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戦国立花家三代、新日本国戦記、大國魂神社の大神様に捧ぐ!織田信長を倒して全国統一を目指します!  作者: 近衛政宗


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1546年(天文15年)12月中旬、勅使、前橋城に到着!

関東管領、前橋上杉家の当主には武蔵守護職が与えられる時代がありました。

しかし、数世代前から関東の騒乱を抑え切れず、幕府から愛想を尽かされて前橋上杉家に武蔵守護職は与えられず、この職務は長年空位の時が流れました。


しかし先日、立花家の当主、立花義秀が武蔵守護職に就任した事で、前橋上杉家の家中に不満があるに違いありません。

勅使の行列を護衛する立花家の指揮官、加賀美利久と兵士達は緊張が高まります。



1546年(天文15年)12月中旬


12月19日早朝、勅使の行列は伊勢崎の養寿院を出発、前橋上杉家の護衛1000に付き添われて前橋城に向います。

前橋上杉家の軍勢は敵意を秘めた眼差しで立花家の護衛200名を睨みました。

前橋上杉家の護衛は勅使の行列の前後に500名ずつ配置して威圧感を滲ませていました。


勅使、万里小路頼房は馬上から傍に居る加賀美利久に話し掛けます。

「加賀美殿、本日の前橋上杉家の兵士達は立花家に敵意を隠さぬ様だな?」


「はい、今までとは違う様です。立花家の軍勢と激戦を重ねた部隊かと思われます!」


「おぉ、怖いな、先日の古河城下では投石があったからな、前橋城下では気が抜けぬぞ!」

万里小路頼房は笑顔で冗談を投げ掛けます。


「此度は何もしておりませんから、ご心配無く!」

古河城下では加賀美利久が投石の仕掛けを仕組んで意外な成果があがりましたが、今回は何も仕掛けておらず、大丈夫だと返事をしています。

勅使の行列は前橋上杉家の軍勢に導かれて前橋城下に入りました。


前橋城は筆頭宿老、長野業政ながのなりまさの祖父の代に築かれています。祖父、長野方業ながのまさなりは長野一族を飛躍的に発展させた人物で、前橋城に主君、上杉顕定うえすぎあきさだを招致して上杉家の本拠地に据えて筆頭宿老に就任しました。


長野一族は相続争いで弱体化した上杉家を支え、長野憲業ながののりなり、長野業政が筆頭宿老を世襲していましたが、前橋上杉家に家督相続争いが発生、長野業政は争いに敗れ、筆頭宿老を退任、筆頭宿老を長尾勝久に譲りました。


長野業政は宿老の一員に留まり、前橋上杉家を支えていましたが、筆頭宿老の長尾勝久が2年前に滝山城の攻防戦で戦死すると、古河公方家の後押しを受けて筆頭宿老に長尾憲長ながおのりながが就任しました。


長尾憲長は 長野業政の実力を恐れ、口実を設けて自分の本拠地、館林城に長野業政を監禁しました。

しかし、今年の4月に長尾憲長が死去した事で、当主、上杉英房に監禁を解かれて筆頭宿老に復帰しています。

前橋上杉家は家督相続や筆頭宿老の地位を巡り、争いを繰り返す歴史を抱えていました。


前橋上杉家の近況について、万里小路頼房は加賀美利久から知らされていました。

前橋上杉家の当主は越後上杉家からやって来た温厚で思慮深い人物と判明していますが、筆頭宿老の長野業政の実力が掴めていませんでした。

「加賀美殿、筆頭宿老の長野業政はどんな人物かな?」


「はっ、それが、明確な情報がございません。

しかし、長野業政は二度も失脚しながら二度とも復活しています。国衆の人望が厚いと噂があります!

父(立花義秀)からも長野業政の人柄をしっかり観察する様に申し付けられております!」


「そうか、二度も失脚して復活した人物…

さてさて、楽しみが増えたぞ!」 

勅使、万里小路頼房は長野業政と対面する事を楽しみに馬を進めました。


やがて勅使の行列は前橋城下に入りました。

城下町には多数の見物人が集まりましたが、護衛の兵士達は立ち見を禁じ、跪く事を強要しました。

万が一にも投石などの危険回避の為、厳しい警備態勢になりました。

勅使の行列の先頭には立花家の女性騎馬20騎が弓を鳴らして鳴弦で邪気を祓い、祝詞をあげて緊迫する雰囲気を和らげます。


ビュンッ!ビュンッ!ビュンッ!

「上野国の皆様のー!安寧を祈りまするー!」

ビュンッ!ビュンッ!ビュンッ!

「上野国の皆様のー!安寧を祈りまするー!」

続いて立花家の兵士達が気合の声を上げます。


「エイ!トウ!エイ!エイ!トウ!エイ!

エイ!トウ!エイ!エイ!トウ!エイ!」

女性騎兵と男性兵士達が交互に鳴弦、祝詞、気合の声を上げて城下を通過します。

深紅の錦の御旗と立花家の黄金菊の軍旗が風に靡きます。勅使の権威と立花家の存在感を示しながら城下を抜けて前橋城の正門に到着しました。


正門前には前橋上杉家当主、上杉英房、筆頭宿老、長野業政と重臣達が整列して勅使の行列を迎えました。

勅使、万里小路頼房は馬上で上杉英房、長野業政らの挨拶を受けました。

「総員下馬!」

加賀美利久は立花家の兵士達に下馬を命じて礼儀正しい姿を示しました。


挨拶の儀式が終わり、勅使の行列は城内に入りました。前橋上杉家の諸将や兵士達は勅使と立花家の護衛を複雑な気持ちで迎えました。







史実で長野方業、長野憲業、長野業政が筆頭宿老になった形跡は不明ですが、宿老クラスの重役だった様です。


史実では長野業政が武田信玄と戦い、6回全て撃退していますので、長野業政に光を当てたくて筆頭宿老に起用しました。


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