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戦国立花家三代、新日本国戦記、大國魂神社の大神様に捧ぐ!織田信長を倒して全国統一を目指します!  作者: 近衛政宗


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1546年(天文15年)12月中旬、勅使、古河城に到着!投石事件発生!

勅使の護衛を託された加賀美利久(立花義秀の三男)は勅使に同行しながら敵地の情報を集める任務を兼ねています。

岩槻公方家、古河公方家、松山上杉家、関東管領、前橋上杉家の四つの情報を探ります。

1546年(天文15年)12月中旬


12月15日、古河城下に入った勅使の行列は立花家の女性騎兵20騎を先頭におよそ300名の行列が行進しました。

女性騎兵は弓を鳴らして奏でる鳴弦めいげんで邪気を祓いながら進み、祝詞を唱えます。

ビュンッ!ビュンッ!ビュンッ!

「常陸の国の皆様のー!安寧を祈りまするー!」

ビュンッ!ビュンッ!ビュンッ!

「常陸の国の皆様のー!安寧を祈りまするー!」


女性騎兵に続いて深紅の錦の御旗、菊の紋章の立花家の軍旗が掲げられ、立花家の軍勢が勅使の行列を護衛している事を示しています。

勅使の行列が来ると知らされた城下の民が見物に現れ、立花家の女性騎兵の姿に歓声があがりました。

女性騎兵は兜を纏わず、長い黒髪を赤紐と金色の紐に束ね、金色の仮面に真っ赤な鎧を装着、馬には儀礼用の紫紺の馬具を装着しています。


城下の民の歓声の中で、立花家の軍勢と戦った諸将、兵士達は立花家の軍旗に反応しました。

「立花家の軍旗が掲げられてるじゃないか?」


「勅使の一行を立花家が護衛してると聞いたが、軍旗を掲げるとは、やり過ぎじゃないか?!」


「栗橋城から岩槻公方家、筆頭宿老、野田弘明の軍勢が護衛すれば良いではないか?!」

勅使の行列を見た古河公方家の諸将や兵士達から不満が上がりました。


古河公方家の兵士達の不満は当然の事でした。

これについては当然、岩槻公方家から護衛を申し入れしましたが、勅使、万里小路頼房が任務の最後に府中城の立花家に立ち寄る予定があると理由を付けて最後まで立花家の護衛の軍勢に同行して貰うと主張したため、岩槻公方家の護衛は国境迄の利根川までの護衛に留まりました。


群衆の中から勅使の行列に石が投げられました。

「わーっ!」

「止めろ!」

「石を投げたのは誰だ?」

「離せ!」 

「捕まえろ!」

「石ぐらい良いじゃないか!」

「駄目だ!勅使の行列だぞ!」

「うるせー!」

「止めろ!耐えてくれ!」

「立花家の奴らに恨みがあるんだ!離せ!」

古河公方家の兵士が同僚の警備の兵士と揉み合いになり、立花家の護衛兵士も加わり狼藉者を捕縛に掛かりました。

止めに入る者に囃し立てる者、石を投げた兵士の周りに次々に警備の兵士が集まり、騒然となりました。


利根川から古河城正門までの沿道には2000の兵士が警備に就いていましたが、数ヶ所で同様の石投げが発生して護衛していた立花家の兵士が次々に負傷する事態になりました。


護衛責任者、加賀美利久が周囲を見渡して騒然とする群衆に忠告します。

「さぁ!さぁ!聞かれよ!石を投げた者に忠告する!

錦の御旗を掲げた勅使の行列に石を投げた行為は朝廷及び、帝に石を投げたと見なす!

石を投げた者の切腹!斬首に留まらず!

一族に類が及ぶと覚悟せよ!」

大音声で叫びました。


立花家の護衛指揮官達が更に周囲に叫びます。

「石を投げた者は切腹!斬首に留まらず!

一族に類が及ぶと覚悟せよ!」

次々に指揮官達が周囲に叫びました。

「うるせー!」

「やめろ!」

怒号と石投げが相次ぎ、数ヶ所で騒ぎが続きました。

騒ぎに駆けつけた古河公方側の指揮官達も石投げを止めながら叫びます。

「狼藉したら切腹!斬首!一族連座で処刑だ!

公方様に責任が及ぶぞ!」


群衆の民の中にも立花家に反感がある者が行列に石を投げました。立花家の護衛も石を投げた狼藉者を追いかけて捕縛する騒ぎになりました。

そこに古河公方家、筆頭宿老の嫡男、簗田晴助が馬に乗り駆けつけました。

「静まれー!勅使の行列に狼藉は許さぬぞ!

静まれー!狼藉者は切り捨てよ!」

晴助の怒号に警備の兵士達が太刀を抜いて威嚇しました。晴助は馬を走らせ、次々に兵士を束ねて騒動を収拾しました。


簗田晴助は周囲は騒動を収拾すると勅使、万里小路頼房の前に現れ、地面に土下座して謝罪します。

「万里小路様、不敬な者達がご迷惑をお掛け致しました事、深くお詫び申し上げます!

罪人達には不始末の責任を取らせます故、平に御容赦をお願い申し上げます!」


万里小路頼房は周囲を盾に守られながら顔を簗田晴助に向けました。

「古河公方家の作法は錦の御旗、菊の紋章に石を投げて、護衛の兵士を負傷させる見事な歓迎であった!

都にご報告するのが楽しみでおじゃる!

帝も朝廷も、さぞ驚かれましょうぞ!」


勅使、万里小路頼房は痛烈な皮肉を交えて簗田晴助の胸に冷たい言葉の刃を突きつけました。

投石騒動は古河城の正門前にて勅使を待っていた当主、足利政孝と筆頭宿老、簗田高助に急報が届き、

勅使の行列が城下で石投げに遭い、負傷者が出たと知らされて驚きました。

「なんと馬鹿な?!勅使の行列だぞ?!

死にたいのか?!馬鹿にもほどがある!

早く鎮圧する様に伝えろ!」

簗田高助が激怒しました。


しばらくすると、次の急報が入りました。

石投げ騒動は高助の嫡男、簗田晴助が鎮圧、勅使は無事、しかし、護衛の兵士にに負傷者有りとの報告が入りました。


騒動が収まり、勅使の行列は古河城の正門に現れました。古河公方家当主、足利政孝、筆頭宿老、簗田高助は地面に伏し、土下座で勅使の行列を迎える事になりました。

通常なら勅使は正門で歓迎の挨拶を受けて門を通りますが、勅使、万里小路頼房が怒り、挨拶無用と通告した為、古河公方家の諸将、兵士の全てが土下座したまま行列は無言で通過する異例の事となりました。


やがて本丸御殿に通された勅使、万里小路頼房は一旦来賓用の部屋で休息を取り、負傷者は別室にて手当を受ける事になりました。

万里小路頼房は立花家の護衛、加賀美利久を呼び出し、投石や狼藉者を取り押さえる際に負傷した人数を確認しました。

投石の負傷者が14名、捕縛の際に抵抗されて負傷した者が8名、合計22名に及び、死者や重傷者無し、22名は軽傷で済みました。


「加賀美殿、勅使の行列を襲撃した下手人、及び協力した者や現場で邪魔した者や背後で操る大物が居るならば、全てを罰する事になります。

さて、立花家は影で古河城下の民や兵士を煽動などする様な事はありませんかな?」


「立花家は一切関与しておりません!」

万里小路頼房に問われて加賀美利久は即答しました。


「はははは!すまんのぉ、上方の習慣で疑う癖がありましてなぁ、都では魑魅魍魎を相手にしておる故に、癖が抜けませぬ、疑って済まなかった!」


「いえ、お気になさらずに、お忘れ下さい!」


「それでなぁ、古河公方家には過去に朝廷から訓告、戒告を下して諫めていたのだが、此の度は立花家から知らされた通り、関東を統治する能力も資格も無しと判断した故、古河公方家の職務を停止!謹慎を命じる事に決まった!」


「職務停止に謹慎にございますか?」


「それでなぁ、朝廷が立花家が上洛した際に古河公方家と関東管領、前橋上杉家に五年間の職務停止、謹慎を命ずる事が提案に上がったのだ!

しかし、幕府から横槍が入り、幕府から軽減の要望があったのだ!

其方の父君(立花義秀)には悪いが、話し合いの結果は職務停止、謹慎三年と決まったのだがな!

これで本日の投石事件と相成った訳だ!」


「つまり、万里小路様、古河公方家に職務停止、謹慎年数を自主的に加算を申し入れさせるのでしょうか!?」


「その通りだ!投石した者は捕縛されたが、逃れた者も居るだろう?厳しく追及して犯罪者共を処罰させた上で、古河公方家自身の処罰を考えさせる!」


「ははっ、恐れ入りました!」

加賀美利久は万里小路頼房が古河公方家を厳罰に追い込む決意を感じました。


そこに古河公方家、筆頭家老、簗田高助が謝罪に現れました。今回の失態を謝罪した上に、投石した罪人を捕らえて尋問している事を伝えました。

尋問が終わり次第、罪人を斬首、直属の上司は監督不行き届きにて切腹、罪人の一族は連座制の処分を実施すると表明しました。


「それで、逃れた罪人は放置なさるかな?」

万里小路頼房は追及を緩めませんでした。

現場から逃げた罪人まで捕縛を要求しました。


「はっ!逃げた罪人を城下にて捜索しております!」

簗田高助は即答しますが、万里小路頼房は嘘と見抜いています。


「なれば、古河城下を封鎖なされよ!

下手人を捕縛して投石した者は夕刻までに斬首!

上司は切腹させよ!

我が身が立ち会う故、準備せよ!

罪人の一族は連座して処分する事を即刻告知致せ!」


「ははっ!…」  


「どうした?簗田高助?」


「はっ!承りました!」

偶発的な投石事件が古河公方家を追い詰める事態になりました。

果断な簗田高助も動揺する程の失態に、勅使の言いなりになるしかありませんでした。


古河公方家は不始末を犯した兵士17名、領民9名、合計26名を厳しく尋問しました。

投石を認めた者が多数でしたが、投石を認めない者も有りました。さらには投石した知人の名を知らせる者もありました。


簗田高助は現場から逃げた罪人を捕まえるのは無理と判断しました。

牢獄に居る罪人を投石を下罪人に仕立て、誤魔化す事に決めました。

選ばれた罪人の口元を縛り、声を出せぬ様にして投石した罪人に仕立てました。


夕刻、古河城に隣接する渡良瀬川の河川敷にて勅使の行列に投石した罪人達の処刑が始まりました。

投石して捕縛された兵士と領民39名、兵士の直属の上司13名が並びました。

更に連座制が適応されて罪人の一族から家長または代表者52名が集められました。


古河公方家、筆頭宿老、簗田高助が罪状と処分理由を読み上げ、処刑開始の命令を降しました。

投石した者は斬首、直属の上司は切腹、連座した一族は武家は切腹、領民は斬首になりました。

投石事件の末に104名が処刑され、連座した一族には所領没収や追放等、厳しい処分が言い渡されました。


処刑が終わり、万里小路頼房は古河城本丸御殿に戻りました。

その傍らには加賀美利久が控えています。

「投石した報いは酷い事になった…104名の犠牲が、古河公方家の重臣や家臣達に領民にどれだけ響いただろうか?

我が身から強制はしておらぬ…

処分を決めたのは筆頭宿老、簗田高助が己の覚悟で決めた事だからな…」


「はい、確かに処分を決めたのは簗田高助にございます!多くの方々に恨まれましょう…

既に簗田高助が罪人と関係者に厳しい処分を決めた事を城下に流布しております。

明日には城下で誰もが知る事になりましょう」


「ほぉ、加賀美殿は父上殿(立花義秀)に似たのかな?

中々の策士でおじゃる!

簗田高助は恨まれようぞ!」


そこに古河公方家の用人から声が掛かり、簗田高助が現れました。

簗田高助は処刑した人数と連座した一族の処罰の報告をしました。


「簗田高助!朝廷には本日の事件と処罰の結果を上奏せねばならぬ、明日までに事件の経緯と処罰の報告書と朝廷に対する謝罪文を提出せよ!」


「はっ!畏まりました!

明日までにお届け致します!」


「それから、古河公方家に対する朝廷からの書状の内容についてだがな、古河公方家には過去に朝廷から訓告、戒告の書状を降したが、まだまだ反省が足りぬ様だな?」


「はっ!…申し訳ございません!」

平伏する簗田高助に万里小路頼房は厳しい表情で語ります。

「此度、我が身に託された書状は古河公方家に関東争乱の火種を蒔いた責任を取らせる謹慎!停職を命じる書状になった!

三年間、古河公方家の名称を使用してはならぬ!

三年間、古河公方の職務を停止!

三年間、軍事的行動を禁止!

さて、それでは済まない事は理解出来るであろう?

本日の投石事件で更に反省が必要であろう?

自主的に謹慎、停職の期間延長を願い出よ!」


「はっ!…自主的に…」


「不満があるかな?」


「いえ、御座いません!」


「では簗田高助!謹慎、停職を何年にする?

自主的に何年にするんだ?」

厳しい追及に簗田高助は悩みます。  


「はっ!それは……ご、五年間でお願い致します!」


「簗田高助!良くぞ申した!五年で決まりだ!

さぁ!直ちに大広間に家臣達を集めろ!

勅命を降す故、支度を致せ!

勅命を読み上げた後に其方から五年間の謹慎、停職を願い出よ!わかったな?」


「はい!畏まりました!」


古河城の本丸御殿、大広間に古河公方家の当主や宿老など主だった家臣達が集められました。

勅使、万里小路頼房が勅命を読み上げ、関東争乱の原因を作った咎により、古河公方家に謹慎三年、停職三年を告げました。

古河公方家当主、足利政孝が平伏して勅命に従う事を誓い、更に本日の失態を謝罪しました。

次に簗田高助から謹慎期間と停職期間を五年間に延長する事を申し入れ、勅使、万里小路頼房が承諾する事になりました。


最後に万里小路頼房は勅命の意味を砕いて語ります。

「念の為だが、五年間とは、現在天文15年であるが、本日から天文20年の12月31日迄の事!

勅命の意味する事を理解せよ!

古河公方家の名称を使う事は禁止!

足利政孝は古河公方の名称を名乗る事を禁止!

古河公方家の名称を使った政令、軍事的行動は禁止!

五年間は古河公方家は無き物となった!

あるのは古河、足利家である!

これからは五年間、古河、足利家は民を慈しみ、内政の充実に努め、軍事行動を封印せねばならぬ!

足利政孝、簗田高助の両名は明朝までに誓約書を提出せよ!良いな!」


「ははっ!畏まりました!」

足利政孝、簗田高助は平伏して承諾しました。

勅使、万里小路頼房の厳しい裁断に簗田高助は抵抗も出来ずに操られました。

勅命下達の儀式が終わり、簗田高助は気力を振り絞り、投石事件の報告書、朝廷宛の謝罪文に誓約書の作成に取り掛かりました。

 

深夜に至り、簗田高助の周囲は書類作成と事件の後始末に追われました。

そこに投石事件の一部に冤罪が発覚、既に切腹に斬首の処分をしており、対応を誤れば大事に至ります。

簗田高助は頭を抱える事になりました。


投石事件が古河公方家に大きな災厄になりました。

万里小路頼房は巧みな判断で簗田高助を翻弄しました。



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