１５４７年(天文１６年)１月中旬、立花家の文化に嵌る同盟大名家？！
府中の町は武蔵国守護府開設を間近に控えています。
同盟大名家の当主や家臣達が町を探訪すると彼らは府中の文化に夢中になりました。
１５４７年(天文１６年)１月中旬
１月１５日の武蔵国守護府の開設記念式典の為、府中の町には立花家と同盟を結んだ大名九家が次々に集まりました。彼らが率いてきた家臣達は大使館職員に案内されて府中の町を巡り、府中の町ならではの新鮮な海産物、多彩な食文化に出会いました。
市場には小田原、横浜、品川の湊に早朝に入荷した海産物が昼頃には府中の市場に並びます。
スズキ、タチウオ、アジ、マダイ、イシダイ、アマダイ、カワハギ、、シロギス、ヒラメ、カサゴ、更には希少な食材としてクロムツ、伊勢海老、カキ、ウニ、ハマグリ等も流通していました。
市場にある屋台で新鮮な海産物を刺身、焼き物にして食事が出来ました。
市場にはその他にラーメン屋、蕎麦屋、うどん屋、鰻屋、天麩羅屋等、他にも多数の食事処があり、同盟大名家の家臣達は府中ならではの食文化に触れることになりました。
更には府中の町には男女の着物や衣服は色鮮やかな色彩で、派手な物から、落ち着いた色柄や意匠が多彩で男性用の着物や衣服は格好が優れ、女性用の着物や衣服には美しく見せる工夫が為されていました。
武家、商家、農家、工芸職人向けの着物屋、衣装屋が幾つも出店しています。
同盟大名家の家臣達は立花家の着物、衣服の文化に驚きながら、買い物を楽しみました。
府中の町には同盟大名家の一般の家臣達だけでは無く、大使館の職員に案内されて当主達も重臣達と共に見物に出掛けました。
市場を見物して屋台や食事処の珍しい食物に嵌り、着物屋、衣装屋を巡り、工芸品や、武具、仏具、宝飾品、土産物を扱う店舗を巡り、気に入った物を次々に買い付けて買い物を堪能しました。
食事処やその他の店舗ではいずれも接客態度が素晴らしく、品質は良好であり、手頃な値段に抑えられています。石畳の舗装された道筋にはゴミも落ちておらず、ましてや犬、猫、馬の糞等も有りませんでした。
同盟大名家の家臣達や当主、重臣達も府中の町の生活文化の高さに驚くばかりでした。
武田晴信も弟、武田信繁と重臣達と共に府中の町を探訪しました。
食事処や着物屋、衣装屋、工芸品等の店舗を訪問するだけでは無く、府中の町全体の様子が知りたくて熱心に監察を続けました。
府中の町は大國魂神社を中心に石畳で舗装された道が碁盤の目の如く広がり、領民の為に町を循環する馬車や定められた経路を走る馬車が幾つも走っています。町の至る所には多摩川と野川から分水した水路が巡らされ、防火用水も各所に用意されています。
武家屋敷や商家、寺院や神社等の町割の様子は武田家の将来に大いに参考になりそうでした。
「信繁、其方は都に上洛したから都の様子に詳しいだろう？都に比べて府中の町はどうだ？」
「はっ、町の規模は都には及びませんが、府中の町は都より道幅が広く、町の中心部は石畳で舗装されています。都には石畳で舗装された道や馬車等は存在せず、府中の様な大きな市場もありません。
寺院や神社の規模や壮麗な装飾は都が遥かに勝っておりますが、府中には都を遥かに超える上質の商家が並び、食事処から着物、衣服、日常に必要な品物が充実しており、活気がございます！」
「都より活気があるのか？」
「はい、府中の町の賑やかな様子にはかないません！」
「そうか、立花家の文化を学んで甲斐国、信濃国を発展させるぞ！」
武田晴信は貧しい甲斐国に比べて府中の町の文化の高さに驚き、府中の文化を取り入れて自領の発展を考えました。
「兄上！立花家では農業政策も独自のやり方をしており、農民の暮らしが他国に比べて裕福だと聞いて折ります！調べてみませんか？」
「おぉ、そうだな、良い機会だから農民の暮らしも見て参ろう！」
武田家の一行は府中の町の中心部、大國魂神社の近くから府中街道を南に進み、田圃や畑が広がる地域に入りました。
この辺りの農家は茅葺き屋根の大きな屋敷が点在しており、どの家も甲斐国の農家より大きく立派な家が連なっていました。
武田晴信は農家を訪ねて立花家の施政や農家の取り扱う作物について聞きました。
農夫から聞かされたのは立花家の税制は米に関しては四公六民、耕作奨励金が季節毎に支払われ、手元に残された米は村単位に立花家、猿渡家、商家の立会いで公正な取引が行われます。
粟、稗等の雑穀と麦についても四公六民の税率で蕎麦は無税になっていました。
米の生産方法は従来、苗を栽培して４月下旬から６月上旬に行いますが、冬季湛水農法、春季湛水農法、再生二期作農法が行われて米の生産力が向上している事が判明しました。
冬季湛水農法は収穫後の田圃に１２月に水を張り、水生昆虫を活性化させて水鳥を招き、田圃をかき混ぜさせる事で土の栄養価を高めます。
４月に種籾を撒いて秋に収穫する田植えをしない省力化を目的にした伝統農法です。
春季湛水農法は３月に田圃に水を張り、４月に種籾を散布します。これも田植えをしない省力化した伝統農法です。
再生二期作農法は９月に稲の穂先だけを収穫して、２か月後の１１月に再生した稲穂を収穫する農法です。
その他の農産物に税金は掛からず、農民は市場や商人へ自由に販売して良い事になっています。
「なんと？無税なのか？」
「はい、大根、人参の他、野菜等は税金が掛かりません。漬物等の加工品を販売したり、店を構えて商売する事も許されております。
その代わりに月々定額の権利金と家賃を支払いますが、負担になる様な金額ではありません」
「農民が店を構えたり、商売が許されるのか？！」
甲斐国では身分制度が厳しく、武田晴信は驚きました。
「御殿様、立花家の領民は農民が商人へ転身する事が許されています。
店を出すには役所に申請手続きを済ませて、社会奉仕の研修を受けると開業する事が出来ます！
但し、料理等を提供する食事処を出店する際には衛生管理と調理の基礎研修を受けてから開業することが出来ます」
「素晴らしい！いつの日か、甲府でも農民が豊かに暮らせる様に努めるぞ！」
「御殿様、府中では武家、商家、農家、その他の領民は５歳から２年間の幼児教育を受けます、更に７歳から１５歳までは男女が身分に関係なく同じ教育を受けて１５歳からは農家、商業、工芸、兵科、医学等の専門教育に別れて学び、武家に非ずとも立花家の採用試験に合格すれば兵士や文官として立花家の家臣に採用され、教育費用は無償にございます！」
「なんと、男女一緒？！教育費用が無償？！
それで身分が選べるのか？」
「はい、武家の師弟が商家や工芸家、農家、医師に転身する事もございます」
「武家が身分を変えても良いのか？」
「はい、身分を選ぶ事が許されております。
さらには他領からの移住者にも教育を与えます。文字の読み書きが出来ぬ者にも初歩から無償の教育を与えて、仕事を与えて立花家の領内で暮らせる様に支援をいたします」
「移住者の中には他国の間者が紛れて居るかもしれぬが、立花家は疑わぬのか？」
「さぁ、間者が居るかもしれませんが、そこ迄は農民の私共にはわかりませぬが、毎年多数の移住希望者が府中にやって参ります」
「そうか、立花家は間者が紛れ込むのは承知の上であろう。太っ腹な事よ、我らには真似が出来ぬな…」
武田晴信が呟きました。
「兄上！私が暫く府中に滞在して立花家の施政を学び、甲府に持ち帰りたいと思います！」
武田信繁が兄、武田晴信に提案しました。
「おぉ、信繁！暫く府中に残り、甲斐国、信濃国の民の為に学んで参れ！」
「はっ！畏まりました！」
武田晴信２６歳、立花家との絆から史実より甲斐国、信濃国の民の暮らしが良くなる可能性が高まりました。
同盟大名家の家臣達や当主や重臣達が府中の町で立花家の文化に触れて食事や買い物を楽しむ様子が府中城、立花義秀の元に報告されました。
府中の町には立花家直営の店が多数出店しています。
食事処、土産物屋、武具屋、着物屋、衣装屋、宝飾屋等多くの店舗から多くの来店が有り、通常よりも多くの売上になった事が知らされました。
直営店の大半の商品は義秀、松千代が前世の知識から今の時代に合わせて製作されていました。
「松千代、凄いぞ！同盟大名家の当主から家臣達までが、ラーメンや炒飯、餃子等の旨い物に嵌り、武具や着物、衣装がたくさん売れたらしいぞ！
全部松千代が手掛けた物が売れまくってるぞ！」
「お爺、立花家のメシは旨いから当たり前だよ！
武具や着物、衣装はね、前世の記憶から印象を絵にしたからね、絵を見て武具や着物や衣装に仕立てあげた職人達が凄いよ！
売上に応じて彼らに特別手当てを出さなきゃね？」
「わかった、手配する！
政家！手配しろ！」
「承知いたしました！」
立花家当主、立花義秀が孫の松千代と始めた直営事業は立花家に大きな収益をもたらしていました。
傍に控えていた筆頭宿老、鹿島政家は二人の会話を楽しげに聞きながら、命じられた手配に掛かりました。
朝廷から勅使が派遣されて、武蔵国守護府開設式典の為に立花家と同盟大名家１０家の当主全員が始めて府中に集合しています。
史実に無い歴史の流れの鍵になりそうです。
