表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
147/149

錫の悩み



「こちらでお待ち下さいませ。」


部屋に来た白狐に連れられて来たのは

大きな中庭が見える一席。

向かいには巨大な舞台があり、凛桜の舞が1番良く見える席なのは間違いないだろう。


雅は指定された席に座り、辺りを見回す



ここに招待された客たちだろう…沢山の妖たちが同じように席につき、同じように舞台を見て会話をしている


聞こえてくる言葉的に恐らく今回の舞手についてと黒龍について。その話題で持ち切りのようだ



「はぁ……」

「心配ですか?」


雅の溜息に誰かが声を掛ける


「うぉっ?!………なんだ錫か……」


慌てて後ろを振り返った雅は錫を隣に座るよう促す


「すみません、驚かせてしまったみたいで……」


錫は雅の隣に座り、同じように舞台を見つめる


「心配にはなりますよね…噂で持ち切りの本人が舞手を担うなんて……」


「それだけじゃない。未だ人に嫌悪感を抱いている妖も多くいる。それが余計に凛桜の噂に尾ひれをつけている可能性もあるしな…」



ここにいる妖は基本各里の長やそれに準ずる者達だろう。中には凛桜の頭領お披露目以来の顔も多くいる。

未だに"ただの小娘"として凛桜を見ている者もある程度はいるはずだ。



溜息を吐いて頬杖をつく雅に錫は苦笑する


「あの方の凄さに気付けない者は放っとけば良いですよ。少なくとも姫様と関わりのある者にそのような者はおりませんし……なにしろ、」


錫は雅に顔を近づけ耳打ちする


「今日の姫様はいつも以上に凛々しくお綺麗らしいです。難癖などつけどころがない!と。」


「…誰から聞いた?」


「支度を手伝った銀様の侍女です。」


「………ほーん。ま、そりゃそうだろうな。」


雅はニヤッと笑って舞台の奥、

幕がかかっている所を見つめた


なんとなく思ってはいたが、あいつは元々本番に強い。

今日の舞で前のお披露目のように口など出せなくしてやれば良いだけだ。


「あ、そういえば…お前のお母様にお会いしたぞ。」


ふと思い出した雅が錫を見る


「あぁ…そういえば今日は客人の案内を仰せつかったと言ってました。………なんか変なこと言われてませんか?」


眉を顰める錫に雅は首を振る


「いや?特には…」


そうですか…と考え込む錫


「………あの、雅様は僕の母親と会って何か感じましたか?」


錫の言葉に雅は首を傾げる


「どういうことだ?」


「何も確証は無いのですが…

あまりにも僕の妖力と母親の妖力に違いがあるのです。……どう思いますか?」


錫は周囲を確認し、声を潜めて話し始めた



「なる……ほど、確かに不可解な点はある。」


雅は顎に手をやりながら顔を顰めた



錫が言うには菫と錫の妖力の強さ、そして属性に差がありすぎる…らしい。


確かに妖力の強さに関しては圧倒的に錫の方が強い。

両親の遺伝がある程度関係する為、父親がとてつもなく強い妖だったなら有り得る話だが、

錫の年齢から逆算して調べた所、そこまで強い白狐はいなかったらしい。


そして妖力の属性。

錫は炎、そして菫は水だそうだ。

確かに真逆の属性であり、父親が炎の属性でないと炎の子供は生まれにくい。



「属性に関しては遺伝しない事もあるので決定打には欠けますが……なにしろ母親には無いのです。婚姻歴が。」


「それは…………まぁ色々あったんじゃないのか?」


「僕もそう思いました。だから母に父のことを聞いたのですが一切教えて貰えず…

母が若い頃から仕えている銀様に聞いても

"あまり親を困らすなよ?"だそうで……」


「んー……難しいな」


情報源が話さない以上真偽を確かめるのは難しいだろう



俯いている錫に雅は優しく声を掛ける


「錫…真実を知れたとして、その後はどうするんだ?」


「僕は……」


沈黙が続いた後、錫は少しずつ顔を上げる


「もし、父親がいるのなら会いたい…そして何をしていたのかを知りたいです。

そしてもし……もし母が本当の母ではなかったら…

産みの親に会いたいです。何があったのか、何故母親は僕を引き取ってくれたのか…

全てを知った後自分の行く末を決めたいです。」



覚悟を決めた錫の顔。

その顔を見て雅は頷いた


「わかった。俺も情報が入り次第錫に伝えるよ。

それまでどのくらいかかるか分からないが…」


「いえ、こんなこと相談出来る人も少ないんです。

話を聞いて頂いただけでも有難い限りですし…

すみませんがよろしくお願いいたします。」


ペコっと頭を下げた錫はその後すぐに他の白狐に呼ばれて雅の元を去って行った。



「錫の出自なぁ……」


錫の妖力の強さは鬼との戦いで十分把握できている。

あんな強さの子供が産まれるほどの妖力を持った親…



「………まさかな…」


脳裏に浮上した考えに雅は首をふる


状況だけ考えれば有り得る話だが、何分里子に出す理由がない。


今の時点では憶測に過ぎないし、下手に動くと錫を傷付ける可能性もある。



雅が考えに耽っていると、太鼓の音が鳴り響く。


ふ……と皆が沈黙し、辺りが静寂に包まれた



祭り開始の合図。

そして舞手を隠している幕がゆっくりと動き始めた




錫のお悩み相談でした。

はたして雅の憶測とは?そして始まる祭りと凛桜の舞。

引き続きよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ