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第15話 少年と妹

「ただいま」

「ただいまーっ!」

「おかえり、椿ちゃん、レイちゃん」

「あ……」


 家に帰って元気にあいさつ!

 と思ったんだけど……妹のさくらちゃんが何も言わずに行っちゃった。


「……ごめんなさいね、2人とも」

「いえ」

「ううん……」


 少しかなしいけど、それも仕方がないんだって。

 ぼくはさくらちゃんのお兄ちゃんであってお兄ちゃんではないのだから……。


「……とは言え、もう3か月。そろそろいいかしらね。おいで、リビングでお話ししましょう」

「?」


 お母さんが手まねきをする。


「あの子はね……ずっとお兄ちゃんのお世話をしていたのよ。あ、体の方ね」

「そう、ですね。定期的に病室に行っては本を読んだり、体をケアしてくれていたり……」


 ぼくの方がお兄ちゃんなのに、守ってもらうどころかいろいろしてくれてたんだ……。


「……桜はバレていないと思ってるかもしれないけど、辛いことや悩みがあるといつもお兄ちゃんに泣きついていてね。あと2人きりのときは『にぃに』だなんて呼んだりして」

「……」


 ふと、頭の中にそのイメージが――。


「――ダメッ!」

「レイくん? どうしたの?」

「あ……ごめんなさい。頭の中にそのイメージがうかんできたんだけど」


 今のぼくが見てはいけない気がして……。

 がんばってそのイメージをわすれる!


「ふふ、レイちゃんはいい子ね。けどね、いいのよ」

「……へ?」

「あなたはお兄ちゃんなんだから。さくらの悩みも知ったって。本人は知られたくないかもしれないけど、ね」


 それはそうだと思う。

 ぼくだって、内しょにしておきたいことくらいある。


「けどね、それは私たちが喉から手が出るくらい欲しいものでもある。そうすれば危ないことから守れることだってあるんだから」

「だ、だけどっ!」

「いいじゃない、余計なことは知らないふりすれば。だって――」


 お母さんが、わらいながらもつらそうな顔をする。


「知って嫌われるより、知らずに後悔する方が何倍も辛いもの」

「お母、さん……」


 それはきっと、かつてのぼくたちのこと。


「レイちゃんも、さくらのこと守りたいんでしょ?」

「そうだよ! だって、さくらちゃんはぼくの……」


 そうだ、さくらちゃんは……あの時、お母さんのおなかの中にいて――。


「ぼく……ぜったいいいお兄ちゃんになるってっ! やさしくするって……決めてたのにっ!」

「レイちゃん……」

「レイくん……」


 目のおくが、とってもあつい。


「ぐずっ、ぼく……思い出してみる」

「ええ。それでいいと思うわ」


 さっきわすれようとしたイメージ、こんどはそのまま……。

 これはきっと、からだのきおく。




 ――――――


『……にぃに、今日学校でね……ぐすっ……』


『にぃに、今日は卒業式だったんだよ! みてみて、これが中学の制服――』


『……にぃに、私ね……お友達から嫌なこと言われたの』


『にぃに、今日はご本を読んであげるね! もう何度も読んだけど、ヘンゼルと――』


『にぃにっ! ――』


『にぃに――』


 ……。


 ……。


 ……。


 そして……。


『桜ちゃん、この子がお兄ちゃんだよ』

『おにいちゃん? おからだわるいの?』

『そうだね。だから、早く良くなるように桜もお世話してくれるかい?』

『うん! さくらがんばう! あ、そうだぁっ!』

『どうしたんだい? おや、それは――』

『おりがみのつるさん! ほいくえんでね、つくったんだよ! おびょうきのこに、はやくよくなぁれってつるさんをあげるんだって!』

『そう、だね……』

『だからさくらね、まいにちつるさんをつくるっ! ごほんもよんであげるっ! おにいちゃんが――』

『……』

『はやくげんきになって、いっしょにあそべるようにっ!』


 ……さくら。




 ――――――


「つる……」

「うん?」

「つる、ある?」

「まぁ……ふふ」


 おかしいな、うまくしゃべれない。


「これの、ぐす……これのこと、かしら……」


 お母さんが大きな箱に入ったたくさんのつるを見せてくれる。

 おかしいな、お母さんが泣いてるよ。


「ふふ、翼の裏にね……メッセージも書いてあるのよ……」


 『げんきになあれ』

 『いつもありがとう』

 『元気になったら、いっぱいお話しようね!』

 『大すきだよ!』


「うん、うん……」

「さくらちゃん……」

「ふふ、きっと大丈夫。うまくいくわ。だって……こんなにも想い合ってるんだもの……」


 ぼく……ごめんね、お兄ちゃんなのに……ありがとう。


「ぼくも、つる、折る」

「まぁ」

「ぐずっ、さくらに……メッセージ……」


 お母さんが折紙を用意してくれる。


「けど……レイくんは……」

「大丈夫よ、きっと」


 折紙を手に取り、必死に作り方を思い出しながら……。


「――っ!? さ、触れてるっ!?」

「ふふ、さすがお兄ちゃんね」


 指の先がぴりぴりする。

 思うように動かない。


「くぅっ……うぅ……!」


 けどっ!

 さくらが何度も作ってくれた折紙で……お返しするんだ!




 ▽▽▽




「ん? 何か落ちて……何これ、折紙の鶴? あ、羽の裏……」


 『ごめんね、ありがとう、だいすきだよ』


「……汚い、字……本当に…………」




「ぐすっ……にぃに……うぅぅ~……うわぁぁぁ~~~ん」

お読みくださりありがとうございます!

今まで週5でお見舞いに行っていたらしいです。





もう1つ小説を投稿しています。異世界転生モノです。

そちらもよかったらぜひお願いします!

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