1547年(天文16年)4月下旬、伊達晴宗、伊達家の財政状況を知り驚愕!
史実より1年早く天文の乱が終結しましたが、家督を引き継いだ伊達晴宗に現実の厳しさが突きつけられます。
1547年(天文16年4月下旬
伊達家15代当主、伊達晴宗は家督を相続した翌日、4月20日午前中、筆頭宿老、中野宗時から伊達家の財政状況の報告を受けました。
晴宗が受け取った書状には伊達家の財政状況の概算の数字が記されていました。
「殿、五年に及ぶ戦いの結果、伊達家の財政は極めて厳しい状況にございます。
税収入は落ち込み、戦費が嵩みました。
更に最上家から北部の所領を奪還され、蘆名家に会津、越後の国境方面の所領を奪われ、合計20万石の領地を失いました。
任地から退却して来た家臣や兵士達の処遇が未定にございます!僅かばかりの功労金を与えて凌いでおりますが、再配置をせねばなりません!」
「そうか、こんなに酷い状況だったとは…」
「はい、5年前には潤沢だった財貨は大半が戦費に消えて、残る蓄えは僅かになりました。
今は大商人から年貢を担保に借り入れて運営している状況に御座います」
「それで、返済の目処は立つのか?」
「ははっ、領内の水田を再建して、さらに新田の開発が必要でございます。それが順調ならば5年から10年程掛かると思われます」
「そんなに掛かるのか?」
「殿、更に深刻な問題がございます!
殿と大殿(伊達稙宗)が戦の功労者に発給した領地が重複している事実があり、当事者同士と財務担当者が揉めている案件が頻発して解決に時間が掛かります!」
「しかし、なんでそんな間違いが起きたのだ?」
「先ずは殿が功労者に加増を与えましたが、我々の知らぬ間に丸森城の大殿が同じく功労者に加増を与えたり、味方の陣営に勧誘するのに領地を与える証書を乱発したため、次第に領地の重複が増えてしまいました。ここ数日、財務方に苦情が殺到しております!」
「そうか、困ったな…どうしたものか…?」
「更には最上家と蘆名家に奪われた領地が加増が約束された領地で、幻の加増で救済を求める家臣達も少くありません!重複の加増、幻の領地を放置しては家臣達の離反を招きます!
殿!大鉈を振るうしかありません!」
「まさか?全てを見直すつもりか?」
「はい!伊達家の領地の全てを整理して再配分する必要がございます!」
「20万石が失われた末の再配分となれば、平均で4割減らした領地の給付になるのか?」
「はい、再配分すれば領地を減らされて家臣達に不満が生まれ、恨む者もありましょう。
殿が再配分なされて憎まれてはなりません!
領地の再配分は私にお任せ下さい!
私が鬼となり、憎まれ役になりましょう!」
「宗時、それで本当に良いのか?」
「殿、恨みを背負う役はお任せください!
殿は一門の方々や家臣達に優しい声を掛けて慰労するお役目をお願いいたします!」
「宗時、済まぬ!お主に鬼の役目を託す!」
「ははっ、お任せ下さい。
財政の立て直しの為、一心不乱に働きます!」
中野宗時は伊達稙宗に才能を見出されて嫡男、伊達晴宗の筆頭宿老に就任しています。
天文の乱の切っ掛けは彼が晴宗を焚き付けて伊達稙宗を監禁した事から始まり、恩人を監禁する策を提案するなど非情な一面を持っています。
中野宗時は44歳、伊達晴宗は28歳、二人の年齢は16歳も違い、卓越した能力を備えた働き盛りの筆頭宿老が晴宗を巧みに操り、大きな権力を掌握しました。領地の配分を采配する立場となれば水面下で下心ある伊達一門や家臣達が中野宗時に接近してご機嫌を伺う事になります。
伊達晴宗は迂闊にも中野宗時に大きな権力を与えてしまいました。
一方、立花家は想定通りに天文の乱を終わらせて、伊達晴宗に家督を継がせる事に成功しました。
立花家が本格的に奥州に進出する準備として更に手を打つ必要がありました。
―桑折西山城、二ノ丸―
―立花義秀、松千代―
「お爺、伊達家は天文の乱で20万石の領地を失って、史実通りなら従属していた蘆名家、相馬家、最上家、大崎家、葛西家が伊達家の支配から独立して伊達家の指示には従わなくなるよ!」
「だろうな、伊達稙宗殿の影響力が無くなれば其々が独立して身の振り方を考えて動くだろう。
だからこそ、霊山街道で田村家、二階堂家、二本松家に相馬家の軍勢を叩かせた事が吉となるぞ!」
「お爺の知恵が炸裂かな?」
「ぶははは!蘆名家は相馬家と仲が良いが、田村家、二階堂家、二本松家と相馬家が戦った為に蘆名家が田村家、二階堂家、二本松家と手を組む可能性が薄れ、伊達家の脅威になる可能性を潰してやったのだ!」
「お爺、先を見てるじゃん!
この戦いは史実に無かったから、予測出来ない事があるかも?油断せずに仲が悪いままに居てくれる様に工作する必要があるよね?」
南奥州の地図を見ながら義秀が気が付きました。
「あのなぁ、それならば岩城家、白河結城家、石川家が三家で同盟して伊達家を支える手筈なのだが、その三家の領地の傍に存在するのが二階堂家だ!
この二階堂家を同盟に引き入れたらどうだ?」
「キャハハハ!お爺、正解だよ!
同盟出来るかわからないけど、やる価値があるよ!
万里小路様に水面下で二階堂家の勧誘を頼んでみたらどうかな?」
「ぶははは!それだ!頼んでみるぞ!」
「それから、伊達家の財政は苦しい筈だから、手助けするのはどうかな?」
「おぉ、それは既に考えている。
政家(筆頭宿老、鹿島政家)にどれだけ出せるか調べさせておるぞ!伊達家だけでは無く、岩城家、白河結城家、石川家、さらには二階堂家が同盟に加わるなら支援してやりたいからな!」
「キャハハハ、お爺、カッコいいよ!
それでさぁ、岩城家と立花家は秋には婚礼で縁組して同盟大名家に引き入れるけど、白河結城家と石川家、二階堂家の扱いは決めてあるの?」
「それはな、伊達家と岩城家は立花家との直接同盟する事になるが、岩城家と白河結城家、石川家、二階堂は伊達家を支える岩城家との同盟になる構図になる予定だ!」
「つまり、立花家との関係だけど、南奥州では伊達家が筆頭で2番手が岩城家の序列で決まり?」
「そうだ、そのつもりだ!」
「お爺、序列は相手にしっかり伝えましょうね!」
「解った!そうする!」
祖父と孫が立花家の方針を決める姿に近習と松千代の美人侍女達がクスクス笑いを漏らしました。
「お爺、天文の乱が終わった後、史実では伊達晴宗殿が居城を米沢城に移転するんだけど、伊達家再建の為に、お爺から米沢城に移転を勧めてみたら?
本拠地に相応しく城も城下町も広げて新しい伊達家の時代にする為だからと資金援助を申し入れたらきっと喜ぶよ!」
「ぶははは!それだ!米沢城だ!
史実より早く伊達家を立て直すぞ!」
伊達家の本拠地移転が立花家の支援で実行するとなれば将来の奥州進出に有利な状況になりそうです。
立花家の奥州遠征は伊達晴宗にさらなる恩義を与える事になりそうです。




