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7-4話

今回は短いです。

空に一羽の鷹が弧を描き飛んでいる。


「 いよいよね 」


何度こうして見上げたか分からないが、この部屋から外を眺めるのはこれが最後だ。

ユイカは室内をぐるりと見渡した。

前の戦争で王子の隊と共に敵と戦い、凱旋した時から使っている部屋だ。

王城が嫌になって飛び出してからはあまり使っていなかったが、もう使うことがないかと思うと感慨深い。婚礼式が終われば、部屋はエリカスの隣になる。内扉があるので、隣と言っていいか悩むところだが……



「 ユイカ様、馬車の準備が整いました。移動をお願い致します 」


ドアをノックして入ってきた侍女の言葉にユイカは頷いた。


「 わかりました 」


ユイカが扉へと1歩踏み出すごとに、室内に待機していた侍女がウェディングドレスのすそを持ち、ヴェールを被せていく。

廊下へ出れば剣を掲げた兵士達に出迎えられ、馬車まで先導され乗り込む。

街の中央に位置する教会へ向かう道すがら、通りには人が溢れ、馬車内は見えないだろうに歓声を上げて手を振っている。

教会の前では、先に到着していたエリカスが待っており、馬車を降りるユイカをエスコートし、抱きしめた。


「 綺麗だ 」


耳元で小さく囁かれた言葉にユイカは少し目を見張ると同時に微笑んだ。

彼にそう言ってもらえるならば、この裾が長くて動きにくいドレスも悪くない。


ゆっくりと彼が体を離したところで手を取り合い、教会の中を神父の前までゆっくりと進む。

そこからは前王が祝辞を述べ、儀礼的な式が執り行われていく。

最後に「誓いの口づけを・・・」と神父が言い、エリカスがユイカのヴェールをまくった時だった。


ドゴンーーーッ


突如教会の扉がその重さとは見合わぬ勢いで開かれたのだった。



( 来ちゃったか )


出来れば、式が終わるまで来ないでほしかった。

ユイカは溜息をきたいのを我慢する。


そこに立っていたのは、ボサボサに伸ばしっぱなしの赤い髪と灰色の瞳で三白眼の男だった。

どこぞで山籠もりでもしていたのかと言う風で、服は小奇麗とは言いづらく、まるで山賊のようである。

唯一山賊と違うとしたら、背中に大剣を帯びていることだろうか。

しかも、普通の大剣よりも遥かに大きく、それを扱える者はいったい何人いるだろうか?


ユイカはエリカスから視線を外すとその男に視線を合わせた。


「 ユイカ、覚悟!! 」


剣を構え、猛然と突き進んできた男へとユイカも駆け出し、改造したドレスのホックを外すと愛剣で迎え撃ったのだった。

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