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戦国立花家三代、新日本国戦記、大國魂神社の大神様に捧ぐ!織田信長を倒して全国統一を目指します!  作者: 近衛政宗


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1546年(天文15年)10月下旬、夜襲!敵本隊浅香山宿営地に侵攻!

敵は勅使の到着で祝いの宴が開かれて警備が緩む事を想定していました。

1546年(天文15年)10月下旬


「敵襲!敵襲に備えろー!」

「敵襲!馬房と倉庫を守れー!」

「馬と献上品を守れー!」


次々に浅香山宿営地の中が騒がしくなりました。宴席が行われていた大広間に緊張が走りました。

そこで、立花義秀が立ち上がりました。


「さて、ご来賓の皆さん!

敵の攻撃が近いと察しており、夜襲が有ると待ち構えておりました!

皆さんは本丸三階の最上階に移動をお願い致します。三階に酒とツマミを用意してありますので、敵を迎撃する現場を見物して頂きます!」


「ぐはははは!義秀!見事だ!

我々は最上階から酒を呑みながら戦見物か?

楽しくなりそうだな?」


ご老公様が、神に使える神職者が少々不謹慎な発言ですが、悪人退治なので同席していた皆さんは突っ込まずにスルーしていました。

緊迫して凍りついた雰囲気が一気に和みました。


本丸三階最上階に案内された来賓達は滅多に無い機会に恵まれる事になりました。

敵の襲撃が確認されてから浅香山宿営地の篝火が一斉に増やされ、大量の篝火に照らされて暗闇を消して、侵入者を見つけ易くしました。


「居たぞ!弓矢を放てー!」

声がする方向に目をやると本丸付近を警戒している20名程の警備兵が敵兵5名を見つけて弓矢を連射しました。

一斉に20本の矢が放たれ、2名が倒れ、更に連射された弓矢の雨に残る3名も倒されて忽ち生け捕られました。


「見事なり!」

「天晴れ!」

「あの弓矢の連射は凄いぞ!」

本丸最上階から迫力の実戦を見た来賓達から歓声と拍手が上がりました。


しかし、本丸から離れた天幕の一部から火の手が上がるのが見えました。

「燃えてるぞ!」

「近くの天幕に燃え移るとやばいぞ!」

来賓達から声が漏れました。


燃える天幕消火作業が始まりました。

周囲に居た警戒兵が駆けつけ、隣の天幕の紐をほどいて素早く解体して燃える天幕から延焼するのを防ぎました。

「おぉ!素早いぞ!」

「延焼を防いだぞ!」

来賓達が拍手して喜びました。


「宿営地の外、空堀の先も明るいじゃないか?あちこち燃えてるぞ!」

「東西南北、あちこち燃えているぞ!」

「大丈夫なのか?」

来賓達から不安が漏れました。


「ぶはははは!大丈夫です!

敵襲が確認されたので、三層の監視塔から火矢を放ち、周囲の枯れ草を燃やしています。

これで、隠れている敵兵は火に囲まれるのを恐れて宿営地に攻め入るか、退却するか迷っているでしょう」


「おぉ!義秀!それなら安心だ!」

ご老公様が納得の声を漏らし、来賓達も安心して笑顔になりました。


「ワンワン!ワンワン!」

「居たぞー!犬を放てー!」

警備兵たちが敵兵を見つけると2頭の犬を放ちました。

「捕らえたぞー!」

犬が敵兵の足に噛みつき、倒れた2名の敵兵を生け捕る瞬間を本丸最上階から見た来賓達から歓声が上がりました。


「義秀!凄いじゃないか?警備犬か?」


「はい、優秀な警備犬を用意しています。

犬は1頭で10名の兵士に劣らぬ働きを致します!頼もしい仲間にございます!」


ご老公様が義秀の答えに満足の笑みを浮かべました。


浅香山宿営地は東西南北、正方形の形で周囲4キロの広さを誇ります。

宿営地の監視塔は約100メートル間隔で並び、15基設置しています。

三層の高さから20名ずつ、最大で60名が警備しています。

敵兵が侵入するには外堀の外側と内側に設置された逆茂木と乱杭をすり抜けて竹矢来と竹柵の壁を破壊すれば侵入可能です。


竹矢来は竹を密着させて紐で縛り、住宅の敷地の境界線に風避けと目隠しに壁として使われます。竹柵は竹を縦横に紐で縛り、住宅の境界線に柵として使われ、外から中が見える構造です。本来は住宅に使う物を宿営地に使用しているので、破壊工作から守るには強度に限界がありました。


三層の監視塔は外堀の先に備えた多数の篝火の明かりを便りに監視します。さらに外堀の周囲を警備兵が巡回しています。

宿営地の内部も篝火を設置して監視塔からの黙視と警備兵の巡回で厳しく警備していました。


その警備体制を突破した敵兵は勇気と実行力を備えた油断出来ぬ兵士です。

侵入した敵兵は馬房と倉庫に準備された献上品に狙いを定めて兵力を集中します。

敵の狙いは立花家の上洛阻止にありました。


東西南北のいずれかの防御網を突破した敵兵は宿営地側の守備力に分断されながら、漸く馬房と倉庫付近に辿り着きました。

その数はわずかに50名、すでに仲間の多くが絶命したり、捕縛されています。


彼らの主人は三好長慶、先日幕府から解任された管領、細川晴元の筆頭宿老であり、細川晴元の失脚直後に幕府の新体制派に寝返り、

旧細川晴元派の切り崩しに成功しました。

細川晴元の家臣を次々に引き抜いた事で、三好長慶立場は急上昇、幕府の新体制派の重役に昇格しています。

三好長慶は細川晴元の家臣を引き抜く時に彼らから人質を確保しています。

事実上、自分の家臣に加えてしまいました。

相対的に幕府の中で最大の兵力を保持する事になり、短期間で和泉国、河内国、摂津国の大半を支配地域にしていました。


馬房と倉庫の前には高さ2mの竹矢来があり、中の様子が見えません。

見えるのは馬房と倉庫の屋根だけで、警備状況が把握出来ません。

敵兵も中の様子が気になりますが、迂闊に偵察に向かえば発見されてしまいます。

仕方無く、中の様子が不明のまま攻撃を決意しました。

「いくぞ!竹矢来を破壊して突入だ!」

敵の指揮官が指令を出しました。


一気に竹矢来を破壊して侵入した50名の敵兵は馬房と倉庫の前に弓を構えた兵士達の姿を目にしました。

僅か50m先には200名の弓隊が待ち構え、「放てー!」

指揮官の声が響き、200本の弓矢が一斉に放たれました。一瞬で倒れる敵兵は連射を受けて全員に命中、多数が絶命、生き延びた僅かな敵兵は捕縛されました。


本丸から離れた場所にあり、この戦いの様子が本丸の来賓達が見る事はありませんでした。

本丸最上階に伝令の兵士がやって来ました。

「報告します!馬房と倉庫に襲撃して来た敵兵50名を全滅させました!

僅かな生き残りを捕縛!

敵兵士から所属先と目的を尋問中にございます!」



「よっしゃ!」

「良くやった!」

報告を聞いた来賓達が拍手して喜びました。

その後も宿営地の戦いの様子が次々に報告されました。

周囲を見渡すと浅香山宿営地の外は枯れ草が燃え盛り、昼間の如く明るくなり、敵兵が侵入するには厳しい状況になっていました。


「あっ!忘れてたぞ!

堺の町にこちらの状況を知らせておかねば心配しているだろう?

伝令を出さねばならんな?」

立花義秀が呟きました。


するとそこに美人侍女5名を連れた松千代が現れました。

「お爺!手配済だよ!政家(筆頭宿老、鹿島政家)おじさんが知らせてくれたよ!」


「ぶはははは!酒が旨くて忘れてたぞ!

あれ?松千代?眠く無いのか?

もう、早暁だ、間も無く夜明けになるぞ…」


「お爺、敵の軍勢はまだ近くに潜んでいるから油断出来ないよ!

火の手の勢いが収まるのを待って襲撃してくるから気を抜けないよ!」


「敵の軍勢?神様のお告げがあったのか?」


「伊勢の大神様がね、見せてくれたの、お空の上から見せてくれたよ!

宿営地の北側、2000の軍勢が待機中!

宿営地の周りが燃えて接近出来ないから待機してる!」


「伊勢神宮の大神様?!…

お告げが来たのだな?

おぉ!敵の軍勢の位置が把握出来たら断然有利になるぞ!」


「お爺!既に政家おじさんに敵の軍勢の位置を伝えたから後はおじさんに任せておけば大丈夫だよ!」



「ぶはははは!義秀!松千代が伊勢神宮の大神様とお付き合いがあるとは驚いたぞ!

上洛の帰り道には伊勢神宮に御礼参りせねばならんぞ!」

ご老公様がご機嫌に語られました。


「ご老公、既に上洛の帰路に予定を入れております。伊勢神宮には鳥羽水軍を通じて参拝する事をお知らせしてございます」


「おぉ!それは楽しみだ!伊勢参りは生涯の夢であったからな、ぶはははは!」


やがて東の空が少しずつ明るくなりました。

宿営地周辺の火の手が次第に弱まり、本丸最上階から見える地平線から太陽が昇る頃、新たな緊張に包まれました。

本丸最上階から遥か彼方、北から軍勢が見え始め、真っ赤な軍旗が見えました。


「来たぞ!来たぞ!」

さすがに酒で無くお茶を飲みながら来賓達は迫り来る敵の軍勢を眺めました。


伝令が本丸最上階にやって来ました。

「申し上げます!

敵の軍勢2000!所属先は不明!

所属を示す家紋無しの真っ赤な軍旗を掲げております!

これより迎撃致します!」


伝令は報告を済ませて退出しました。

立花義秀が来賓達に説明します。


「皆様にお知らせがございます!

先日、堺の町にて襲撃事件が発生して以来、浅香山宿営地が狙われている情報を事前に把握しておりました。

今夜の宴が狙われる可能性が高まり、万全の準備をしておりました!

今回の戦いの総大将に立花家筆頭宿老、鹿島政家を任命致しました!

浅香山宿営地の軍勢は3500!

これより敵の本隊2000と決戦致します!

我が手勢の強さをご覧あれ!」


本丸最上階から見える景色は、真っ赤な軍旗を掲げた2000の軍勢が浅香山宿営地に向かっています。

その姿に来賓の数名は緊張感が高まり心臓がドキドキしています。

立花家の戦い振りを知る武将達は安心して見る事ができますが、近衛家と九条家の商務奉行、会合衆の山城屋、河内屋、和泉屋は不安な顔をしています。


その場に従者に担がれた勅使の今園定家が現れました。泥酔して寝ていたところ、側近に連れられて最も安全な場所にやって来ました。

酔いが残っている様子で側近から説明されて驚愕の表情を浮かべています。

そこに松千代が寄り添いました。

怯える今園定家の手を松千代の小さな手をそえました。


「勅使の今園定家様、立花義秀の孫、松千代にございます。

此度はご心労を御掛けいたしますが、帝の英慮を戴く立花家、及び同盟大名家の働き振りを御覧頂き、帝を始め朝廷の皆様方に事実をお伝え頂きたく!

伏してお願い申し上げます!」


松千代の瞳に見つめられて今園定家が笑顔になりました。

「あぁ!なんと穏やかな事かな!

戦いに驚く我が身を恥じ入ります!

松千代殿、お陰で我が勤めを思い知りました!今から見聞きする事を必ず帝及び朝廷に申し伝え致します!

立花殿は素晴らしいお孫さんをお持ちであらしゃりますなぁ!」


「今園様、お褒めに預かり、恐縮にございます。これより外は騒がしくなりますが、こちらは本丸最上階にて最も安全な場所にございます」


「承知致しました。お陰でざわついた胸の鼓動が落ち着きました。

さぁ!戦いの様子をこの目で確めさせて頂きますぞ!」


今園定家が落ち着きを取り戻し、来賓達がほっこりした雰囲気になりました。

やがて外から兵士達の声が聞こえて来ます。


「エイ!トウ!エイ!

エイ!トウ!エイ!

エイ!トウ!エイ!

エイ!トウ!エイ!」

浅香山宿営地から太鼓が鳴り響き、兵士達が気合いの声を上げました。


敵の軍勢が浅香山宿営地の西、大和川沿いに1000、宿営地の北門に1000の軍勢が向かいました。東の空が明るくなり始め、周りの景色が次第にはっきりと見えてきます。


─浅香山宿営地軍勢配置─


西側(大和川方面)守備隊、新納忠義800

北側守備隊、佐伯勝長800

本隊、総大将、鹿島政家1000

三層監視台15基、弓兵900

総勢3500


総大将、鹿島政家は本丸から北西200m離れた位置に本隊を率いています。

東西南北の竹矢来、竹柵沿いには三層の高さの監視台15基に各々60名の弓兵を配置して総勢900名が接近する敵に弓矢の連射を浴びせる構えで待機しています。


宿営地の西側に広がる敵勢1000、北側に広がる敵勢1000が少しずつ落ち着いて接近しています。

監視台の弓兵達の射程圏に入りましたが、指揮官達は効果的な射撃が出来る距離まで到達するのを待ちました。

空堀の手前にある逆茂木と乱杭の合間をすり抜ける敵勢は慎重に空堀に入り、緩んだ土に足を取られながら進みました。

空堀を抜けて、さらに逆茂木と乱杭の隙間を抜けて、先頭集団が竹矢来と竹柵に迫ります。


「まだだ!…あと少し我慢だ!」

「まだだ!まだまだ!」

弓を片手に下げたままの弓兵は十分に引き付ける指示に従い、射ちたくなる気持ちを押さえています。

ついに先頭集団が竹矢来と竹柵に手が届く距離になりました。


「構えろー!」

指揮官の声に漸く射撃の姿勢になりました。

「放てー!放てー!」

「連射だー!放てー!」

「好きなだけ連射だー!放てー!」


西から北に面している監視台9基に配備された各々60名が最初の射撃で540本の弓矢が放たれました。

彼らは60秒に15連射する訓練を受けています。

監視台から60秒で単純計算で8100本の連射になります。


監視台からの射撃に続いて西側に配置された新納勢800の連射と北側に配置された佐伯勢800の連射が加わりました。

彼らも60秒で15本の連射を訓練しています。

一瞬に2140本の弓矢が放たれます。

シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!

絶え間ない弓矢の連射が凄まじい激しさで宿営地に迫った敵勢に降りかかりました。


立花家と同盟大名家との戦い方を知らぬ敵勢は盾を持たずに接近しました。

前列に並んだ敵勢が一瞬で瞬殺、一人の身体に数本の弓矢が刺さり、絶命しました。

至近距離から放たれた弓矢は前列から5列目周辺の集団に豪雨の如く放たれました。

集団がバタバタ倒され、猛烈な射撃は60秒で32000本の弓矢が放たれました。


一瞬で敵勢の最前列から5列目まての敵勢が壊滅、連射が続き、その後列の集団も一瞬にして瞬殺されて壊滅状態になりました。


本丸最上階から今園定家を始め、近衛家、九条家の商務奉行、会合衆の山城屋、河内屋、和泉屋の文化人には衝撃が強すぎる光景でした。

「なんだ!?何があった!?」

「見た事無いぞ!圧倒的な弓矢の数だぞ!」

「敵が逃げ始めたぞ!」

「立花家の戦い方はこんなに凄いのか?」

ため息混じりに呟く文化人に北条玄庵が呟きました。


「皆さん、北条家は四年前にあの弓矢に怯えて負けました。あの弓矢の連射を浴びたら小心者はチビりますぞ!」

北条玄庵が経験を語りました。


シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!

本丸最上階まで弓矢の連射の音が響きます。

約100m間隔で配置された三層の監視塔から放たれる弓矢は三つの角度から標的に放たれます。それに加えて新納勢、佐伯勢の水平射撃が加わります。

盾を持たぬ兵士達は恐怖に怯えました。


敵勢が背を向けて逃げ出すのが見えました。

敵勢に容赦無く弓矢の連射が続きます。

空堀の周囲には逆茂木と乱杭が有り、逃げる兵士はジグザクに走らされ、倒れた味方に足を取られて転びました。多数の味方の兵士が転び、後から来る味方に踏まれ、将棋倒しの状態に弓矢の連射が激しい嵐の如く集中しました。


「追撃開始!騎馬隊出撃せよ!」

宿営地の指揮官達が追撃を始めました。

「もう殺すな!出来る限り降伏させろ!」

「降伏させて後始末を手伝わせるのだ!」


壊滅的打撃を喰らい、敵勢は総崩れで退却します。散り散りになり次々に包囲されて降服する兵士が続出しました。

「降れ!降れー!

命は助ける!武器を破棄しろー!」


各地で孤立した少数を宿営地の兵士達が弓矢で脅して降伏を迫りました。

弓矢の連射の恐怖に敵の多数の兵士が降伏しました。


未明に始まった戦いは、敵勢を潰滅させて、多数の捕虜を確保しました。

敵方の戦死1200

重傷者300

捕虜400

(重傷者は動けず確保されて実質捕虜700)


宿営地、立花家、同盟大名家

戦死5

負傷者20


宿営地側の損害は微小、敵方は捕虜の半数が負傷しており、実質損耗率85%になりました。


宿営地に勝鬨が響きます。

「エイ!エイ!おぉー!

エイ!エイ!おぉー!

エイ!エイ!おぉー!

エイ!エイ!おぉー!」


立花家と同盟大名家の完全勝利を見届けた勅使、今園定家は朝廷に報告する為、正午過ぎに宿営地を離れてました。

道中の安全の為、護衛100騎を引き連れて都に向かいました。



立花家、同盟大名家の結束が実を結びました。

宿営地を攻撃して上洛阻止を狙ったのは誰?

三好長慶の仕業か?

上洛は無事に出来るのでしょうか?


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