1546年(天文15年)10月下旬、上洛船団第三陣到着!
浅香山宿営地は湧水に恵まれて良い環境にありました。敵の攻撃に耐えうる城塞としての機能を充分に備えていました。
戦国時代の戦場では水浴びで身体を清めるしかありません。宿営地に風呂が設置されていたら幸せな環境です。
1546年(天文15年)10月下旬
要塞の如く仕上がった浅香山宿営地にて宴が行われました。
立花義秀の武蔵守護職叙任だけで無く、冠位の授与に立花義秀、立花義國、猿渡盛胤、猿渡盛村の四名が内示された事が公表されました。お祝い事が続いて宴は大いに盛り上がりました。
翌早朝、本丸の最上階から堺の海、堺の町や天皇陵、田畑の絶景を楽しむ二日酔いの立花義秀義秀と松千代の姿がありました。
「お爺!飲み過ぎだよ!」
「ぶはははは!祝いの宴にご老公様に泥酔軍師将広(弟の立花将広)が呑ませるから逃げられぬ!二日酔いは宿命だぞ!」
そこに筆頭宿老、鹿島政家がやって来ました。
「殿!深夜から未明に敵方の間者が現れ、3名を射殺、5名を捕縛致しました!」
「ぶはははは!敵方はまだ諦めておらぬ様だな?まだまだ警戒せねばならんな?
それで捕縛した奴らはどうした?」
「質問に返事をせず、強情な奴らでしたが、豚の角煮、青菜ニンニクの握り飯を与えて焼酎を呑ませたら、泥酔して全て白状させました!
金で雇われ、宿営地の建物へ放火、さらに要人暗殺で大金が約束されたと申しております。総勢20名、雇い主の名は不明ながら、商人らしき人物とだけ判明致しました!」
「よっしゃ!近衛家の商務奉行に知らせろ!
捕縛した奴らは堺の町に裁きを託す!」
「はい、手配致します!
殿、夜間の警備部隊に相撲と的当ての射撃を許可なされたと聞きましたが、それが効果を上げたと報告がございました」
「夜間の警備が退屈であろう?
松千代が思い付いた事だったが、早速効き目があったぞ!」
「はい、眠気防止に相撲を取り入れると眠気覚ましに効果がございました。
更に空堀の手前や空堀の先に的と篝火を多数配置して監視塔から弓矢の腕比べをしながら警戒していると、敵方の間者を発見に至り捕縛致しました」
「ぶはははは!松千代!
お前の提案が初日に結果を出したぞ!」
「それは良かったね!
ねぇお爺、空堀の先にある草原に纏めて馬を入れて踏みつければ敵方の間者の隠れ場所が減るし、刈り取ったら馬の餌や燃料になるよ!」
「ぶはははは!手柄を誇らぬのか?
草原に馬を?…そうだな!
松千代の言う通りだな?
政家!手配致せ!」
「はい、承知致しました。」
宿営地の外に広がる草原は大和川の恩恵で周囲に伏流水があり、数ヶ所から湧水が溢れ、名も無き小川が幾筋も流れていました。
早速、多数の馬に乗り兵士達が草原に馬を入れました。
馬の調教と気分転換になり、しかも馬の餌になる飼料の宝庫だと判明しました。
この日の午後には堺の湊に上洛船団の第三陣が到着しました。
立花家宿老、佐伯勝長、同盟大名家、太田景助、高城義春、藤田重綱、藤田康邦、武田信繁、北条玄庵などが上陸、近衛家の商館に招かれました。
近衛家の商館奉行から先日、松千代と立花義秀の行列が敵対勢力から襲撃された事を伝えました。堺の町を見学した後は安全確保の為、浅香山宿営地に宿泊する事が伝えられました。
堺の町の賑わいを見学した上洛船団の第三陣一行は夕刻、浅香山宿営地に向かいました。
馬に乗り、およそ1時間余り、町から1里強(5キロ)離れた場所に見える宿営地が見えました。
そこに立花家筆頭宿老、鹿島政家の嫡男、鹿島政勝が出迎えに現れました。行列の一行を見晴らしの良い場所に案内すると、浅香山宿営地の説明を始めました。
「皆様、浅香山宿営地は立花家と同盟大名家の上洛を安全にする為に7月上旬に着工、3ヶ月余り掛けて完成致しました!
草原の先の丘に三層の本丸がございます。本丸を中心に周囲およそ36町(4キロ)に竹柵、竹矢来を巡らせて三層の監視塔15基を備えています。敵が接近すると高所から弓矢の集中射撃を浴びる事になります。
外側に空堀を構え、逆茂木と乱杭を巡らせて
ございます」
「なんと!これが立花家の宿営地か?
強固な要塞じゃないか?」
「でかいぞ!広いぞ!凄いぞ!」
と口々に驚きの声を上げました。
「それから、宿営地には平屋建ての宿泊棟に天幕を配置しており、3000名が風雨に晒されずに収容出来ます。
馬房は1000頭が収容可能、さらに上洛に必要な物資が全て収容出来る倉庫、敷地内には良質な湧水が豊富にあり、お風呂も用意致しました!湯船には10名が入れる程の広さがございます」
「それは有難い!
水垢離しなくて済むなら極楽じゃないか?」
北条玄庵が大いに喜びました。
「さらに、湧水が豊富なので一日中湯沸かしをしています。一般兵士達の為に湯浴び施設を作りましたので皆様に同行された兵士の方々にも毎日湯浴びをお勧め致します!」
「なんと!武田家は温泉好きが多くてなぁ、それは兵士達が喜びましょう。
立花家の皆様に感謝致します!」
武田信繁が大いに喜びました。
鹿島政勝に案内されて上洛船団第三陣一行は無事に浅香山宿営地に到着しました。
─浅香山宿営地、本丸最上階─
─松千代、立花義秀─
「お爺、ほら見て!
上洛船団の第三陣が到着したよ!」
「ほぉ、無事に着いて良かったな。
お伊勢の大神様が台風を押さえてくれたお陰だな?」
「うん!お伊勢の大神様が約束してくれたから帰国するまで台風は来ないよ!
ねぇ、お爺、帰国すると浅香山宿営地はどうするつもり?
誰かに譲渡するの?解体してしまうの?」
「ぶはははは!そうだなぁ、まるで要塞だからな、手を加えたら立派な城になるしなぁ…
誰が欲しがるかな?」
「お爺!諸刃の刃だよ!
堺の町の喉元に所在しているから、堺の町を守る勢力が宿営地を保てるなら良し!
逆に敵対勢力に奪われたら堺の町は敵対勢力の手に落ちて、立花家と同盟大名家の交易が遮断されて帝や朝廷に収穫した年貢や上納品を届けられなくなるかも?」
「おぉー!そこまで考えてなかったぞ!
松千代に言われるまで気にしてなかった!」
「お爺、解体して、木材、竹柵、竹矢来など堺の商人へ売り付けて、馬糞は喜んで買い付けに来るから、更地にするべきだよ!
立花家が駐留軍を置ける場所ではないよね?」
「勿体ないが更地にするのが無難だな。
松千代に教えられたぞ!」
「お爺は忙しいのだから仕方無いよ。
さて、出迎えに行くよ!」
松千代に促され、義秀が上洛第三陣の武将達を出迎えに行きました。
上洛船団の第三陣が到着しました。
数日後には都に上洛します。
敵対勢力の動きが気になります。




