１５４７年(天文１６年)１月上旬、勅使、万里小路頼房の初詣
府中の町の朝は毎日明け方に府中城から君が代斉唱、応援歌の声から始まります。
新年を迎えて、府中の町に君が代斉唱と応援歌が響きます。
１５４７年(天文１６年)１月上旬
武蔵国、府中に新年が訪れました。
昨年１２月に古河公方家と関東管領、前橋上杉家が朝廷からの勅命で五年間の謹慎になり、本年より暫くの間平和が保たれる筈です。
新年の早暁、空に明かりが微かに広がるのを合図に、府中城の天守閣、展望台から太鼓の音が響き、選抜された２０名が君が代を斉唱します。
更に応援歌を歌い、府中の町に声を響かせました。
府中城から大國魂神社まで、立花家の軍勢３０００が初詣の警備の為に配備されています。
府中城から響く君が代、応援歌を合図に３０００の軍勢が配置された先で其々に君が代、応援歌を歌います。
「おぉ～おぉー！にぃーっぽぉーん！
にぃーっぽぉーん!にぃーっぽーん！にぃーっぽーん！
はい！はい！はい！はい！
おぉーおぉ～！にぃーっぽぉーん！にぃーっぽぉーん!
にぃーっぽぉーん!にぃーっぽぉーん!
はい!はい！はい!はい！
立花！立花！」
兵士達の応援歌の声が、府中の町に新年を告げる合図になりました。
府中城の正門から立花一族と万里小路頼房、立花家の家臣一同２００名は府中城を出発して大國魂神社に初詣に向かいます。
府中城から大國魂神社の正門まで、警備の軍勢が周囲の道筋を警戒します。
領民達が立花家の行列を見るために集まり、大國魂神社の参道周辺は新年を祝う大太鼓が鳴り響きました。
やがて朝日が周囲を照らすと立花家の行列は綺羅びやかな正装で馬に乗り、手を振る領民の歓声に小さく手を振りながら行進します。
万里小路頼房は立花義秀と馬を並べ、領民の歓声と拍手に迎えられました。
「立花殿、凄い人気じゃないか？
初詣はいつもこの様に領民が集まるのか？」
「はっ、ここ最近、古河公方家と戦い始めから初詣の時には領民達が大勢で歓迎してくれます。
領主として嬉しい限りにございます！」
「なんと！？．．．都でもこれ程の領民は集まらぬ！．．．立花家が領民に慕われている証であるな．．．」
勅使、万里小路頼房が驚く程、行列の周囲の街道筋には多数の領民が日の丸の小旗を振りながら歓声をあげています。
大國魂神社の正門前で立花家の行列は下馬して境内に入りました。
大鳥居に頭を下げて大神様に参拝の挨拶をすませると、玉砂利を踏みしめて、朝日に照らされた参道を進み、本殿にて参拝をします。
参拝を終えると立花家を代表して約２０名が大國魂神社の客殿に移り、大宮司の祈祷を受けて大宮司、猿渡盛村、先代の大宮司、猿渡盛胤の御老公と立花義秀、立花義國、立花将広や松千代等、立花家の代表と新年の挨拶を交わします。
互いに親戚同士の両家は笑顔の絶えぬ歓談となりました。
初詣初日の大國魂神社では立花家の参拝が終わってから領民の参拝が解禁になります。
真冬の極寒に長い時間、領民を待たせる事は出来ません。進行役の神職に促され、立花家と猿渡家の神職一同は慌ただしく挨拶を済ませて別れました。
参道を戻りながら万里小路頼房が呟きます。
「立花殿、立花家と大國魂神社の先祖は武蔵国の国司であった藤原家だそうだな？」
「はい、国司の子孫が定住した後、猿渡の姓を名乗り、大國魂神社の創建当時から大宮司を務めておりました。その一族の娘と源義家公の間に産まれた子供が朝廷から立花姓を賜り、今に至ります！」
立花義秀が両家の歴史的経緯を語りました。
「大國魂神社の創建当時？
いつ頃なんじゃ？」
「大國魂神社の創建は今から凡そ１４００年前にございます」
「ほほほ！１４００年前？！．．．凄いな．．．」
「更に凄い事に、大國魂神社が１０００年前に品川湊を築いて交易を始めています。立花家の歴史は源義家公の三男に立花姓を賜ってからまだ４６０年余りにございます！」
「ほほほ！大國魂神社が？．．．
１０００年前に．．．湊を開いたのか？
目眩がする！
まぁなんとも気が遠くなる歴史が刻まれたのじゃな？」
「はい、それ故に大國魂神社の存在は大きく、信仰を集めております！」
「それにしても、品川湊を開く財力は凄いじゃないか？」
「はい、大國魂神社が武蔵国府の財政を支えたとも聞いております。更には源義家公が奥州征伐に向かわれた前九年の役、後三年の役の軍資金や兵糧等の軍事物資を援助しております」
「ほほほ！そうだったか！その縁で源氏の棟梁、源義家公が大國魂神社の大宮司、猿渡家の娘との間に男児が産まれて立花家の家祖になったのじゃな？」
「はい、源義家公と大國魂神社大宮司、猿渡家との出会いから立花家が産まれました！」
万里小路頼房と立花義秀は雑談をしながら参道を歩き、大國魂神社正門から馬に乗り、府中城に戻ります。
立花家の行列に領民から歓声が上がり、日の丸の小旗が振られます。
「義秀様ぁー！」
「義國様ぁー！」
「将広様ぁー！
「松千代様ぁー！」
沿道から立花家の行列に声が掛かります。
立花家の当主、立花義秀、嫡男の立花義國、当主義秀の弟、泥酔軍師、立花将広、そして松千代の名前が叫ばれました。
古河公方家や前橋上杉家との戦いを勝利に導いた事で、其々高い人気を誇ります。
沿道から領民の声援に包まれて立花家の行列は府中城に戻りました。
立花家の参拝が終わり、大國魂神社には多数の領民達が初詣に訪れます。周囲には多数の屋台が並び、焼きそば、焼きうどん、たこ焼き等が家族連れの領民達の腹を満たします。お正月の土産物、縁起物や玩具が店に並び、子供達の笑顔とはしゃぐ声が境内に響きました。新年を迎え、立花家の領内に幸せな時間が流れていました。
万里小路頼房が大國魂神社の初詣を体験しました。
都より華やかな町の賑わいに驚く事になりました。
