1546年(天文15年)10月下旬、上洛船団第二陣到着、浅香山宿営地に移動!
上洛船団の第二陣が到着します。
再度襲撃される可能性がありますが、先乗り部隊を派遣して、現地に宿営地を用意していた事が幸いしました。
1546年(天文15年)10月下旬
松千代と立花義秀が上洛への下準備に知恵を働かせていた頃、堺の湊には後続の第二陣、同盟大名家の乗船した船が次々に到着しました。
大量の荷物の積み卸しが始まり、堺の町には活気に溢れました。
後続の船団の到着を聞いた松千代と立花義秀は出迎えに向かいました。
立花将広、猿渡盛胤(ご老公)、鹿島政家、吉良頼高、吉良頼貞、三田綱秀、三田綱重、大石定久、大石盛将、里見義弘、各々初めての船旅を堪能した表情は明るく、無事の到着を喜びました。
沖合いには警備役の九鬼水軍、熊野水軍、雑賀水軍の船が役目を終えて帰路に向かっていました。
上洛第二陣の人々は堺の湊に異国の船が何隻も停泊する姿と湊の広さに感激していました。立花家の商館を見学した後、立花家の別邸に案内された第二陣の人々の耳に昨日の襲撃事件が知らされると、驚きの声が上がりました。
襲撃事件の黒幕は幕府の管領を解任されて失脚した細川晴元派であり、堺の会合衆に裏切り者が有り、襲撃事件の協力者が捕縛された事が公表されました。
「つまり、兄上、堺の町に敵方の影響力が浸透しており、この先、上洛する我々が安全だとは限らぬと言う事だな?」
立花将広が呟きました。
「堺に到着した夜に襲撃して来たからには既にしっかり準備されていた筈だからな、この先も仕掛けて来ると想定して動くつもりだ!」
立花義秀が答えました。
更に義秀から宿泊先を近衛家別邸、立花家の商館、立花家の別邸の3ヶ所に予定していたが、大和川河川敷に開設した宿営地に変更する事を説明しました。
そこに立花家別邸に近衛家、九条家の商務奉行、会合衆の会頭、山城屋が挨拶にやって来ました。襲撃事件のお詫びと捜索の状況説明があり、会合衆から5名と傭兵、会合衆の私兵多数が捕縛された事が報告され、謝罪がありました。
近衛家、九条家の商務奉行と山城屋が立ち去ると、全員で宿営地に馬に乗り移動しました。宿営地は堺の会合衆から許可され、7月上旬に着工して完成しています。
堺の町から約5キロ先、大和川河川敷近くの浅香山の丘を利用して、周囲1キロ四方に竹柵、竹矢来を巡らせ、その外側に幅2m、深さ50cm程の空堀を巡らせて空堀の前後に逆茂木、乱杭を配置しています。
更に三階建ての監視塔を15棟配置して接近する敵に弓矢の連射で対抗します。
宿営地にしては強固な防御力を備えていました。
松千代は祖父義秀の馬に乗り、宿営地近くにやって来ました。
「あれぇー!お爺!立派な要塞が出来てる!
凄いよぉ!」
「ぶはははは!立派な物が出来たな…
まぁ防御力は抜群の様だぞ!」
同行している同盟大名家の武将達も唸る程の出来映えでした。
そこに宿営地の責任者、普請奉行、土方将文が出迎えにやって来ました。
「土方!見事だ!
まるで堅牢な要塞だな?案内を頼むぞ!」
「はい!承知致しました!
殿、ご老公様(猿渡盛胤)と同盟大名家の皆様にまずは、概要をお知らせ致します!」
「良かろう、お知らせ致せ!」
「はい!皆様に申し上げます!
宿営地が堺の町から離れた地に設営した理由にございますが、堺の町には古代の帝の天皇陵が数多く、その周囲には聖地とされてる水源地があり、田畑や民家がございます。
近くには宿営地に適した広い場所がございません。その為に1里強(5キロ)離れた大和川近く、浅香山の丘を利用して普請する事になりました。此よりご案内致します!」
「ぶはははは!立派な宿営地だ!
それでは案内を頼むぞ!」
土方将文に導かれ、松千代、立花義秀らの行列は宿営地に入りました。
宿営地の中心に三階建ての本丸、その回りに倉庫が立ち並び、平屋建ての居住棟が見えました。
その周囲には多数の天幕があり、風雨が凌げます。さらに1000頭まで収容出来る馬房が備えられました。
「皆様!本丸と平屋の建物、馬房の建物、三階建ての監視塔の材料は府中から組立式の物を輸送いたしました。
宿営地には3000名から5000名の軍勢が収容可能にございます。敷地内に豊富な湧水が有り、飲料水に適した水質が確認出来てございます。
そこで敷地内に一度に10名が入浴出来る風呂も用意致しました。
それから、四方に巡らせた竹柵と竹矢来、逆茂木に乱杭は堺の会合衆の皆様、近衛家、九条家の商務奉行に調達と設置のお手伝いを頂きました。
さらに空堀の掘削には多数の作業者を集めて頂き、堺の町の多くの方々の支援を賜り完成致しました!」
「よっしゃ!土方!良くやった!
これからも宜しく頼むぞ!」
立花義秀は宿営地の出来映えに感激して土方の苦労を想って称賛しました。
周りから自然に拍手が贈られました。
宿営地に落ち着いた一行は各々の部屋に案内され、順番に風呂に入り旅の疲れを癒しました。風呂上がりに三階建ての本丸最上階に上がり、涼む大國魂神社の先代、大宮司、猿渡盛胤と立花義秀…
「義秀!この宿営地はまるで城塞だ…
浅香山城塞だな?」
「はい、堺の町と海に湊が見えて、古代の天皇陵が見える絶景の城塞にございます!」
「義秀、お前と一緒に都に上洛する事になり、不思議な気持ちだ…
大國魂神社が朝廷と900年歩み、立花家が加わり、立花家が400年朝廷に仕えて来たからな、ご先祖様の尽くして来た事が実り、朝廷に招かれて上洛するのだからな…」
「ご老公、数日後に上洛致しますが、11月1日に新将軍の就任式と宴席に招待されています。11月5日に私の武蔵守護職の叙任の儀式の予定にございますが、さらに冠位の授与があると知らされました。
ご老公に正三位神祇大伯、嫡男盛村様に従四位神祇伯を授与すると聞き及びました」
「義秀!無冠の老人にいきなり正三位?
初耳の冠位だな?神祇大伯?」
「はい、神職の最高冠位が従四位神祇伯にて、大國魂神社の900年の誠意に答える為に新たに上位の冠位を創設したと近衛家の商務奉行から知らされました」
「なんと恐れ多い…三位なら帝に拝謁出来る冠位だぞ!」
「はい、私にも従三位左近衛大将の冠位を授与との知らせを頂きました」
「ぶはははは!義秀、雲に乗る様な話だな?
夕日を浴びる海に堺の町、古代の天皇陵の眺め…忘れられぬ旅になりそうだ!」
「お爺!ご老公様!宴が始まるよ!」
美人侍女5名を引き連れた松千代が浴衣姿で現れました。美人侍女達の黒髪が濡れています。
「松千代?侍女達と風呂に入ったのか?」
義秀が嫉妬しながら聞きました。
「一緒に入ったから楽しかったよ!」
義秀、ご老公は子供の特権を妬みながら宴席に向かいました。
浅香山の宿営地は普請奉行、土方将文の手腕と堺の会合衆、近衛家、九条家の協力で見事に出来上がりました。
大量の物資と多数の馬と、3000から5000の軍勢が収容出来る城塞になりました。




