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第二十二話

「いやあ、色々あったけど久しぶりに楽しい会話できてよかったよ」

「まあ、そうだな」

「今度はうちに来なよ。人は少ないのに無駄に多いからいつでも大歓迎だよ」

「いつになるかは分からんが、その機会があればぜひお願いしたいものだ」

「いつでも待ってるよ」


 クロズリー家の門の前で父上とシャーロット公は別れを惜しむかのように話だす。シャーロット家の所有する馬車はすでに迎えに来ていて、二人はもう中に乗っている。日没前、空は茜色に染まりつつある。俺の容体は問題ないがやはり支えがないとうまく歩くことができないらしく、即席で削ってくれた木の棒と兄さんの補助で自室からここまで歩いてきた。骨は折れていないらしいが、もしかしたら軽い亀裂があるのかもしれない。どちらにせよ、しばらく体を休めることに専念することを勧められた。


「あ、そうそう。アルヴァ君」

「はい」

「今度エリナの方から手紙を書かせるから、そのつもりで」

「え……はい?」

「ちょっと、お父様!」

「だって、せっかく仲良くなったんでしょう?」

「そうですけど……」

「エリナs……エリナからの手紙、いつでも待ってます!絶対にお返事を書きますから!」


 エリナ様と言いかけたところであの目を思い出し、咄嗟に切り替えた。エリナの父親の前でいうのは今思えばかなり勇気のいる行為だったと今でも思う。おや、いつの間にそんなに仲良くなったのかい?とシャーロット公に詰められる絵が想像にたやすい。父上からも変な目で見られているのではないかと冷や汗もかいたが、そんな心配をよそに、お二方はただ笑っているだけだった。


「ありがとう、待っているよ。じゃあ、そろそろ出発してくれ」


 シャーロット公により、馬車に乗る従者は馬に鞭を打つ。ガラガラと大きな音を立ててこの屋敷を去る。見えなくなるまで俺と兄さんは手を振った。また会えると信じて。


「ところで、アルヴァ、エクス」

「なんですか?」


 馬車が遠くへ行ってしまったあと、門の前で咳払いしたのちに俺たちの名前を呼んだ父上。何やらかしこまった様子だ。


「実は本来ならシャーロット公らが来るまでに伝えなければいけないことがあったことを忘れていてな」

「伝えなければいけないこと……ですか?」

「そうだ。その……実はだな……」



 

「エリナは、アルヴァの許嫁だ」


 


「「え?」」


 瞬間、フリーズする俺の頭。今、父上、なんて言った?

「驚くのも無理はない。俺もシルヴァから聞かされるまですっかり忘れていたんだ」

「えっと、許嫁って……つまり」

「ああ、お前の婚約者、とでも言っておこう」

「いつからそんな話に?」

「昼食の時、シルヴァはお前に覚えているか、と聞かなかったか?」

「確か、そのようなことを言った覚えがありますけど……」

「アルヴァとエリナが初めて出会ったのは、シルヴァの主催したパーティだ。あいつのいう通り、まだお前が1歳の時だ。俺たちはそこで酒を交わしていたそうだ。その時、どうやらそういった話になったらしい。俺は一切の記憶がないがあいつは律儀にも覚えていたみたいだ。この前王都であった時、再びその話を持ちかけられたんだ。だが、さっきエクスには話した向こうでのやりとりの衝撃が強くてな。伝えなければいけなかったんだがすっかり忘れていたんだ。すまない」

「王都でのやりとりって……この前の」

「まだアルヴァには早いことだ。またいつか時が来たら話そう。さあ、屋敷に戻るぞ。今日はゆっくり休みなさい。食事は持って来させよう」


 俺がエリナの婚約者……これは夢じゃ……ない、よな。おかしい、今日1日だけで多くのことが起こり過ぎている。気持ちの整理がつかない。あんなに可愛い子が、俺の?向こうは知っていたのか?


「ねえ、兄さん。てことはもしかして……エリナは俺とどんな関係なのか知ってたってことなのかな?」

「アル……」


 何が何だかわからず助けを求めた。兄さんは俺の名前を呼ぶが虚空を見つめているのか返事が曖昧だった。そして突然、大声で叫んだ。


 

「アルに婚約者だってぇ?!俺まだそんな人いないのにぃ!」


 


作者の瑠璃です。

まずは読んでくださりありがとうございます。

この作品はタイトル通り、それぞれの視点で描かれる異世界物語です。魔族サイドのお話もあるのでもしよろしければその作品も読んでいただけると嬉しいです。また不定期投稿なので気長に待っていただければと思います。ブクマ、評価等していただけるとめっちゃ喜びます!!

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