1547年(天文16年)3月上旬、【東福寺の盟約】、石山本願寺と立花家の縁組成立!
朝廷は独自に軍事力を持たない為、本願寺を軸とする宗教兵力と堺衆を味方に付けて、堺湊から洛内への物流を支える主要街道周辺の治安を維持しています。
しかし、洛内の治安は良いとは言えず、治安回復の対策が急務でありました。
近衛稙家は治安対策を講じるついでに本願寺と立花家の縁組を計画します。
両者を姻戚関係にすると、8年後に近衛稙家の娘が立花家の松千代に嫁ぐ予定になっており、近衛稙家、立花家、本願寺の姻戚関係が成立します。
近衛稙家は朝廷の安泰の為、巧みな布石を放ちます。
1547年(天文16年)3月上旬
3月2日の午前中に近衛稙家から東福寺の立花家別邸に使者が到着しました。
使者の口上により、朝廷から幕府に対して綸旨を与えて洛内の治安回復に協力を命じた事が判明しました。
詳細は届けられた書状から知らされ、立花義國が先に目を通して叔父の将広に書状を見せました。
―東福寺、立花家別邸―
―立花義國、立花将広―
「ぶははは!義國、近衛様はやはり朝廷の実力者、頭が切れる!仕事が早いぞ!」
「はい、叔父上が指摘していた、幕府にも協力させる事を近衛様も考えて、洛内の半分は朝廷側、半分を幕府側に巡回警備を割り振りました。
更に町衆の指導者を取り込み、武装した町衆の兵力を味方に付けました!
誠に見事な手腕にございます!」
「ぶははは!近衛様に5万の兵力を指揮させたら面白いだろうな?」
「はい、それは頼もしい総大将になりましょう!」
「義國、勅命を出さず、綸旨にした理由が解るか?」
「はっ?…勅命は…厳しい命令に感じますが、綸旨は少し優しい感じが致しますが…」
「その通りだ!そのあたりの機微を微妙に使い分けする感覚が見事だ!
更には町衆の武装兵力が有るとは知らなかったぞ!
これは意外にも多くの兵力が集まるかも知れぬぞ?」
「叔父上、これで朝廷は町衆の半分を兵力に組み入れます!残る半分は幕府側と巡回警備を致しますが、協調する事が出来ましょうか?
幕府側の兵士が町衆と仲良く出来るか疑問でございます!」
「ぶははは!近衛様は幕府と町衆が対立する事を望んでいるかもしれぬ…
町衆が幕府と対立したら町衆全体が朝廷贔屓になるだろう…それで洛内の町衆を合わせた兵力は数千から1万を超えるとしたら?…それに宗教勢力の兵力を加えたら朝廷の発言力は更に幕府を凌駕する!」
二人は近衛稙家の智謀に感心しながら朗報を噛み締めました。
軈て昼過ぎに、近衛稙家が九条稙通と、綸旨下達の為、勅使、烏丸義光を引き連れて約束通りに東福寺、立花家別邸に到着しました。
立花家別邸の大広間に立花家の上洛使節団の14名に加えて本願寺、大徳寺、東福寺、石清水八幡宮、堺衆の代表が揃いました。
勅使、烏丸義光が綸旨を読み上げ、本願寺、大徳寺、東福寺、石清水八幡宮、堺衆、立花家に対して都の治安回復の任務を託す叡慮が与えられ、平伏する一同の代表として最上位の官位を持つ立花義國が叡慮を受託する返答を済ませて儀式が終わりました。
近衛稙家は洛内の地図を広げ、朝廷が担当する警備区域と幕府が担当する区域を示しました。
立花義國が本願寺と仲間の指揮官達に事前に説明済の為、近衛稙家の洛内警備計画は順調に説明が出来ました。四条烏丸陣屋が完成するまでは既存の寺院を拠点にする事や空き家を改装して巡回警備部隊を配置する事が知らされました。
本願寺、大徳寺、東福寺、石清水八幡宮、堺衆の指揮官達に洛内警備の使命が与えられ、名誉ある任務を授かり気合いが入りました。
彼らにはすでに勅命を受けて堺湊から洛内に至る流通経路の警備を任されています。
朝廷から二つ目の下命を授かり、士気が高まりました。
近衛稙家の計画のお披露目が終わると親睦を高める宴が始まります。
宴が始まる直前に本願寺の最高指導者、証如が東福寺、立花家別邸に到着しました。
証如は近衛稙家に誘われて東福寺、立花家別邸に女性を伴って現れました。
近衛稙家は立花義國、立花将広を別室に呼び出して本願寺の宗主、証如と妹の眞奈姫に逢わせました。
九条稙通が笑顔で其々を紹介しました。
立花義國は密かに察しています。
叔父の立花将広も気配を察してニヤニヤ笑みが溢れています。
「立花義國殿、立花家は朝廷を400年余も支える大事な柱である。そして本願寺は武力を持たぬ朝廷を支える大事な柱であるのだ。
朝廷を支える二つの柱を更に強くする為に両家が結ばれて更に朝廷を支えて貰いたい!
此れなる本願寺宗主、証如殿の妹、眞奈姫を其方に嫁がせたいのだ!
其方に正妻が存在する事は承知の上なのだが、宗主、証如殿も眞奈姫も側室で構わぬと承知の上、近衛稙家のたっての願い!承知願えぬだろうか?」
近衛稙家から突然に本願寺の宗主家と立花家の縁組を申し込まれた立花義國…
父、立花義秀から上洛中に決断を迫られたら最善を尽くして判断すれば良いと助言を受けていました。
更に縁談を申し込まれた場合にも責任を持って決断せよ!と次期当主に相応しい対応を覚悟させていました。
「ははっ!謹んでお引き受け致します!
朝廷の為とらあらば、身に余る光栄に感謝致します!
本願寺宗主、証如殿、眞奈姫を大切にする事を御仏に誓います!」
「おぉ、それは目出度い!目出度いぞ!」
「立花殿、眞奈を宜しくお願い致します!」
近衛稙家も宗主、証如も喜び、眞奈姫も安堵の笑顔を義國に向けました。
「ぶははは!目出度い酒が呑めますぞ!」
泥酔軍師、立花将広が喜びの声を上げました。
「立花殿、全ては近衛稙家の企みじゃ!
本願寺、立花家を繋ぎ、朝廷を支える勢力を固めたかったのだ!
ご覧あれ!ここに朝廷から近衛稙家、九条稙通、本願寺、大徳寺、東福寺、石清水八幡宮、堺衆に立花家が協力する盟約の書状を用意した故、署名して貰いたい!宜しいだろうか?」
傍らの九条稙通、証如は既に事前に知っていた様子で頷きました。
「ぶははは!流石近衛様は見事な迄に備えられました!
御仏の掌に乗せて頂きましょう!」
立花将広が義國の決断を促します。
「承知致しました!喜んで署名させて頂きます!」
近衛稙家、九条稙通、本願寺証如、立花義國が署名を済ませると大徳寺、東福寺、石清水八幡宮、堺衆の代表が一斉に呼ばれて本願寺証如の妹、眞奈姫と立花義國の婚姻と盟約の意義を伝えました。
彼らは其々が協力を誓い、進んで書状に署名を済ませました。
この日の宴会は【東福寺の盟約】と記憶される事になり、朝廷を支える仲間の結束を高める盛大な宴になります。
本願寺と立花家が姻戚関係になります。
史実通りなら後年、本願寺と織田信長は激しく戦う事になります。
立花家と織田家は昨年熱田神宮を訪問して以来、良好な関係ですが、織田信長が上洛を果たす頃に立花家と対立する事が確定しました。




