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戦国立花家三代、新日本国戦記、大國魂神社の大神様に捧ぐ!織田信長を倒して全国統一を目指します!  作者: 近衛政宗


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1547年(天文16年)1月下旬、簗田晴助、府中城訪問!

古河公方家の最高実力者、筆頭宿老、簗田高助の嫡男、簗田晴助は万里小路頼房に命じられた報告をする為に立花家の本拠地、府中城に向かいました。

彼には使者としての役目の他に、立花家の領内を探る目的がありました。


1547年(天文16年)1月下旬


1月22日の早朝、府中城に古河公方家の使者がやって来ました。使者は勅使、万里小路頼房に報告書を献上する為に目通りを求めました。

使者の到来は直ぐに万里小路頼房に知らされました。


「ほほほ!待っておりましたぞ!」

万里小路頼房が膝を叩いて喜びました。

古河公方家の使者が万里小路頼房に目通りする事は、世間の目には古河公方家が立花家に頭を下げる形に見えてしまいます。古河公方家は勅使、万里小路頼房に命じられた報告の為にその屈辱を承知しながら使者を派遣していました。


頼房は事前に古河公方家から自分宛に使者が来る事を立花義秀に知らせています。使者に目通りする際には立花家の重役を揃えて使者を威圧する手筈を整えていました。


一方、古河公方家の使者は古河公方家の筆頭宿老、簗田高助の嫡男、簗田晴助(23歳)でした。

父から託されて彼自身が現地調査をした結果を携えて府中城までやって来ていました。

古河城から出発して利根川を渡り、配下の岩槻公方家の領内を経由して立花家の領内に入りました。

大火で焼失した川越城下町の復興する姿を視察して、更には新座、清瀬、東村山、国分寺を通過して府中の町に入りました。

当初は直接府中城に向かう予定でしたが、府中の町の繁栄振りに興味が湧いて、町中に宿を見つけて宿泊しています。宿の主人に案内役を手配させて府中の町を探訪しています。


簗田晴助と従者3名は控えの間に一刻(2時間)程待たされました。やがて案内された本丸御殿の大広間には上座に万里小路頼房、両脇に立花義秀、立花義國親子に立花家の宿老、中老等の重役、更に同盟大名家9家の大使達が招かれています。

上座側に50名が並び、威圧するかの如く視線を送ります。

簗田晴助は離れた下座から挨拶する事になり、案内人から挨拶する様に促されました。


「ご挨拶申し上げます!古河公方家!筆頭宿老!

簗田高助が嫡男!簗田晴助にございます!」


その時、上座の万里小路頼房から挨拶の言葉を遮る声が上がりました。

「待たれよ!使者殿!其方は古河公方家と名乗ったであろう?朝廷から謹慎5年!職務停止5年を下された勅命に叛く気か?!

古河公方家の名称を使う事は厳禁である!

以後、勅命に叛くつもり無き事を誓われよ!」


万里小路頼房の厳しい叱責に簗田晴助は平伏して謝罪するしかありません。

「ははっ!ご無礼仕りました!申し訳ございません!

二度と名称を使う事はいたしません!

深く恥じ入り!お詫び申し上げます!」


「良し!赦す!挨拶をやり直せ!

そうだな上方の足利家と区別せねばならぬからな、此れより古河、足利家と名乗るが良い!」

万里小路頼房が怒りの表情のままに簗田晴助を威圧しました。


「ははっ!古河、足利家、筆頭宿老、簗田高助が嫡男、簗田晴助にございます!

本日は勅使、万里小路頼房様に御報告を申し上げる為、我が主人、足利政孝より使者として罷り越しました!」


「良し!使者殿、麿まろが命じた件はどうなったのかのぉ、報告書は後で確認する故、こちらの立花家や立花家の同盟大名家の大使達にも聞いてもらわなければならぬから、其方の言葉で説明するが良いのだが、根本的原因は其方の主家が房総半島の里見家を乗っ取る為に常陸国から傭兵と僧兵を掻き集めで安房国、上総国へ侵攻させて失敗した結果、切り捨てた事にある!

幕府から関東を静謐にする役目を任された筈が、他国を侵略する行為に及んだ反省を含めて報告せよ!」


万里小路頼房は事実を元に厳しい言葉を放ちました、

弱冠23歳の簗田晴助は言葉を選びながら必死に答えようとします。 


「ははっ!謹んで御報告致します!

先日、ご指摘がありました常陸国の傭兵達への報酬未払いの疑念につきまして、常陸国に赴き、調査した結果、一部に報酬未払いが発覚しました!

責任者を問い質した結果、数名の者が横領した事が発覚致しましたので、直接横領した4名と黙認した関係者を12名を斬首、監督責任を果たせなかった上司4名を切腹させました。

事の発端は房総半島の領主、里見家の正統な後継者、里見義光殿に支援を要請されましたので、足利家が支援を決めて、傭兵を募り、義勇軍として出征致しましたが、武運拙く遠征は失敗して恥じ入る次第にございます!」


「待たれよ!事実を曲げてはならぬ!」

万里小路頼房は簗田晴助の言葉を否定しました。


「はっ!?現在の里見家当主は先代の当主、里見義豊公に反逆して家督を強奪しております。

今は亡き里見義豊公の忘れ形見、里見義光殿に支援を頼まれて立ち上がったのでございます!」


「違うな!事の発端は10数年前、里見義豊が当主の頃に立花家と同盟を組む必要に迫られ、現在の里見家当主、従兄弟の里見義尭殿の妹君が本家、里見義豊殿の養女として立花家に嫁いで婚姻が成立した!

これで立花家と里見家の同盟が成立したのだが、ほどなくして、当時の古河公方家が陰謀を仕組み、立花家と里見義尭殿が結託して叛乱を起こすと噂が流れ、里見義豊殿が噂を信じて里見義尭殿の父君を暗殺しているのだ!

更に義尭殿の暗殺を狙ったが失敗、逆襲に転じた里見義尭殿が多くの家臣に支えられて父君の敵討ちを成し遂げて里見家の家督を継いだのが正しい事実であり、

昨年も野心を捨てずに里見義光殿を担ぎ上げ、房総半島に傭兵を派遣して里見家の家臣達を叛乱に巻き込み、侵略に失敗したのが事実である!

既に麿は昨年の叛乱軍の者達から直接事実を聞いているから間違い無いのだ!

それでも其方は正義の為の戦いだと言えるのか?」


万里小路頼房の厳しい言葉に簗田晴助は追い込まれました。叛乱の当事者から話しを聞いている相手に嘘は通じません。簗田晴助は観念しました。


「申し訳無い事を致しました!

その頃の私共は命じられた事が正義と信じて戦いました。善悪の意識も無く、只々指示に従う事に専念しておりました!

深く恥じ入り、伏してお詫び申し上げます!」


簗田晴助は古河公方家に従わぬ勢力を叛乱軍と決めつけて侵略行為を正当化していた事実を悟りました。

全ては古河公方家の正義の為と信じていました。


「良し!幕府から関東の静謐と民の安寧を託されていたはずが、関東を騒乱の渦に巻き込んだ事実を認めたようだな?

それではなぁ、騒乱の最中に命を絶たれた全ての方々に心の中で詫びるがよかろう…」


「ははっ!心に刻み!伏してお詫びを念じまする!」

簗田晴助はお家の為の演技で万里小路頼房の機嫌を損ねずに凌ぐ事に専念しました。


「更に、房総半島で降伏した捕虜数千を無事に常陸国へ送り届けた立花家に感謝するが良かろう?」


「はっ!立花家の皆様に数千の兵士達を救って頂きました。その情けに感謝申し上げます!」


「解ってくれたならそれで良い!

其方の態度に免じて、これ以上は追及はせぬ!まぁ、古河城では好き放題追及したからな、これまでじゃ…さて、立花殿、何か使者殿に申される事があるかな?」


万里小路頼房は簗田晴助をいじり倒して満足したので、そろそろ立花義秀も悪戯したくてウズウズしているだろうと、順番を与えてニヤリと笑みを浮かべました。立花義秀は頼房に目配せして待ってましたと、笑顔を返しています。


「さて、簗田晴助殿、川越の町の復興具合は如何であったかな?さらには新座、清瀬、東村山、国分寺等を巡られて立花家の城塞等を見学なされて、府中の宿に泊まり、風呂に浸かり、スッポン鍋を堪能なされたらしいな?」


「ははっ!全てお見通しとは驚きました!」

監視されていた事に驚きながら、簗田晴助は平静を装い、冷静に答えました。


「簗田殿、昨年、立花家が川越城を攻略したのだが、川越上杉家は苦し紛れに城下に放火した為に大火になり、多数の家屋が焼失した。

無責任な領主に代わり、立花家が城下町を再建中であるが、まぁ広い範囲が焼失した故に、多数の領民には仮住まいの住居を与えてる。

完全復興までは後2年は掛かるであろう。

それから、新座の平林寺城、清瀬城、八国山城を経由して国分寺城までの備えを警備態勢を確認しながら府中まで、将来の侵攻手順の確認をするが如く、下見に参られたな?

まぁ、凄腕の筆頭宿老、簗田高助の跡継ぎならば、任務故に仕方なかろう…

さて、ついでに提案だが、明日から3日間、立花家の領内を其方が見聞する事を許す!

案内人を付けて遣わす故、好きなだけ見て参れ!

役立ちそうな事は何を真似ても構わぬ!

どうだ?3日間滞在してみるが良いぞ!」


「えっ?!…宜しいので?…」

簗田晴助は突然の提案に驚きました。


「さて、ひとつ質問があるぞ!

其方が常陸国に出向いて調査した際に聞かなんだか?

房総半島から帰還した捕虜の兵士達が未払金を請求したら雇い主に口封じに討ち取られたと、幾つか報告が来ておるのだが…事実かな?」


簗田晴助は知られていた事に驚きながら、隠しきれないと諦めました。

「はっ!はい!事実に御座います!」


「素直で宜しい!

さて、其方の父君(古河上杉家、筆頭宿老、簗田高助)は切れ者だが、どうやら、常陸国では房総半島に騙されて連れて行かれたと怨嗟の声が広まり、霞ヶ浦周辺の領主達から不満が出てるそうだな?」


「はっ、はい、当方の不始末にて…」


「簗田晴助!

その不始末の事実は言いにくいだろう。

まず、2年前に古河公方家の軍勢は常陸国中部から北部に侵攻して、国内最大の敵対勢力、佐竹家を降伏させて常陸国の大半を手に入れた。

そして昨年、古河公方家は房総半島に侵攻する為に不足する兵力を佐竹家から多勢の出兵を命じたが、既に下総国柏方面に主力の軍勢を供出していた為、佐竹家は家中の次男、三男を掻き集めた。

それでも兵力が足りぬと判断され、常陸国内の傭兵で賄う事になり、武家や農家の次男、三男、野武士、野盗、地下人、僧兵まで掻き集めた…

しかし、仲介人と称する怪しげな手配師に操られ、更に簗田家に関わる人物まで、不正に加担していた。

複雑な事情で公表出来ぬ事があったであろう。


やがて房総半島侵攻に参加した佐竹義廉殿と配下の軍勢が立花家に降伏、佐竹義廉殿の軍勢は部屋住みの次男、三男、帰国しても跡継ぎには成れぬ境遇と知った我が弟の立花将広が誘いを掛けた事に依り、佐竹義廉殿と降伏した兵士達が立花家に仕官する事になった。

しかし、それを知った古河公方家は佐竹家を疑い、昨年4月に佐竹義昭殿を古河城に連れ去り軟禁したと聞いているが、そろそろ開放して帰国させては如何かな?」


「はっ!はい!…叛乱を防ぐ為に已む無く軟禁いたしました。それから帰国につきましては主人に伝えます!」

秘密にしていた事が指摘されて簗田晴助は素直に答えてしまいました。


「ぶははは!やはり事実だったな?

さて、万里小路様、佐竹義昭殿の扱いにつきまして、何かご助言がございますか?」


「ほほほ!立花殿は気が利くおとこじゃ!

さて、簗田晴助に命ずる!

正式な書簡を渡す故、佐竹義昭殿を開放して帰国させよ!」


「ははっ!承知致しました!

早速、早馬を古河に向かわせまする!」


「ほほほ!それで良し!」

万里小路頼房はしてやったり!と満足した様子を見せました。


「さて、簗田晴助殿、3日間、案内人を付ける!

護衛も配置する故、立花家の施政を見聞なされよ!

良いかな?」

立花義秀は凄みを利かせた視線で睨みます。


「はっ!ご配慮に従い、見聞させて頂きます!」

簗田晴助は観念して受け入れる事に決めました。


立花家の案内人と護衛付きで明日から3日間、簗田晴助が府中に滞在して、好きなだけ立花家の領内を見聞する事になりました。


―府中城、露天風呂、立花義秀、松千代―


簗田晴助との目通りを終えて、二人で露天風呂に入りました。

「お爺、簗田晴助をやり込めたらしいね?」


「ぶははは!万里小路様と二人できつく締め上げてやったから笑いが止まらぬ!」


「佐竹義昭殿の帰国は?」


「帰国出来るぞ!簗田晴助の従者に万里小路様からの命令書を与えて早馬を出したから、

間も無く開放されるだろう!」


「それなら良かった!」


「松千代が指摘しなければ見落としていたぞ!

これで佐竹義昭は立花家に借りが出来た事になる!

松千代は見事な軍師だぞ!」


「それで、お爺、もうひとつ忘れてるよ!

下総国、鎌ヶ谷方面駐留軍の佐竹義廉殿に朗報を伝えなきゃ!ダメじゃん!

彼が、将広爺(義秀弟、立花将広)に口説かれて立花家に仕官した事が切っ掛けで、佐竹義昭殿が古河城に軟禁されたのだから!気に掛けているはずでしょう?

早く知らせなきゃ!」


「あぁー!忘れてた!直ぐに知らせる!

それにしても、松千代も目通りの席に出れば良かったじゃないか?」


「いやいや、お爺、目立ちたく無いから遠慮したの。

あの席に居たら絶対に黙ってられず、何かやらかして問題になったかもね?」


「ぶははは!それが見たかったけどな?

そうだ!簗田晴助にあすから3日間、領内を案内して好き放題に見聞させるぞ!」


「えぇー!お爺、太っ腹!

きゃははは!全部見せちゃうの?」


「あぁ、少しでも参考になり、奴らの領民の暮らし向きの向上に繋がれば良いではないか?」


「うーん、グフフフ…レベルが違いすぎて真似出来ないかも?」


「ぶははは!それも有り得る!」


温かい湯に浸かりながら、祖父と孫の会話が楽しそうに続きました。



松千代の助言から佐竹義昭の軟禁が解かれて帰国が実現しそうです。

実現すれば、佐竹義昭は立花家に恩義を感じるはずです。今は古河、上杉家(古河公方家)に従属していますが、将来は立花家と手を繋ぐ事が有るかもしれません。

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