8-2 蘇ったもの
「さーてと…お前ら、今まで一体どこに行ってたんだ?3ヶ月も待たせやがって。まあいいよ。こうしてお前らと再会できて…今度こそ叩き潰せるんだからな!!」
妹紅は二人に怒号を浴びせ、目を大きく見開いた。
そして、みるみる変異していったー。
数秒後、二人の前にあったのは…
瞬時に焼け焦げ、焼け跡のようになった周囲の竹林。
巨大な鳥と人間を合わせたような怪物。
それは神々しく、不死鳥のようにも見えるが、しかし禍々しく、そして痛々しい姿だった。
腕は二つに裂け、それぞれが大きく変異して腕と前翼を形づくり、脚は三ツ又の槍のようにも尻尾にも見えるものが5つ現れた。
胴体は脇腹や胸、臍のあたりから棘や触手が生え、もはや人の面影はなくなっていた。
さらに急激な変異の影響か、体の各部から血が滴っている。
「…不死鳥みたいになりやがって」
こんな姿になっても自我と知性があるらしく、二人に語りかけてきた。
「なんで私がこんな姿に…って思うだろう?あの後私は、いつかお前らに会う日のために薬…いや、ウイルスを毎日打ってたんだよ…もうヘマはしねぇ…ここで、ぶっ潰す!!」
妹紅だった鳥は翼を振り、無数の羽根を飛ばした。
それら全てはダーツの矢のように鋭利になっており、火がついている。
さらに、避けても追ってくる。
「追尾してくるパターンか…おっと!」
龍神が羽根に目を取られている隙に、敵が突っ込んできた。
軽く右肩にかすっただけだったが、かすった部分だけ焦げてしまった。
見れば、向こうの全身は燃え盛る炎に包まれていた。
龍神は飛び交う羽根に気をつけながら攻撃を躱し、囮を引き受ける。
「姜芽!さっきと同じやり方だ!」
「おお!」
鳥が龍神を狙っている間に、姜芽は斧を回しながら投げつけた。
しかし翼で跳ね返され、逆に姜芽が腕を切られた。
更に鳥が姜芽を睨みつけると、今できた傷口から滴る血が爆発した。
吹っ飛ばされ、地面に叩きつけられた所を狙って爪で仕留めんとばかりに急降下してきたが、体を貫かれるその寸前で身をよじり、ギリギリで回避した。
そして素早く飛び上がり、頭に乗った。
鳥は喚きながら暴れまわる。姜芽は離すまいとしがみつく。
「姜芽…!」
龍神は姜芽の応援…はせず、焼け跡となった竹林を空中から見下ろした。
しかし、先ほど弾き返された斧は見つけられなかった。
そこでやむを得ず地上に下りた…
「どこだどこだ…急がないと…!」
焼けたばかりで火傷しそうなほど熱く、真っ黒な草の上を走る。
「何のマネだ…とっとと降りろ!!」
「降りるかよ…!」
「ならいいさ…地面に地面にぶつけて殺してやる!」
「…っ!」
頭から降りようとしない姜芽と、彼を叩き落とさんとする妹紅が壮絶な争いをしていた。
姜芽は懸命にしがみつくが、このままではいつ落とされるかわからない。
武器が…斧があれば。
姜芽がそんな事を思っていたころ、龍神は大きく太い焼けた竹に刺さった斧を見つけた。
「よし…!」
空中を見上げると、妹紅は激しく暴れまわっており、姜芽はしがみついているのがやっとのようだった。
早く斧を渡したいが、姜芽と一緒にいる妹紅の体は常に燃えているし、第一派手に暴れまわっている。手渡すのは難しいだろうが、かといって投げつけるわけにもいかない。どうするべきか…?
術か魔弾で撃ち落とすか?いや、そんな事をすれば姜芽も危ない。投げるにしても、跳ね返される危険がある。仮に跳ね返されなかったとしても、上手く掴んでくれるかはわからない。
とすると、どうすればいいのか?
龍神は懸命に考えた。
想像力が乏しく、作戦を立てる事や未来の予測が苦手な彼だが、自分なりに懸命に考え、そして閃いた。
能力も術も使わず、かつ投げるわけでもなく、暴れる鳥にしがみつく姜芽に遠くから斧を渡す方法を。
突然、風が吹いてきた。
それはみるみる強くなり、しまいには台風のような暴風となった。
妹紅は今まで姜芽を振り落とすべく暴れていたが、風を感じるやいなやそれをやめ、風に逆らって飛び始めた。
しかし風は強く、少しずつ風に流されていった。
なんだこの風は?と思って風上を見たが、風上には何もない。
(なら風下は?この風はどこに吹いていくんだ?)
姜芽は鳥の頭にしがみついたまま、後ろを向いた。
そこには、虚空に浮かぶ斧があった。
(あれは、俺の斧…?もしかして!)
姜芽は再び鳥にしがみついた。
そのまま妹紅は風下に向かって流されていく。
そしてついに、姜芽は斧を手にした。
それと同時に、龍神の声が飛んできた。
「姜芽!今だ!」
それを聞くが早いか、姜芽は妹紅の頭に斧を振り下ろした。
妹紅は脳天から血をほとばしらせながら断末魔のような叫びを上げ、羽ばたきを止めた。
姜芽は鮮やかな返り血を浴びつつ、すばやく頭から降りた。
そしてまっ逆さまに落ちていく鳥を追うように落ちていき、
「[巨人割り]!」
瞬時に巨大化させた斧を振り下ろし、そのまま地面に叩きつけた。
妹紅は血を吐き、そのまま動かなくなった。
「終わったよな、今度こそ」
姜芽は妹紅に近づいた。
斧を納め、大きな隙を晒したが、攻撃してこなかった。
「大丈夫そうだな。不死鳥といえど、ウイルスに手を染めたのが運の尽きだったってわけだ」
龍神の後ろ…焼け焦げた竹が一部崩れ、道が出てきた。
きっと、この奥に輝夜がいる建物があるのだろう。
龍神も、姜芽の目線で気づいたようだ。
「おっ、ちょうど道があるな。さて…行こうか」
その道は、ひたすら竹林の中をまっすぐに突き抜けるように伸びていた。
道中には、感染体は現れなかった。
そしてその終わりは、程なくしてやってきた。
その奥に、何やら大きな建物が見える。
「あそこが月夜廟か…さあ、あとちょっとだ。姫様を調教して、さっさと帰るぞ!」




