に鳴ったその音により現実へと引き戻される。

音の方を向く。

竜の傍、そこにある檻から鳴ったようだ。

中の女性と目が合った。

その顔はどこかやつれているように見える。

こちらの存在に気が付いたのだろう。


「どうして」


声は聞こえないが、そう言っていることは分かる。

自分でも馬鹿馬鹿しいと思うが、今はそれどころではない。

もう一度竜を見る。

瞬間、考えるよりも早く腰に携えた剣を鞘を投げ捨てるように抜いていた。

光る紅い目。

ただ見られているだけだ。

ただ見られているだけなのにも関わらず、死がそこに居るのだと錯覚させられる。

震える体を止め、剣を構える。

大きく息を吸い、吐く。

こちらから目を合わせる。

その瞬間、地を駆ける。

十数歩分は空いていた距離を一息で詰める。

人間が出せる限界。

その動きに合わせるように竜の手が迫る。

最小限、体を捻る。

竜の手と比べるとあまりにも小さい人間がすれ違う。

その風圧で、鎧に亀裂が走り、続く衝撃で砕ける。

全身が露わになろうと構わない。

鎧はお守りのようなもの。

有無に関わらず竜の攻撃を喰らえば漏れなく即死。

竜の足元まで迫る。

竜は姿勢を低くし、顔を近づけてくる。

竜の顎門が開き迫る。

両足に力を込め、全身の筋肉を使い剣を振う。

金属と金属がぶつかるような音が鳴り響く。

竜が僅かに後ろにのけぞる。

剣は壊れていない。

生まれた隙を逃さぬよう、間髪入れず次の一撃を放つ。

比較的柔らかい目に狙いを付ける。

眼前に迫った竜の目が光る。

視界の端に映る竜の喉が赤く、周りの温度が上昇していくのを感じる。

剣を振り下ろすよりも早く、竜の顎門が開かれる。

目の前に現れた黒い空洞が、急激に明るく赤くなる。

それが炎であると認識するよりも早く体が包まれ、熱いと認識する間もなく、意識は遠のいていった。

8/24 2話の途中まで書いていたことを忘れていたため消しました。

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