とある中年冒険者
「いい依頼が無い……」
俺は冒険者ギルドの依頼板を見ながら溜息を吐いていた。
前は『魔物退治』とか『ダンジョン探索』とか達成すれば上手くいけば一攫千金を狙える依頼があった。
最近は『地下水路の掃除』とか『廃棄物の撤去』とかが殆どだ。
……冒険者はボランティアかなんかか?
こんな事になったのはつい最近、魔王が倒されたからだ。
魔物の王である魔王が倒された事で魔物の数が一気に減った。
それはめでたい事だし平和になったのだから一般的に問題は無い。
だが、俺達冒険者にとっては死活問題が発生する。
魔物関連の依頼が無くなった事で依頼が少なくなる。
それは冒険者ギルドの存続の問題であり冒険者にとっては明日のご飯が食えるかどうかの問題だ。
実際の話、幾つかの冒険者ギルドが看板を外した、という話も聞くし新規登録も制限されている。
「このままだと本当に失業する事になるんだよなぁ……」
俺が所属している冒険者ギルドも活気はなくなり重い空気が流れている。
そういえばギルドマスターが『資金が……』とか言って青い顔をしていた。
「先輩、聞きました? 国のお達しでランク昇格の条件を引き上げる、て」
「ハードルが上がる、て事か? 国もA級を余り出したくないんだろうなぁ」
「A級がいれば国から援助が出ますからね、でも魔物の数が少なくなって国の危機が無くなったから冒険者の価値なんて無いに等しいですからね」
後輩冒険者がそんな事を言って、現実的な問題が重くのしかかる。
貧乏な家に生まれまともに学んで来なかった俺にとって冒険者だけが生きる道だった。
コレと言ったスキルも無く平凡ではあるけどコツコツと依頼をこなし暮らしてきた。
(そろそろ潮時かもしれないなぁ……)
ロイ・モスタング30歳、人生の曲がり角に来てしまった様だ。




