1546年(天文15年)12月下旬、謹慎の抜け道発覚!
古河公方家、前橋上杉家に勅命が降り、五年間の謹慎が始まりました。
立花義秀は三男、加賀美利久から勅使に同行した報告をしますが...
1546年(天文15年)12月下旬
万里小路頼房が府中城の露天風呂を堪能している頃、立花義秀は執務室にて、勅使の関東下向に護衛として同行した三男、加賀美利久から16日間の出来事の報告を報告を受けていました。
新設されたばかりの岩槻公方家の様子や、古河公方家での投石事件と常陸国衆に対する報酬未払いの闇、前橋上杉家の筆頭宿老、長野業政の様子等、気になる報告がありました。
「長野業政はどんな人物だ?」
「はっ、本年4月に川越城付近にて亡くなった前橋上杉家、筆頭宿老、長尾憲長の居城、館林城に幽閉されていましたが、長尾憲長の死後に当主、上杉英房殿に救出されてから間もなく筆頭宿老に抜擢され、英房殿を始め、重臣達の信頼を掴んでおりました。
勅使、万里小路様に意見する程の度胸を示し、機知に富み、豪胆な人物と感じました!」
「そうか、手強い相手になりそうだな、五年の謹慎期間中に前橋上杉家は軍事力を回復して来るだろう。
さて、古河公方家や前橋上杉に対する忍びの配置は出来たか?」
「はい、武蔵北部、常陸国、上野国には多数の八幡神社系列の神社が御座います。
各地に神職の修行と称して配置致しました!」
「ぶははは!大國魂神社の大神様に感謝!感謝!
大國魂神社が八幡神社系列の筆頭神社であるからな、修行中の神職の経費は先渡ししただろうな?」
「はい!困窮している神社に大層喜ばれました。
実は神領が横領されて困窮している神社が多く、八幡神社系列以外の神社も大半が収入が減って困っております!」
「ならば、救わねばならんな?
おそらく民も困窮しておろう?...」
「はい、古河公方家や前橋上杉家の領内には困窮する民が少なからず、特に農村の疲弊が顕著にございましたが、寺院が立派なのには違和感を感じました!
仏教宗派の勢力が財力を高め、領地や軍事力を持ち始め、困窮した農民が僧兵になっていると噂になっておりました!」
「古河公方家殿戦いでは仏教宗派の数万の僧兵が我々を苦しめたからな、放置すれば僧兵はさらに増えて厄介な事になりそうだな?」
「父上!古河公方家、前橋上杉家の領内の八幡神社を通じて金銭に米等の食糧支援を行えば敵地の情報が更に集まります!」
「うむ、良いだろう!大國魂神社を通じてコツコツやるしか無かろう。
八幡神社系列の神社に定期的な支援を開始する!
政家!話しは聞いていたな?」
「はい、承知しております」
「それでは手配を頼むぞ!其方は年末年始の行事の采配で忙しいだろう?
瀬沼利勝に大國魂神社との調整を任せろ!」
「はい、承知致しました!」
立花家は通常の諜報活動に大國魂神社が束ねる八幡神社系列の神社を利用しています。
古河公方家、前橋上杉家の状況を探る為、諜報活動を強化する必要がありました。
鹿島政家が手配する為に席を外し、暫くすると護衛の美人侍女五名を引き連れ、松千代がやって来ました。
「お爺!利久叔父様!気になるんだけどね...
あのね、古河公方家の仏教宗派の僧兵達は古河公方家の家臣なの?」
「んん?...」
「五年間の謹慎が命じられて、軍事行動が禁じられても、仏教宗派の僧兵達が主従関係になければ、抜け道になるよね?」
松千代の意外な言葉に義秀、利久は思考を巡らせ、その危険に気が付きました。
「抜け道だ!?外道だが、仏教宗派が主従関係に無いと言い張れば軍事行動の言い逃れが可能になるぞ!
松千代!良くぞ気が付いたな?」
「お爺!頭が切れる簗田高助なら抜け道に気がついてると思う、だから油断せずに対処しなきゃね!」
「ぶははは!松千代は俺の名軍師だな?
抜け道があるとは気が付かなかったぞ!」
「お爺、古河公方家を手本にして、前橋上杉家も仏教宗派の僧兵を採用するだろうから、立花家が配置している方面軍は油断しちゃダメだよ!」
「ぶははは!秩父、川越、川口、鎌ヶ谷、上総、5つの方面軍は油断させぬ!
警戒しながらでも街道筋の整備や河川の堤防整備に農地開拓など、やれる事があるだろう?
立花家は五年間内政に専念するつもりだ!」
立花家及び同盟大名家は古河公方家や前橋上杉家が謹慎期間中も仏教宗派の僧兵を使い、軍事力を行使する可能性を共有する事になりました。
古河公方家、前橋上杉家の謹慎期間中に軍事行動は禁じられていますが、松千代が抜け道を指摘しました。
古河公方家の実質的最高権力者、簗田高助は抜け道に気がついているのでしょうか?




