第59話 少年と罠
「ここもいない……」
つばきちゃん……。
まずは近くからと思い、コーラを飲んだ喫茶店、ランランと戦った公園に来てみたけど……やっぱりいない。
「ね、ねぇ……もうやめよっ?」
「えっ……?」
キラちゃん……?
何でそんなこと言うの……?
「レイくん……さっきから泣きっぱなしだし、見てられないよ……」
「そんなこと言わないで! キラちゃんだってつばきちゃんのこと心配じゃないの!?」
「あっ……ごめんね……」
キラちゃんに怒鳴ってもしょうがないけど……!
悔しい、悔しいよぉ……。
「キラちゃん、怒鳴っちゃってごめん。でも僕あきらめないっ!」
「ううん……」
泣くのもやめる! いっぱい考える!
「あ、暴れるなよっ……やっぱりやめる……? そんなことは許されな……ぐぅぅっ!」
「やめないし暴れない! さぁ、本気で行くぞっ!」
まずは……家に行ってそれからやっぱりつばきちゃんの学校かな!
「ルナたん、お願いがあるんだ。車に乗せてくれないかな?」
「……いいですけど。実は車の調子が悪くて、あまり遠くには行けません」
「それでもいいんだ。お願いします。おい鎧、お前も来い」
「御意に」
▼▼▼
「……夏休みの学校、しかもこんな形で来るなんて、ね」
「……」
家にはいなかったから……ここにいるだろうか。
まずは教室から――。
……。
「……いない」
「レイくんとつばきちゃん、いつも一緒だったから――一緒にお勉強したね」
「……うん」
うぅっ、また泣きそうになってきた……。
「次行くよ」
「うんっ!」
……。
「屋上にもいない」
「……」
次だ次!
……。
「音楽室、ここもいない」
「ここは――レイくんと初めての撮影をした場所だね」
そういえば……ここから始まったんだっけ。
「懐かしいね、ここの壁っ! まさか、つばきちゃんが壊しちゃうんだもん……」
「そうだね……」
つばきちゃんは強いから……。
強い、から……。
あれ?
「……つばきちゃん、何で捕まっちゃったんだろう……」
「それ、は……」
おかしい。
つばきちゃんは、強い。
そりゃ霊力はないけど……。
「足も速いし、あの事件の時も捕まらなかったし、多分豪よりも強いし……」
こんな、鎧なんかに捕まるはずが……。
「……何ですか?」
「いや……」
いつも一緒だったんだ、つばきちゃんのことはよく知ってる。
考えれば考えるほど……。
――いつも、一緒。
「……ほら、ここの窓からレイくんが飛んで動画を撮影したんだよねっ! つばきちゃんから離れられないから――」
「そうだ、僕はつばきちゃんと離れられない」
恭子さんの作った『依り代人形椿ちゃん』もここにはないんだから。
「……わかったよ、つばきちゃんのいる場所」
「ほう? どこでしょう」
すっかり騙された。
つばきちゃんは――どこにも行ってはいなかったんだ。
「おい鎧、お前のその中身……見せてみろ」
「レイくん……!」
「……」
鎧が、兜を外す。
その中にいたのは――あ、あれぇ?
「ふぅー、やっぱり鎧は動きにくいなぁーっ!」
「だ、誰ぇ……?」
全く知らない女の子!?
「あ、ちょっと待ってくださいね――だから待ってって! 無理やり出て来ないでっ! ――きゃああっ!?」
「えっ?」
中から……やっぱりつばきちゃん!
つばきちゃんつばきちゃん! つばきちゃん! うわぁぁぁああああんっ!!!
「ごべんなざいっ! レイぐんっ! 本当にごめんなさぁぁぁいっ!」
「うぅレイくん……! 私もっわだじもっ! ごべんねぇぇぇっっっ!!!」
「うわぁぁぁん! うわぁぁぁあああ~ん!」
無事でよかっだ! 生きててよかっだ!
「「「「うわぁぁぁ~ん!」」」」
「これが……私たちの王……」
お読みくださりありがとうございます!
2メートル以上離れられないことに今更気が付いたレイくんでした。




