1546年(天文15年)11月上旬、清水寺訪問
上賀茂神社を出発して清水寺に到着しました。
松千代と立花義秀は前世で訪れた清水寺の違いに気が付きます。
1546年(天文15年)11月上旬
立花家、同盟大名家の軍勢は夕刻(16時頃)に清水寺に到着しました。
周囲の山は紅葉に包まれ、夕陽に輝く絶景に囲まれています。
多数の篝火が美しい紅葉を照らしています。
立花家と同盟大名家の一同は清水寺の舞台から夕陽が落ちる様子を眺めた後、清水寺側の好意で白拍子の舞踊を鑑賞しました。
都の美女が踊る姿に見惚れる武将達とは対照的に松千代は美女達が踊る本堂の床板が気になっていました。
前世で清水寺に訪れた時には床板が綺麗に揃い、光沢がありました。
今、目の前にある清水寺の舞台の床板は傷みが酷く、統一性の無い木材が使われています。清水寺に入る時に見た仁王門の朱色も色が落ちて鮮やかな姿ではありませんでした。
松千代は隣の義秀の耳に囁きました。
「お爺!、清水寺の仁王門の朱色が色落ちしてるよ!、本堂の床板が揃って無いし、光沢が無いよ!何とか出来ないかな?」
「ぶはははは!我も気になっておったぞ!
任せろ!政家(鹿島政家)に手配させる!」
祖父、義秀も仁王門の姿や本堂の床板の様子が、前世で清水寺を訪れた時の姿から随分色褪せて見えていました。
「お爺!前世の記憶ではね、清水寺の大修理は10年の期間になり、費用は40000貫!(40億円)だったはず!全額は無理だよね?」
「ぶはははは!さすがに無理だな!
本堂の床板と仁王門の朱塗りの化粧直しの負担程度に限るかな?
上賀茂神社に大金を奉納したからなぁ…更には式年遷宮まで奉仕する約束してしまったからなぁ…」
「お爺!それなら、堺の会合衆に相談してみたら良いかも?
堺の町では宮大工の仕事が減り続け、後継者不足で困っていたでしょう?
近衛家と九条家に仲介して貰えば宮大工育成と新しい仕事が両立するよ!」
「よっしゃ!それだ!朝廷が仲介する形で清水寺、堺の会合衆が繋がるぞ!」
「お爺!今回護衛の軍勢を出してくれた本願寺、大徳寺、東福寺、石清水八幡宮には資金力があるから支援を頼めば良いでしょう。
朝廷と寺社の資金力、軍事力、堺の資金力と技術が融合すれば、朝廷の支えになるよ!
朝廷側の軍事力、資金力が幕府を制御する事になるはずだよ!」
「ぶはははは!
松千代はそこまで先を見ているのか?」
「お爺!、史実では朝廷主導で足利義輝が将軍になったけど、失脚した管領、細川晴元が挽回して来る!
三好長慶、松永久秀の二人の爆弾が幕府側に居る限り、やがて三好長慶が台頭して幕府の主導権を握るよ!」
「松千代?何かお告げがあったのか?」
「お爺、上賀茂神社から出発する時に上賀茂神社の神様の声が聞こえたよ!
神様はね、朝廷の味方になる寺社と堺の会合衆を結集せよ!と言われた!」
「そうか、それで朝廷の味方を増やしたら、三好長慶と幕府の関係はどうなるんだ?」
「お爺、史実よりは朝廷の立場は強くなるけど、三好長慶と松永久秀の勢いは止められないと思う…
だけどね、立花家が撒いた種は上洛した各地に残るから、将来、軍勢を率いて上洛した時に必ず役に立つはずだよ!」
「ぶはははは!将来の為の種を残す!
よっしゃ!」
白拍子の舞踊が終わり、美女達の笑顔に大きな拍手が上がりました。
立花義秀は清水寺貫主に対面して到着が日没前になり迷惑をかけた事を詫びました。
そして松千代が提案した本堂の床板の修理と仁王門の化粧直しの提案をしました。
暫定的な支援は立花家が行い、後日大規模な修理をするならば、朝廷を仲介に寺社と堺の会合衆の協力を取り付ける事を申し入れしました。
清水寺貫主は驚き、義秀の提案に同意しました。喜んだ貫主は周囲に立花家の提案を語り、清水寺大修理の話題は瞬く間に都の周囲に広がる事になり、数日の内に立花家の評判が高まる事になりました。
立花家と同盟大名家の軍勢は清水寺から出発、宿泊する東福寺に帰還しました。
立花家と同盟大名家の軍勢が上賀茂神社、清水寺を訪問した事が、大きなご利益に繋がりそうです。




