第二章レグルス編 10話 雨上がりの王女と美魔女な女王
レグルス王国を襲った悪神教との戦いは終わりを迎えました。
しかし、勝利したからといって失われた命が戻るわけではありません。
大切な人を失った者。
守れなかったことを悔やむ者。
それでも前を向かなければならない者。
今回はレグルス編のエピローグ、そして新たな旅立ちの回です。
雨上がりの空の下、シン達は次なる目的地へ向かいます。
ぜひ最後までお楽しみください!
レグルス王国首都。
レオランド復興は順調に進んでいた。
王女の意思で戦争をしようとしてた訳ではない。そう聞いた町の人達は安心し、食料も大量に配られ徐々に明るくなっていった。
しかし
城内は暗い雰囲気に包まれていた。
レジュ「皆…すまない。」
目の前に並ぶ兵士達の墓。
降り出した雨がレジュの頬をつたう。
地面に落ちた雫が雨なのか涙なのか自分でもわからなかった。
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兵士「姫様!見回りですか〜?」
兵士「姫様〜!賃金をあげてくださいよ〜!」
兵士「また勝手に出歩いて!もっとしっかりせんと父上のようになれませんぞ!レジュ姫!」
過去の記憶が昨日のように蘇る。
笑い声が響きわたっていた城の中は
雨の音と暗い静寂につつまれていた。
墓石を見つめながら一人一人名前を呼んでいく。
返事はない。
当たり前だ。
ヴィーラ「お姉ちゃん…」
姉の肩にそっと手をあて一緒に墓を見つめる
小刻みに震える姉の肩。
姉の体は普段よりも、何故か小さく見えた。
こんな時にどう声をかけるべきかわからない。
今自分に出来ることを考えたらこれしかない
ヴィーラ「祈りましょう。」
ヴィーラ「悲しんでても前にはすすめません。」
レジュ「ヴィーラ…」
レジュは思い出していた。
昔のヴィーラは、
少し叱っただけで泣いていた。
城の外へ出ることすら怖がっていた。
そんな妹が今は、
自分を支えようとしてくれている。
いつの間にか前を向ける大人になったと気づいた。
レジュ「強くなったな…ヴィーラ」
二人が祈りを捧げる。
降り続いていた雨が少しずつ弱くなる。
雲の切れ間から僅かな陽光が差し込み、
墓石を照らした。
レジュ「私は忘れない。」
レジュ「皆が命をかけて守ったこの国を。」
レジュ「今度こそ私が守る!」
立ち上がり、そう宣言した彼女の背中はもう迷いはなかった。
レジュは空を見上げる。
雨は止み始めていた。
遠くから聞き慣れた声が響く。
シン「おーい!」
ヴィーラ「シン様!」
笑顔でシン達の元へ行くヴィーラ。
レジュはクスッと微笑み、確信をした。
レジュ「私はそろそろ妹離れしないとな…」
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復興から1週間。
まだまだ城はボロボロのままだったが
街の人達、残された兵士達には少ないながらも笑顔が戻っていた。
シン「ずいぶん長い事この国にいるな!」
バウス「そうだな。」
シン「魔大陸にも早く行かねーといけねーし、そろそろ出発しないとな」
バウス「レジュ王女に許可貰わないとだろ」
シン「あ!忘れてた!笑」
バウス「まったく…」
シンとバウスは互いに認め合い
二人で街の様子を見に行く程仲がよくなっていた。
アラン「おっ!お前らどこ行っとったんや!」
シン「アラン!なんかあったのか?」
アラン「アリエルガ王国から使者が来たんや!」
シン「アリエルガ王国から??」
アランの後ろからやってくる黒い服を着た男。
年齢は40あたりだろうか。
アリエルガから来たということはアトラス山脈を越えてきたはずなのに、服には汚れのひとつもない。
使者「これはこれは。お初にお目にかかります。シン殿ですな。」
シン「は、はい!俺がシンです!」
コウ「緊張しすぎだろ笑」
使者「この度はアリエルガ王国女王である、アリス女王からお手紙を預かっております。このまま読ませていただきますね。」
使者の男は自分の胸の内側に忍ばせていた手紙を開くとおもむろに読み始めた。
女王からの手紙
「妾はアリエルガ王国女王アリス・マーチエである。此度は我が友好国であるレグルス国の救済。誠に名誉であった。我が国民としてアリエルガ王国からも表彰を行いたい。急ぎでアリエルガ国に戻り、王宮に来るように。尚復興に向けて色々と入用であろう。友好国としてこちらもレグルスに支援をさせてもらおう。」
使者「と、いうことで。支援の物資等は後ほど荷馬車にて確認していただけますようお願いいたします。レジュ王女。」
レジュ「ありがたい…」
レジュ「復興後は必ずお礼にお伺いさせていただくと伝えてくれ」
使者「かしこまりました。」
使者「では私は先にアリエルガ国でお待ちしております。女王様もシン殿ご一行にお会いできるのを楽しみにしております。」
早足でレグルスを後にした使者。
アラン「女王様に呼ばれるなんてコウと模擬戦場を破壊した時いらいやな!」
コウ「あぁ…嫌な思い出だ…」
苦い顔をするコウ。
バウス「そんな怒られたのか…」
コウ「いや…怒られたというより…まぁ会えばわかるさ。」
アラン「コウはモテモテやからな〜!」
レジュ「なっ!そ、そんなにコウはモテるのか?!」
焦った様子で話に入るレジュ。
この一週間でコウやシン達ともだいぶ距離が縮まっていた。
コウ「モテる…というか、じぃじとも知り合いだし俺の実の親とも知り合いだからな。おばあちゃんみたいな感じだ…」
シン「え!でもアリス女王の壁画は美人だったよ!?」
コウ「年齢を魔力で誤魔化してるからな…」
レジュ「そうか…ではもう行ってしまうのか?」
コウ「そうだな、本来の目的もあるし…」
アラン「そや!王女はん!魔大陸へ行くための許可が欲しいんや!」
レジュ「魔大陸だと…?!なぜそんな危険なところに…」
コウ達はレジュに事情を話す。
話を聞くにつれ顔が険しくなるレジュ。
悩み抜いた末にレジュは決断をする。
レジュ「…なるほどな。事情はわかった。我が父も行方不明の今レグルスは非常に不安定だ。魔大陸への許可は出そう。ただ2つ条件がある。」
シン「条件?!」
レジュ「あぁ。条件などと言ったが我が父、レグルス国王レオジュライ・スカーフェイスの捜索依頼をしたい」
アラン「王様の捜索か!ええんやない?コウ達の親父さんも見つけなアカンし!」
レジュ「そしてもう1つは…ヴィーラ。来なさい。」
レジュがヴィーラを呼びつける。
ヴィーラは緊張した様子で近付いてきた。
レジュ「我が妹。ヴィーラを旅に同行させてほしい。」
ヴィーラ「お姉ちゃん?!いいの?!」
レジュ「ついて行きたいとずっと顔にでていたしな笑 それに父上にヴィーラも会いたいだろう」
ヴィーラ「ええ…!父上だけじゃない。悪神教は他の国にも絶対何かしてると思うの。だから私は皆さんの力になりたい!」
ヴィーラ「それに…私も…誰かを守れるくらい強くなりたいの!」
シン「俺は大歓迎だ!」
コウ「いいんじゃないか?賑やかな方が楽しいし」
アラン「シン〜!ちゃんと王女様守ってやらなアカンぞ!」
バウス「足手まといになったら置いてくからな。」
ヴィーラ「皆様…!今後ともよろしくお願いいたします!それに私!もう守られるだけの王女じゃありません!」
アラン「すまんすまん!笑」
シン「そしたらこれからは5人で旅だな!」
コウ「ヴィーラこれからもよろしく頼む。」
ヴィーラ「はいっ!!」
嬉しそうに返事をするヴィーラ。
その笑顔は太陽のように輝いていた。
レジュ「……コウ殿、シン殿、アラン殿、バウス殿。本当に我が国を救ってくれたこと礼を言う。ありがとう。」
シン「仲間を助けるのは当たり前だろ?」
照れくさそうに鼻をこすりながら笑うシン。
コウ「まぁ大陸支配してる病魔も含めて、悪いものは全部なくした方がいいしな」
屈託のない表情でレジュを見つめるコウ。
アラン「ええこと言うやんけ!俺らは世界平和を願っとるんや笑」
手を広げながら大袈裟に言うアラン。
バウス「世界平和なんか興味がない。だがこーゆうのもたまには悪くない。」
どこか冷たい物言いだが、フッと笑いながら真っ直ぐ見つめるバウス。
それぞれ照れながらもレジュからの感謝を受け取り
次の冒険へ向かう。
アリエルガ王国女王がいるラグノリアへ。
シン「ヴィーラ行くぞ!」
アラン「はよせんと置いてくで!ヴィーラ!」
コウ「もう仲間なんだから敬語禁止だぜ笑」
バウス「さっさとしろ。」
ヴィーラ「はい…!いや、うん!今行く!」
レグルス王国王女レジュ・スカーフェイスより魔大陸への許可を得たシン達。
更に新たな仲間ヴィーラ・スカーフェイスを加え5人の長い旅が始まる。
11の国の王たちから許可を貰う魔大陸への道程は遠い。
そして舞台はアリエルガ王国ラグノリアへ…
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ラグノリア城
王座の間
使者「遠いところ御足労いただきありがとうございます。」
シン「とんでもないです!でかいお城ですね!」
コウ「アリエルガ王国は火の国ではいちばんでかいしな…」
シン「火の国?」
コウ「前に教えただろう…ノムア大陸は 火、水、風、土の4つの地方に分かれていて、それぞれ3つの国がある。その中でも火の国アリエルガはかなりでかい。俺らの故郷もあるしな」
扉の奥から強い魔力を感じる。
シン達は一瞬にして緊張が走った。
扉を開けるとそこには絶世の美魔女と言わんばかりの女性が玉座に足を組みながら座っている。
ただ座っているだけなのにその強さは圧倒的だとすぐにわかった。
アリス「うむ。よくぞ参ったのぉ!皆の衆」
値踏みするような視線でシン達を見る女王。
コウ「お久しぶりでございます。アリス女王閣下。」
アラン「女王様に呼ばれるなんて光栄やわ!今度はお説教じゃないとええけど…」
アリス「赤髪の小僧は相変わらず口の利き方が悪いのう笑 まぁよい。そちがコウの弟のシンじゃな?」
シン「は、はい!アリス女王!」
アリス「愛いやつじゃ。そんなに緊張せずとも取って食ったりせぬから安心せぇ笑 此度のレグルス救済誠に見事であった。」
シン「ありがとうございます!」
アリス「うむ。してその金髪の娘がレオジュライの娘の1人かの?」
ヴィーラ「アリス女王様。お初にお目にかかります。私レグルス王国第2王女。ヴィーラ・スカーフェイスと申します。」
アリス「よいよい。固くなるな。レオジュライより礼儀が正しくていい娘じゃのう。」
アリス「少し気になったんじゃが青髪の少年。」
バウス「…はい。」
アリス「そちは妾と会ったことがあるかの?見覚えがあるんじゃが…」
バウス「おれ…自分は女王とお会いするのは初めてです。」
アリス女王の視線は、バウスを見定めるように
向けられた。
アリス「…そうか。まぁよい。それにしても顔立ちがよいのう。将来は女泣かせになりそうじゃ。」
バウス「…へ?」
アリス「だがまだ15の子供。これからの成長に期待じゃのう。ではコウよ。約束通り今夜は妾の寝室まで来るが良い。」
目を丸くしてコウが焦り出す
わたわたと手を動かしながら必死に抵抗しようとする
コウ「ちょ、ちょっと待ってください!?約束なんてした覚えが…」
アリス「冗談じゃ。」
安心したコウは良かったと言わんばかりに胸を撫で下ろした。
アリス女王は続けて言う
アリス「して、シンよ。そちからみて父であるオウコと妾はどちらが強いと思う?」
全力で放つアリス女王の魔力。
真っ直ぐなアリス女王の瞳。
その瞳はまるで世界そのものを吸い込まんとするほどの威圧があった。
シンは息を飲む。
シン「…父さんより強い…と思います…!」
アリス「愛いやつじゃ。妾に世辞などいらぬ。妾とオウコを比べるのであれば、まぁどっこいどっこいくらいかのう」
笑いながらその場を和ませるアリス女王
だがシン達は肌身で感じていた
今まで出会った誰よりも強い。
アリス「して、使者からの話じゃとそなたらは魔大陸へ赴き、父を探したいそうじゃの」
アリス「魔大陸へ行きたい、か」
意味ありげな顔で考え込むアリス女王。
アリス「ならば、まずは妾の国で抱えている厄介事を片付けてもらわねばの」
シン「厄介事??」
コウ「……大森林の調査ですね。」
アリス「そうじゃ。火の国アリエルガと水の国を隔てる、ノムア最大級の森」
アリス「名は――フォルナ大森林」
シン「フォルナ大森林……え?そこコウ兄と俺が通ってきたとこじゃない?」
コウ「俺らが通ったのは森の端の方だ。もっと奥はかなり深い森林になっている。様子がおかしいと噂は聞いていたが…」
アリス「あの森では今、魔物の異常発生が起きておる」
ヴィーラ「魔物の異常発生……?」
アリス「ただの魔物ではない。森の生態そのものが狂い始めておる」
バウス「悪神教か」
アリス「まだ断定はできぬ。だが、レグルスで起きたことと無関係とは思えん」
アラン「つまり、そこ調べてこいっちゅうことやな?」
アリス「物分かりがよいのう、赤髪の小僧」
アリス「妾が出す条件は一つ」
アリス「フォルナ大森林の異変を調査し、原因を突き止めよ」
シン「それをやれば、魔大陸への許可をくれるんですか?」
アリス「妾の名において許可しよう」
アリス「ただし忘れるな。魔大陸への道は、王達の許可を貰うための旅でもある」
アリス「ここで死ぬようなら、魔大陸へ行く資格などない」
シン「……上等だ」
シン「俺達は絶対に行く。父さんを探して、病魔も悪神教も全部止める!」
アリス「よい目じゃ」
アリス「オウコの若い頃に似ておる」
アリス女王からの依頼を受けたシン達。
魔大陸への許可を貰うためにフォルナ大森林へ。
そしてそこでもまた、怪しく蠢く影があった。
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フォルナ大森林奥地
??「火の国の中心であるアリエルガとレグルスを戦わせる計画は失敗に終わったしな…」
??「ギュスターヴ様ってさ、ディコルプヌス様のお気に入りだったってだけで対して強くなかったわけだし仕方なく無い?」
??「まぁ。どうだろうな…」
??「いや、私の愛魔法の方強いと思うけど」
??「そうか…?血魔法は珍しいからな」
??「まぁいい。とりあえずここに魔物石を置こう」
??「さっさと済ませちゃいましょ!」
謎の男女。
悪神教は、また新たな計画を進めようとしていた。
そして舞台は、
アリエルガ編へ――。
第10話「雨上がりの王女」を読んでいただきありがとうございました!
今回でレグルス編は一区切りとなります。
レジュとヴィーラの姉妹の物語。
ギュスターヴとの戦い。
そして国を守るために命を懸けた兵士達。
レグルス編では「守りたいもの」をテーマの一つとして描いてきました。
また、今回から正式にヴィーラが仲間入りしました!
これでシン、コウ、アラン、バウス、ヴィーラの5人旅がスタートです。
そして最後にはアリエルガ王国女王アリス・マーチエも登場しました。
以前から名前だけは出ていましたが、ようやく本格登場です。
シン達がこれから向かうフォルナ大森林では、新たな事件と新たな敵が待っています。
レグルス編をここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます!
次回からは第三章「アリエルガ編」開幕です!
これからもAPOLLOをよろしくお願いいたします!
――岡本 煌




