1546年(天文15年)12月下旬、立花家、綸旨と勅許を賜る!
勅使、万里小路頼房が府中へやって来ます。
彼は来年の1月15日、武蔵国守護府開設の記念式典に出席する予定です。
1546年(天文15年)12月下旬
勅使、万里小路頼房の行列は立花家が派遣した儀仗兵200騎に先導されました。万里小路頼房は立花家が用意した馬車に乗り換えて甲州街道を東に進み、やがて大國魂神社付近には勅使を迎える大勢の領民が日の丸の小旗を振り、拍手と歓声を上げました。
沿道には立花家の3000の兵士が配置されて勅使の行列を歓迎します。
「エイ!トウ!エイ!
エイ!トウ!エイ!
エイ!トウ!エイ!
エイ!トウ!エイ!」
太鼓の音に合わせて兵士達が歓迎の声をあげます。
領民達の拍手と歓声に包まれて勅使の行列は大國魂神社の中に入りました。
正門の大鳥居の前にて立花義秀、立花義國、松千代、
鹿島政家など立花家の主要な人物と大國魂神社の先代大宮司、猿渡盛胤、現大宮司、猿渡盛村等の神職一同が勅使、万里小路頼房の行列を出迎えました。
立花義秀が代表として出迎えの挨拶を交わして一同は本殿に向かいました。
玉砂利を踏みしめて、ジャラジャラと音が響く度に身が浄められます。
やがて本殿にて念願の参拝をする万里小路頼房の周囲は無風だったはずが、万里小路頼房の周辺にすーっと爽やかな風が吹きました。
松千代が本殿上空に大國魂神社の大神様の姿を見つけました。
「ほら!空から大神様が万里小路様を歓迎してほほ笑んでいるよ!」
松千代が指を指す方向に目を向ける大人達の中で、大神様が見えたのは御老公、猿渡盛胤と大宮司の猿渡盛村の二人と霊感が強い者が数名見えた様でした。
「麿にほ見えぬがなぁ、残念じゃ…」
万里小路頼房には見えませんでしたが、頼房の近習と女官に見えた者が感激している姿がありました。
「そうか、麿には見えぬが大神様が微笑まれているならば良し!」
万里小路頼房は空に向かい手を合わせて感謝の気持ちを捧げました。
参拝を終えた万里小路頼房は大國魂神社の神職達と暫し昼食を取りながら歓談指した後、正門まで見送られ、儀仗兵に先導されて府中城に向かいました。
沿道の領民が日の丸の小旗を振ります。拍手と太鼓の響きに見送られて間もなく府中城に到着しました。
府中城の正門から立花家の兵士達がずらりと並び、地面に膝をついて頭を下げました。
周囲には日の丸の大きな国旗を100本掲げ、立花家の軍旗が風に靡き勅使の行列を迎えました。
万里小路頼房は兵士達に手を振りながら機嫌良く入城しました。
やがて本丸御殿に立花家の重臣達が集められ、勅使,万里小路頼房から古河公方家と関東管領、前橋上杉家の処分内容が伝えられました。
古河公方の職務停止及び古河公方の名称使用停止五年、謹慎五年、期間中の軍事行動を禁ずる事、前橋上杉家も同等に関東管領の職務停止及び関東管領の名称使用禁止五年、謹慎五年、期間中の軍事行動を禁ずる事、両家に属する諸大名にも謹慎五年、軍事行動を五年間禁じた事を公表しました。
続いて万里小路頼房は帝の綸旨を読み上げ、立花家に関東及び、東国の民の安寧の為に治安の維持を委託する叡慮を賜りました。
更に立花家に武蔵国守護府開設の勅許が与えられました。
「立花殿、帝の叡慮、朝廷の意向として古河公方家と関東管領、前橋上杉家は関東騒乱の元凶と判断した故、関東及び東国の民の安寧を立花家に委ねる!」
「はっ!確かに承りました!」
「委ねるとは、五年の謹慎が開けた後の古河公方家、前橋上杉家の行いが正しく無いならば、滅ぼしても構わぬとの意味を含む!
それが立花家に託された使命と心得よ!」
「それは、幕府に逆らっても構わぬと?」
「左様、公式には言えぬが、黙認する。
立花家が東国を纏め上げ、都に上洛した時には、足利家には源氏の棟梁の座から去り、次なる源氏の棟梁は立花家と言う事だ!」
「はっ、帝のご叡慮と朝廷の意向を胸に刻み、精進致します!」
「うむ!立花家は帝や近衛家、九条家の荘園を守り、数百年も朝廷を支えて続けた故、朝廷は本当に感謝している。先日、立花殿が上洛した折に本願寺、大徳寺、東福寺、石清水八幡宮を口説き、朝廷を支える軍事力に纒めてくれたから、幕府の軍事力を恐れる必要が無くなった。
その見返りを与えるのは当然の事であるぞ!」
「はっ、ご配慮に感謝申し上げます!」
「立花殿、立花家及び同盟大名家の勢力圏はどれ位の範囲なのだ?」
立花義秀は近習を走らせて地図を用意して説明しました。
「立花家と同盟大名の勢力圏は武蔵国の六割、伊豆国、相模国、駿河国の二割、甲斐国、信濃国の三割、安房国、上総国の八割、下総国の三割に及びます!」
「ほぉ、古河公方家の勢力圏はどうなっている?」
「はっ、古河公方家の勢力圏は前橋上杉家、松山上杉家を加えて常陸国、上野国、下野国、下総の七割、上総国の二割、武蔵国の四割を勢力下にしています!」
地図には立花家の勢力圏に白の碁石、古河公方家の勢力圏には黒の碁石を並べました。
「ほぉ、立花家の勢力圏が少し広いみたいだな?」
「はい、しかしながら、甲斐国武田家は信濃国制覇に集中している為、立花家との同盟は不戦同盟を結び、共同軍事行動は致しません。
小田原北条家も駿河国、遠江国、三河国の太守、今川家との戦いに集中している為、立花家との同盟は不戦同盟を結び、共同軍事行動を致しません。
それでは両家の勢力圏から白の碁石を外します」
義秀が武田家、北条家の碁石を回収すると地図上には黒い碁石の領域が広がりました。
「おぉ?!なんと?!
古河公方家の勢力圏が大きいぞ!立花家の勢力圏は精々敵の半分程じゃないか?」
「はい、それでも同盟大名家の協力のお陰で生き残りました!」
「立花殿、戦国大名なら近隣の弱小大名を家臣にしてしまうが当たり前だが、何故そうしないのだ? 」
「はい、古河公方家や前橋上杉家の侵略から生き延びる為に同盟を呼び掛けたのが始まりになりました。
協力を頼む立場なので強制的な事は出来ません!」
「随分謙虚だな?まぁ良い、来年の武蔵国守護府の開設記念式典まで滞在する故、立花家の発展の秘訣を知る為にゆっくりさせて貰うぞ!
さて、府中城には露天風呂が有るそうな?」
「はい!用意が出来ております。
それでは案内させますので、是非ご堪能ください!」
万里小路頼房は露天風呂に向かいました。
叡慮とは天皇陛下の考えの事を表します。
勅許とは朝廷から許可を与える事です。




