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そんなつもりじゃなかったけど、なんて言わない。③

感想でも頂きましたが、ストーリーはかなり飛ばしております。あくまでおまけなので汗

そして、あと2話で本当におわります。ここまで応援本当にありがとうございました。

「♪~」


 再び謎の鼻歌を歌いながら俺の隣でカチューシャ付きの黒髪を左右に揺らして楽しそうに歩く朝霞。その顔は本当に、本当に楽しそうで。俺はほっとする。


 あの日。完全に曇った朝霞と出会ったあの日。『なんでもするから』と言われたあの日。

 俺は朝霞の笑顔を取り戻せるとは思っていなかったんだと思うし、心からそう願っていなかったのかもしれない。


 ただ、俺のせいで太陽が曇ったという事実から目を逸らしたかった。

 それだけなのかもしれない。


 いい人だと思われたかったのかもしれない。


 誰かにかっこいいと思ってもらいたかったのかもしれない。


 同情してもらいたかったのかもしれない。


 あわよくば朝霞と……と思っていたのかもしれない。


 全部かもしれない。


 だって、自分の心でさえ人は確かなものを見つけることが出来ないのだから。



 ここは本当に夢の国だ。


 夢は過去の整理と未来への希望だと誰かが言ってた。多分、中原。


 何を見ても色んなことを思い出すし、色んな希望を見つける。


 その登場にみんなが群がり騒ぎ出すキャラクター達を見ると、太陽だった朝霞を思い出す。

 違う世界の住人に見えた朝霞。

 そんな朝霞が隣にいて同じカチューシャをつけ、同じ速さで歩いて、同じ空間を楽しんでる。


 絶叫系に乗れば、朝霞を助けたあの日も、クソ親父から朝霞を助けるためにビルの屋上に昇れたあの日も思い出す。


 そして、俺は乗り越えることが出来た。あの日の恐怖も、あの日の恐怖も。

 絶叫マシーンの先にある、二人びっくり顔で見合わせて笑ってしまう安心感があることも俺は知った。


 楽しく食事をすれば、初めてのお弁当の卵焼きの味も、明神さん達といったファストフードも、バカみたいに騒がしかったきらら帰国記念のバーベキューも思い出す。

 そして、「おいしいね」と言い合える喜びもこれからだって何度でも噛みしめることが出来るって。


 いい思い出も悪い思い出も、どっちとも言えない思い出も全部俺の中にある。


 その思い出のどれもが朝霞につながっていた。


 俺は、朝霞がすきだ。


 だけど、確信はない。


 本当にただ好きなのか、違う感情が、打算が、欲が、同情が、罪悪感が、全くないとは言えない。ただ、じゃあ、本当に純粋なすきとはあるんだろうか。今まで見てきた好きは本物なのか偽物なのか。


 きららの兄貴への憧れにも似た思いは好きだったのか。


 きららの為に怒った俺への思いは好きだったのか。


 明神さんがすぐ人を好きになってしまい、たくさんの好きがあるのは偽物だと言えるのか。


 設楽さんと月宮さんの家同士の約束から始まる恋愛は偽物なのか。


 喜多さんのお芝居から始まった恋は偽物だったのか。


 中原の嘘告から始まったお付き合いは、トラの面影を追う恋は、トラの姉ちゃんが女の人がすきなのは、朝霞のお母さんとお父さんの関係は、母さんの親父へ抱いていた気持ちは、ぜんぶほんものなのか、にせものなのか。


 俺が決められるはずがない。


 俺にとって、はっきりしているのは、


「ん? なに、八雲君?」


 朝霞がかわいくて、朝霞がわらっているとしあわせだってこと。


 ただ、それだけを感じたくて、朝霞の笑顔が見たくて、その為に何が出来るかだけ考える。


 そして、日が暮れていく。


 朝霞の笑顔が少しずつ緊張に変わっていく。暗くなるにつれて、白いワンピースの裾を掴む力が強くなっているみたいだ。


「あの、や、や、くも、くん。最後、見に行こう」


 朝霞が俺の手を引いてどんどんと前に進んでいく。その手は熱くて、あの時掴んだ手よりもずっと熱くて、力強かった。


 一番いいところ、ではなく、ちょっと人が少ない外れにやってきた時には、俺も朝霞もちょっと肩で息をしていた。俺はともかく最近きららのバスケに付き合っている朝霞がつかれるとは思えない。


 だけど、朝霞は俺に背を向け、何度も何度も深呼吸を繰り返す。


「すぅううううう……はぁああああああ……すぅううううう……はぁああああああ……すぅううううう……はぁああああああ……」


 真っ暗な空を何度も吸っては吐く朝霞。


 朝霞のことをたくさん知れた日々だった。


 朝霞はただ太陽なわけじゃなかった。


 いっぱい悩んでいっぱい悲しんでいっぱい苦しんでそれでもキラキラを求めてがんばる、かっこよくて、かわいい女の子だった。


 本当に、俺は……。


「八雲君」


 夢の国の光を反射させ輝く黒髪をなびかせながら朝霞が振り返る。白いワンピースがキラキラでカラフルな光に染められ、虹色のドレスみたいだ。目もうっすらと虹色。うるんだ瞳の奥に、ちょっとだけ黒。 闇の黒、だけじゃない、アレは、朝霞の闇は、朝霞の不安や恐怖。臆病な朝霞の叫びだ。


 朝霞は怯えている。それでも、何かを俺に言おうとしている。俺に……。


「八雲君、わたしね……」

お読みくださりありがとうございます。


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