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東方訪問記  作者: 明鏡止水
姜芽編
37/64

8-3 姫の都

廟の中に入ると、仕切りのような物が落ちてきて入り口を塞いだ。

「…っ」


「これでもう後戻りは出来ないな。進もう」


途中までは一本道で迷う事はなかったが、程なくして十字路にあたった。

しかしながら、分岐している通路はどれも行き止まりで、中央の通路の突き当たりには蝋燭立てが置かれたテーブル、左右の通路の突き当たりには何かの絵がかけられていた。


まず正面の通路の突き当たりにあるテーブルを調べてみたが、これといった違和感はない。

蝋燭立ては3本の蝋燭が立てられるようになっていて、そのうちの真ん中にだけ火の灯った蝋燭が立てられていた。

「…」

言葉にしなくてもわかる。

あと2本の蝋燭を見つけて、ここに立てて火をつければ何か状況が変わる。

問題は、その蝋燭が何処にあるかだ。


「さて、蝋燭はどこにあるのか…」


「左右の通路…まずは、突き当たりの絵を調べてみよう」


まずは左の通路から行く。

奥の壁には、三日月とどこかの屋敷が描かれた一枚の絵がかけられている。

龍神は、その屋敷になぜか既視感を覚えた。

「これ…ただの絵か…?」

と言いながら、姜芽は絵のあちこちを触る。



と、姜芽は絵に吸い込まれるように消えた。

「姜芽…!?」



龍神も絵に触ってみたが、何も起きない。

「見た感じ、姜芽はワープしたって感じだったが…」


どこか特定の部分を触るとワープする、というタイプなのは間違いなさそうだ。しかしどこを?

さっき姜芽が触っていたのは、絵の縁と…


(月?)




「はっ!」

あたりの光景が瞬時に変わる。

そこは、どこかの建物の中のようだった。

「姜芽!」

姜芽もしっかりいた。

「龍神!…ここは、きっと…」


「ああ、何かある。探そう!」




そうして部屋にあるタンスや机、引き出しを調べたが、何も見つからなかった。

「何も見つからないな…」


「この中のどこかに蝋燭があるはずだ。それを見つけないことには…」

そんな事を言っていると、突然天井の一部が抜け落ち、何かが降ってきた。

それは人型をしてはいるが全身が焼け焦げたように黒くなっており、右腕がなく、左腕全体がノコギリのようになった化け物だった。

化け物が二人を視界に捉えて左腕を振り上げると、のこ刃状の部分がヴィーンという音をたてて高速回転し始めた。

…それはまるで、チェーンソーのようだった。



「鋸妖怪ってか…」

化け物は、そのまま突っ込んできた。

姜芽はすんでのところで体を左によじり、振り下ろされた化け物の腕を回避した。

腕は地面に斬り込み、抜かれた後も深い爪痕を残した。


その直後、龍神が化け物の首と左腕に電撃を巻き付けて動きを封じた。

それを見るが早いか、姜芽は化け物の頭を力いっぱい叩き切った。

化け物はにわかにうめき声を上げ、腕を振り回した。

その力は異様なほど強く、龍神の拘束を解きそうになっただけでなく、姜芽は危うく右腕を肩から切断されそうになった。


「なっ…力強いな」


さらに、化け物はそのままもがいて龍神の拘束を完全に解き、彼を睨みつけて口を開けて唸り声を上げた。

「…《《ペット》》だけでなく《《ご主人様》》も化け物になっちまうとは、哀れな連中だな」

龍神はそんな事を言いながら、刀を振るった。

「[メドールスラッシュ]」


技で化け物のチェーンソー部分を切り裂くと、化け物は膝をついた。

そこを狙って、姜芽は飛び出した。

炎をまとって足から飛び込む[炎熱キック]という体術を繰り出し、そのまま化け物の上に乗って顔に再び斧を振り下ろす。


化け物は、今度こそ動きを止めた。

「ナイスだ」

しかし、また立ち上がってくるかもしれないと思った姜芽は、念の為にと炎を放って化け物を焼き払っておいた。


「この化け物も、あの女が作ったのか?」


「わからんが…少なくともこの屋敷はなんか見覚えがある。あちこち調べてみよう」


その後調べてわかったのだが、ここはワープしてきた部屋と、ドアで繋がった隣接する部屋の2つしか存在しない。

どうも、何らかの力で生成された、どこかの建物を模しただけの作り物の場所のようだ。

という事は、この部屋と近隣の部屋のどこかに何かあるはずだ。





しばらく捜索した結果、姜芽が最初の部屋の隅にあった小さな引き出しからろうそくを見つけた。

そして二人は部屋にあった「夜の竹林の中に立つ大きな屋敷」が描かれた絵に触れ、元の十字路まで戻ってきた。


例の通路に戻り、蝋燭立ての右のつめにろうそくをたて、火をつけた。

「あと一本足りないな」

その一本は、おそらく右の通路…

もといそこにある絵の先にある。





右の通路の突き当たりの絵には、満月と湖が描かれていた。

水中に入ることになりそうな気がしたので、[アーメリア・マリム]を使用してから絵の月に触れた。



ワープした先はやはりというか水中、ただし湖のように平坦で広い天然の水中ではなく、水路のように曲がりくねった人工の(とおぼしき)水中だった。

先ほどの部屋を模した空間といい、一体この廟の主はどれだけの力を有しているのか。

しかし、今いる水中は一本道であるため、迷う事なく進めそうだ。





しばらく進むと、湖で見たものと同じ化け物の群れが現れた。

「やっぱり来たか…」

龍神がそう言ったが、姜芽もなんとなく見当はついていた。

「今さら相手するのも面倒だし、一気に片付けよう。[ボルテクスフレア]」

姜芽が術を放つと小さな赤い光が現れ、そこに向かってあたりの水が激しく渦巻きながら吸い込まれてゆく。


光と渦巻きが消えた時、化け物たちもまた消えていた。

「…とっととろうそくを見つけて戻ろう」


「いや、探すまでもなさそうだぞ」

二人の目の前に、蝋燭が浮かんでいた。

水を吸い込んだ際、一緒に引き寄せたのだろうか。


とにかく、しっかりと蝋燭確保する。





「さて…」

蝋燭立ての左側のつめに蝋燭を立てる。

正直、ちゃんと火が着くか不安だったが、指先に火をつけて近づけたところしっかり火が着いた。


「よし!これで…」






…何も起こらない。

「あれ?」


「何も起きない…だと…?」

スイッチとなるイベントをクリアすれば、壁や床が動くとか、何かしらの変化があるのがお決まりなのだが…

何も。


「何かないか…ん?」

テーブルに敷かれたテーブルクロスの下に、額縁に入った絵があった。

「もしかして、ろうそく関係なかったか…?」


「…」


「ま、まあとりあえず…」

その、階段らしきものが描かれた絵に触れた。






龍神「いよいよラストスパートに突入したな」


姜芽「ここからどうなるかな…?さーて、次回からいよいよ最終盤に突入します!…まあ、もうちょい続きますが。では、また来週!」



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