1546年(天文15年)10月下旬、立花家、同盟大名家、堺経由で上洛開始!
堺の町を経由して上洛する事になりました。
1546年(天文15年)10月下旬
「エイ!トウ!エイ!
エイ!トウ!エイ!
エイ!トウ!エイ!
エイ!トウ!エイ!」
上洛する立花家と同盟大名家の軍勢は堺の町付近にやって来ました。
昨日に立花義秀が会合衆に願い出た堺の町中を行進する事は許可されませんでした。
近衛家、九条家の商務奉行から会合衆の意見が半々に割れて許可寸前になっていた事が知らされました。
前例が無い事、更に今後の幕府や有力大名に町中への進駐を打診された場合に支障有りと判断され、残念ながら許可されませんでしたが、会合衆から堺の町の北側の道を通過して町の住民に上洛の行列を見せて欲しいとの連絡が入りました。
「ぶはははは!
堺の会合衆に気骨あり!
行列を見せて欲しいとな?
商人らしき駆け引きじゃないか?
喜んで応じるぞ!」
想定内の出来事に満足な義秀でした。
堺の町は四方を掘りに囲まれ、東西1キロ、南北3キロの自治都市です。
人口は3万人から4万人と推定されています。
上洛する立花家と同盟大名家の軍勢3000名は東西1キロに広がるお掘り沿いの道を進みました。
「エイ!トウ!エイ!
エイ!トウ!エイ!
エイ!トウ!エイ!
エイ!トウ!エイ!」
気合いの声と太鼓の音が響きます。
立花家の黄金菊の紋章の軍旗が多数掲げられています。
立花家の広報係が配置され、数ヶ所で大きな声を出して町衆に解説しました。
黄金菊の軍旗は皇室の紋章であり、全国の大名家で立花家だけに許された貴重な軍旗だと説明しました。その貴重な機会に巡り会えた堺の町衆は白地に黄金色の軍旗と立花家の行列に拍手と声援を送りました。
2日前に浅香山宿営地に夜襲してきた謎の軍勢2000余を潰滅させた事は戦場の後始末に関わった関係者や出入りの商人や興味本位で見学して来た人々から聞かされており、立花家と同盟大名家の強さを称えて見学する町衆の人数は膨れ上がり、拍手と歓声に包まれました。
菊の紋章の軍旗を掲げる20名の旗手の後から女性騎兵100名が朱塗りの弓を掲げて弓を鳴らします。
ビュンッ!ビュンッ!ビュンッ!
鳴弦と呼ばれ、邪気を祓う儀式です。
立花家ではその場に応じて祝詞を唱え、邪気を祓います。
女性騎兵が鳴弦と声を合わせた祝詞を唱えて堺の町衆に感謝を伝えます。
「大國魂の大神様のお導きによりー!
上洛の旅に参りまするー!
立花家、並びにー!
猿渡家、同盟大名家の安泰にー!
尽くされし堺の町の皆様にー!
感謝致しまするー!
堺の町の皆様にー!
感謝致しまするー!」
100名の女性騎兵が唱える祝詞は堺の町の民にわかりやすい言葉に直して伝えました。
初めて見る美しい朱塗りの弓の鳴弦と女性騎兵の凛々しい姿と感謝の祝詞に堺の町衆は大きな拍手で答えました。
女性騎兵は紫の甲冑に鮮やかな色の陣羽織、さらに白地に金色の糸で刺繍された羽織を着けてします。
兜を着けず、長い黒髪を紅白の紐で後ろに結び、半数が漆黒の仮面、残る半数が朱塗りの仮面を装着して素顔を隠しています。
鮮やかな口紅が美しく、男性達を魅了します。
先日の浅香山宿営地の戦いに彼女達が弓兵や騎兵として勇敢に戦った事が紹介されると、巫女騎兵だとか、天女騎兵だとか、男性達には大いに好評、女性からも綺麗で可愛いと評価は上々でした。
上洛する行列は立花家の軍旗、女性騎兵に続いて大國魂神社の大宮司、猿渡家と大國魂神社の系列、八幡神社系列六社の神社から選ばれた神々に使える神職が武装した神兵100名が続きました。
神主の白装束に甲冑を纏い、金銀の糸で紡いだ陣羽織を装着しています。
ビュンッ!ビュンッ!ビュンッ!
鳴弦の音を響かせて、堺の町の民へ感謝の祈りを込めた祝詞を唱えながら行進します。
各々の神職者が気持ちを込めて祝詞を捧げました。
堺の町衆はその尊い姿に手を合わせて見送りました。
次に現れたのは立花家の軍勢1000、多数の軍旗と騎馬500、馬には赤、青、紫、黒の4色の馬鎧と仮面をを装着しています。
更に100騎がその4色に加えて金糸の刺繍が施され、菊の紋章の刺繍が輝いています。
馬の4色の仮面の額に菊の紋章が輝き、堺の町衆達から称賛の声と拍手が上りました。
騎兵の弓には握りの部分と上下の弦の部分に金色の紐を巻き付けて見学者達の目には豪華な装飾に見えました。
「あれは?金色の弓だぞ!なんと豪華な!
立花家はどれだけの財力があるんだ?」
町衆の驚きの声が漏れました。
「エイ!トウ!エイ!
エイ!トウ!エイ!
エイ!トウ!エイ!
エイ!トウ!エイ!」
太鼓と気合いの声に合わせて立花家の軍旗が堺の町衆の前で強者の姿を見せつけます。
後続の兵士が長槍を掲げます。
安全の為、槍先に装着する槍袋を半数の兵士が赤、半数の兵士が黒の槍袋を装着、さらにその槍袋を金色の紐で結びました。
「あの槍先の袋は?赤と黒の槍袋を金色の紐で結んでるぞ…なんと洒落てるじゃないか?」
そんな民の声が聞こえました。
立花家の行列は安全優先の為、立花義秀と松千代の二人を離して行進しています。
松千代はご老公様(猿渡盛胤)と二人で馬に乗っています。
ご老公様は甲冑を装着せず、鎖帷子の上に神職の白装束、金色の陣羽織に紫紺のマントを羽織りました。
マントの裏地は真っ赤に染められ、内部には薄い楔帷子が内臓されて刃と弓矢からの防御機能を備えています。
「松千代、あの金色の紐は鮮やかだな?
評判良いみたいだな?」
「ご老公様、あれは秩父藤田家、青梅三田家、滝山大石家の温泉から取り出した硫黄、湯の花と泥を薬草と調合して布に色を定着させましたから、以外に経費がかからなかったの。
お爺(立花義秀)と色々試したら、各種の鉱石を混ぜると赤、青、黄色、緑、紫も出来上がりり、上洛で装着する諸々の道具に応用されて役立ちました」
「ほぅ、それは凄いじゃないか?」
「秩父と奥多摩周辺は宝の山!新たな鉱石が見つかれば、面白い色が出来るかも?」
「義秀から聞いたぞ!最近は金、銀の鉱脈が見つかり、砂金の産出も増えてるらしいな?」
「そぉなの、だからね、古河公方家にバレたら狙われるから内緒にしてるけど、そのうちバレちゃうかも?」
「ぶはははは!バレるだろうな!」
そんな二人に堺の町衆の拍手と歓声が響きます。
「ご老公様、帰りには堺の町でお土産買わなくちゃ!忘れたら母上に叱られる!」
「ぶはははは!わしも土産を買う暇がなかったからな、帰りの楽しみにしておこうぞ!」
「エイ!トウ!エイ!
エイ!トウ!エイ!
エイ!トウ!エイ!
エイ!トウ!エイ!」
立花家の軍勢の太鼓と気合いの声が響き、行列の行進が続き、広報係が次々に同盟大名家の行列を紹介します。
世田谷吉良家、初代将軍、足利尊氏以来の血筋を誇り、足利家に人物無き場合、斯波家、吉良家から将軍を選出すると言われる ほど、幕府が優遇する名家と紹介されました。
青梅三田家、梅と清酒、石灰、硫黄、湯の花の生産地と紹介されました。
滝山大石家、滝山城攻防戦で立花家の支援を受けて、関東管領、前橋上杉家に大勝利した事が紹介されました。若き当主、大石盛将が敵の総大将、上杉憲政を一騎討ちで生捕りにした武勇伝が紹介され、大きな拍手と歓声が上りました。
江戸太田家は名将、太田道灌の子孫と紹介され、船橋高城家は古河公方軍の侵略を耐え抜き、立花家の応援で勝ち抜く原動力となったと紹介され、秩父藤田家は関東管領、前橋上杉家の侵略に耐え抜き、立花家の応援で大勝利した事が紹介されました。
里見家は古河公方家の謀略で房総半島の領内に大規模な反乱が発生。古河公方軍の介入で窮地に陥り、立花家の支援で撃退して大勝利した事が紹介されました。
甲斐武田家は甲斐国を統一して信濃国南部を攻略中と紹介され、小田原北条家は初代、伊勢早雲が室町幕府に仕え、今川家の相続争いを納めて以来、二代目が北条家を名乗り、伊豆国、相模国に繁栄した家柄と紹介されました。
上洛の行列の最後尾には立花家の10匹の警備犬が馬と一緒に歩きながら馬の背中に飛び乗ったり、馬から馬に飛び移る妙技を見せたり、見学者に愛想を振り撒きました。
上洛行列の披露は大盛況で賑かに終わりました。
上洛の行列は次の目的地、四條畷方面に向かいました。
上洛する立花家の軍勢は堺の町衆に歓迎されて行列の披露を成功させました。
次の目的地付近にて、護衛の軍勢と合流が予定されています。