強欲の罪
「当たるわけにはいかないな」
私でも、これに当たれば、いや、擦りでもしたらやられるだろう。
幸いなことに、"奴"の手は追尾しないようで、かわすことは容易だった。しかし、次から次へと繰り出されるその攻撃は、避けることにのみ集中していれば近づけないほどだった。
「一か八か、魔法を放つしか、倒す手立ては無さそうだな。これは」
"奴"に向け構える。"奴"も私が立ち止まって良い的だと言わんばかりに手を放つ。
「来い」
"奴"に向け渾身の力で放つ魔法。
それは昔、父に教えてもらった中で一番好きだった魔法。
浄化の獄炎
いくつもの紫炎が"奴"を包む。しかし、"奴"はその手で全てを消した。
まったく、驚いた 浄化の獄炎は不消の炎、第十階の高位魔法。それをそんな簡単に消すことができる。
こいつは強い。そう確信できた
その攻撃を受けた、いや、吸収したのだ。"奴"は私の攻撃を。それと同時に姿が変わった。"奴"の姿は人のそれ似ていた。以前に一度見たことがある姿、
【七つの大罪の一人】
【強欲の罪 マモン】
それが、奴の真の姿だった。
「この姿は久しい」
その化物は先ほどと異なり、流暢だ
「会うのは初めて、ですね。話は最終戦争の時に聞いています」
最終戦争。大国と七つの大罪の3人が戦った戦争だ。
「最終戦争の事は我々もあなたに感謝をしています。魔王を倒し、降伏せざるを得なくしたのですからね」
地面に足を付けたと同時に無数の手を放つ。しかし先ほどより数倍大きく、その数も100は下らない数だ。
「強欲の罪」
その声と共に、その手は色を黒く染めた。その禍々しい瘴気は、当てられるだけで気絶してしまいそうになるほどだ。
このままではやられる。そう思った時だった
目の前まで迫った手が一瞬にして消えた。
否、マモンが手を消したのだった。
「つまらない。本来の力がない貴様は奪う価値はない。」
興が冷めた。と、呆れた様な顔で言う
「次は一月後に来ることにしよう。それまでに力を戻しておくといい。そうしなければ……そうですねぇ。貴様の大切なものを"全て"奪って差し上げます」
と、それだけを言い残し、煙を身に包み消えた。それと同時に何事もなかった様に、穴も塞がり、倒れていた人は全て起きた。
「だ、大丈夫でしたか!」
駆け寄り、声を掛けるナーク。
「しかし、心配してくれるのはいいが、さっきまで倒れていたのはお前の方なんだぞ」
ナークもマモンにより倒れた者の1人だった。
「わ、わかってますけど。七つの大罪のマモンが復活したなんて」
表情は暗く、声色も強張っていた。
「大丈夫。安心しろ。私が守ってやる。お前は心配するな」
それを聞いてもなお、俯いたままで、
「はい」
と返した。




