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凛桜の舞


しん………と静まり返る会場。


1歩踏み出す度、自身を包む視線をより強く感じる。



……まだ大丈夫、被衣かある限り表情を悟られることはない。



凛桜は速くなる鼓動を気にしないようにする為、

目を伏せてゆっくりと息を吸った



橋の終わりまで歩き、

凛桜は左足で舞台へと一歩踏み入れる



「っ……」


その瞬間、自身に流れてくる心地よい妖力。

清められた舞台に受け入れられ、内に渦巻いている緊張や不安が水に流されるような感覚に凛桜は少し微笑んだ。



今から舞い踊るのは豊穣の舞。

今年の実りに感謝し、来年の豊かさを祈るもの


そして今立っているのはそれを神々へと伝える為の舞台



……これからこの地が幸福に恵まれますように。



凛桜は穏やかな気持ちに包まれながら

静かに舞台の中央で被衣を取り去った




――――



笛の音と共に鈴を鳴らす。

軽やかに跳ねる鶴のような姿は舞台を照らす光も相まってとても神々しく、それでいてどこか柔らかい空気を生み出していた。



雅は他の妖同様、舞台の中央でひらひらと舞う1人の少女に息も忘れて魅入っていた



美しい刺繍の施された衣装は光によって銀にも金にも光る。その衣装に負けないくらいの耳飾りと髪飾りは凛桜が動く度にシャラシャラと心地よい金属音をたてている。



右へくるりと回り、鈴を鳴らしてまた回る



次々と変わる動作を流れるように舞っていく凛桜の姿に雅はそっと胸を抑えた



美しい、

その言葉では体現できない程の魅力を放っている。

今まで見たことのない、妖美で大人びた姿…

それなのにどこかいつもの面影も残っている。



「まさかここまでとは……」



雅は口元を覆い、周囲を魅力し続ける凛桜の舞を

静かに見守っていた。




――――



あと半分……


凛桜は舞いながら呼吸を整える



現在の周囲の視線、雰囲気からしても

豊穣の舞は無事に皆の心を掴めたように感じる


銀様から教えて貰った要注意人物も今は会話を止め、

口を開けてこちらを見ている



…これならいける。



凛桜は舞いながら銀と目線を合わす


銀は意図を汲み取り、すぐにその場から立ち去った



凛桜は銀が立ち去ったことを確認し、舞へと集中を戻す


誰も銀を目で追っている者はいない。

完全に自分へと意識が向いている



場を掌握できている事を確信した凛桜は最後の鈴を鳴らし、そっと床へ鈴を置き正座する



本来はここで舞は終わりだ。終了を告げる太鼓の音が2回鳴り響き、舞手は退場する。



だが、凛桜は座礼の形から動かず太鼓の音も鳴らない。


通常と違う事に気付いた何名かがコソコソと話しているのが聞こえ始めた



ドン!!



太鼓が鳴る。凛桜と銀への合図だ



瞬間、舞台は霧に包まれ

凛桜の姿が周囲の目から隠された



そしてその中から白い光、


笛と太鼓の音が激しく鳴り響き霧が徐々に晴れていく



皆の目に舞台が見えた時、凛桜は白髪の姿で剣を構えた




――――



周囲のどよめきの中、雅は目の前の光景に固まっていた



凛桜が輝く髪をなびかせながら舞い踊っている。

その姿からは妖力の乱れを一切感じさせず、

表情もどこか楽しそうでさえある



「驚いたか?」


隣から聞こえた声に雅は我に返る


「銀様……これ、これはどういうこと…」

「ハッハッハ!いいな、その反応を待っていたんじゃ」



銀は持っていた扇で口元を隠し、雅へと体を傾けた



「実はこの1ヶ月、ずっと練習しててな。

自分で愛し子の力を制御し、舞に取り入れるように凛桜から打診があったんじゃよ」



大変だった…と言わんばかりに首を振る銀



「だがお陰でこの空気よ。

雅見てみろ、今凛桜を囲っている視線はどんなのじゃ?」


「視線、驚きや畏怖…あとは見惚れてる感じですかね?」


雅の答えに銀は微笑む


「そう、それこそが凛桜の狙いだ。

この先黒龍と戦う為にも、敵を減らし味方を増やしたい。だからこの場で自分への評価を変えたい……と言っててな。そこまで言われたら協力するしかないだろ?」


銀は姿勢を戻し、凛桜の姿を見て優しく笑った



「誇れ雅。

お前の頭領は強く気高く、なによりも美しい娘よ。」



「はい、はい……本当に…」



雅は下を向き唇を震わせる



「あいつは本当に…最高の頭領ですよ。」




どよめきと歓声の中最後まで剣舞を舞いきった凛桜は

剣を高く掲げ、静かに頬を緩めた




舞のお話でした。

凛桜の思惑通りに事が進んだようで何よりです。

次回はそんな舞が終わり、楽しい宴のお話……

どうぞよろしくお願いいたします。

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