1546年(天文15年)5月25日、立花家の軍勢、府中の街へ勝利の凱旋!
2ヶ月に渡る古河公方家との戦いが終わり、松千代と義秀が軍勢を引き連れて府中城に向かいます。
1546年(天文15年)5月25日
早朝、江戸太田家当主、太田景資の見送りを受けて立花義秀の軍勢が府中へ向かいました。江戸城から府中城まで直線距離で30キロ程になります。
立花家と同盟大名家の軍勢30000の行列が多数の軍旗、官軍の証、錦の旗を掲げて行進します。軍勢の三割、9000頭の馬に乗る諸将と騎兵の姿が輝いて見えました。
江戸城外には太田家の領民が手を振り見送ります。江戸太田領の鳩ヶ谷城、赤山城、戸塚城が敵に奪われ、立花家の支援で奪還しました。その事を知る民は手を振り拍手で見送りました。
江戸太田領を離れると軍勢は世田谷吉良領内に入ります。世田谷街道を西へ進むと吉良家の領民の歓迎を受けながら、世田谷城の目の前を通過します。
世田谷城付近の領民の暖かい歓迎を受けて通過すると品川街道と甲州街道に別れて進みます。やがて調布に入り立花家の領内に入りました。
府中城付近には立花家の軍勢が凱旋すると聞いて大勢の領民が集まりました。
日の丸の小旗を振り、歓声を上げて迎えます。立花家の軍勢は今回の2ヶ月に渡る戦いの功労者を集めて凱旋する行列に参加させました。
領民たちは大國魂神社に格納している大太鼓を持ち出して大音響の太鼓の音で歓迎します。一ノ宮から六ノ宮の六台の太鼓が街に繰り出して遠征軍の凱旋を祝います。
房総半島、里見家の反乱と古河公方家の介入を平定、さらに柏方面の救援に現れて主力決戦を勝利に導く大活躍の立花将広、随身する里見家嫡男、里見義弘は初陣から立花将広に指導を受けて大小20回を越える戦いに鍛えられました。立花家の広報担当が二人の戦い振りや引き連れた武将達の活躍を大声上で紹介します。
泥酔軍師!魔術師と呼ばれる立花将広の人気は絶大で大歓声と拍手に包まれました。
次に柏方面の総大将を努めた嫡男、立花義國、補佐役の東郷信久が広報担当者に紹介されました。義國は最前線で三度も死を覚悟する程の激戦を勝ち抜いた事を紹介されると、次期立花家当主に領民から盛大な拍手と歓声で迎えられました。
続いて柏方面の駐留軍主将として活躍、先日亡くなった次席宿老、本多広孝の遺骨を抱いた嫡男、本多広家、加賀美利久の部隊は喪章を付けて行軍しました。立花家の広報担当者が次席宿老、本多広多孝の功績と次期当主、立花義國を守る為に犠牲になった事を知らせると盛大な拍手と歓声に包まれました。
「良くやったぞ!」
「若殿を守り、良くやった!」
多数の声が掛かり、本多家の多数の兵士達が涙を流しながら行進します。
「エイ!トウ!エイ!
エイ!トウ!エイ!
エイ!トウ!エイ!
エイ!トウ!エイ!」
領民の声に答えて本多家の兵士達が気合いの声を上げて感謝を表しました。
多数の領民が遺骨を抱く本多広家に祈りを捧げました。
続いて青梅三田家、三田綱秀、三田綱重親子、滝山大石家、大石定久、大石盛将親子の軍勢が現れました。三田綱秀、大石定久の壮年の両名が川越、秩父、岩槻太田領の戦いに活躍、三田綱重、大石盛将の息子二人が房総半島の平定戦、柏、鎌ヶ谷方面の戦いに貢献した事を広報担当者が大声で解説すると大きな拍手と歓声に包まれました。
最後に立花義秀、松千代、鹿島政家の軍勢が続きます。義秀の馬に乗せられた松千代に領民の拍手と歓声が桁違いに大きくなりました。
「松千代様ぁー!」
「松千代様ぁー!」
「義秀様ぁー!」
松千代と義秀に歓声が上がります。
日の丸の小旗が振られ、大太鼓の波動が周囲の軍勢や領民の胸や腹に響きました。太鼓が鳴り響き、応援歌が始まります。
「おぉーぉー!にぃーぃーっぽぉーぉーん!
にぃーっぽん!にぃーっぽん!
にぃーぃっぽぉーん!
ハイ!ハイ!ハイ!ハイ!
おぉーぉー!にぃーぃーっぽぉーぉーん!
にぃーっぽん!にぃーっぽん!
にぃーぃっぽぉーん!
ハイ!ハイ!ハイ!ハイ!
た、ち、ば、な!
た、ち、ば、な!
領民が応援歌を歌い、跳び跳ねて拍手と歓声、太鼓が鳴り響き、立花家の凱旋行進は大盛況となりました。
やがて大國魂神社の正門に諸将が集まり、立花義秀、松千代、鹿島政家と共に戦勝報告の為、本殿に向かいます。
玉砂利を歩く度に穢れが清らかに成る感覚があり、肩や背中に覆う邪気が祓われました。
諸将は本殿に整列すると、大國魂神社大宮司が祝詞を上げ大神様に戦勝報告とお祓いを済ませました。
儀式を追えると義秀と松千代は先代の大宮司、ご老公、猿渡盛胤に声を掛けられました。
「義秀!松千代!奥へ参れ!」
義秀は主席宿老、鹿島政家に目配せすると松千代を連れて奥御殿に入りました。
奥御殿の広間に招かれるとご老公から意外な言葉が語られます。
「義秀!松千代!古河公方家と戦い、見事に勝利と聞いてほっとしたぞ!
それでな、大神様からお告げを戴いた!
京の都へ上洛して立花義秀に武蔵守護職を賜る為に尽力し、関東八幡神社系列最高位、大國魂神社が畿内の八幡神社系列の総力をあげて支援を命じられたのだ!
義秀!余の足腰は衰えておらぬ故、上洛するぞ!」
「ご老公!松千代が大神様様から武蔵守護職を請願せよ!とお告げを戴いております!
ご老公にはこちらからお知らせするつもりでおりました!」
「ぶははは!松千代!義秀!余にも大神様のお告げがあるんだからな!
それで、上洛はいつ頃で誰を上洛させるんだ?」
「はい、前回堺の湊に渡航した11月にと考えております。上洛には向かわせるのは松千代と将広(立花将広)、鹿島政家でございます」
「松千代と将広!?…
それに政家なんだな?
大神様が決めたなら大丈夫だ!
承知した!詳細は後日取り決める!
本日は忙しいだろう、今日はこれまでだ!」
ご老公は松千代を抱き上げて奥御殿の玄関口まで見送り、義秀と大國魂神社正門に向かいました。
正門から馬に乗り、義秀と松千代は大歓声と大太鼓、応援歌に包まれ、府中城に向かいました。
午後17時過ぎ、ようやく義秀、松千代達が府中正門に到着、城内の家臣、使用人達に迎えられ、久々に府中城に戻りました。
大國魂神社、先代大宮司、猿渡盛胤公にも大神様からのお告げがありました。
朝廷の近衛家、九条家に太い繋がりを持つ猿渡盛胤のご老公に気合いが入りました。
大願成就の可能性が高まりました。