1546年(天文15年)5月23日、立花義秀、足利晴氏の反撃に驚愕!
立花義秀は足利晴氏と簗田高助を対立させる謀略を仕掛けましたが、無能に見えた晴氏が簗田高助との対立を避ける事を選びました。
簗田高助は晴氏を強制的に隠居させるつもりでしたが、それを察した晴氏が岩槻太田家の領地を乗っ取り、岩槻公方家創設で対立回避を狙いました。
1546年(天文15年)5月23日
日没後、川口城の立花義弘から江戸城に滞在中の立花義秀に岩槻太田家の異変を知らせる使者が到着しました。
使者からの口上と書状から、古河公方、足利晴氏が軍勢を率いて岩槻城に赴き、援軍と偽り太田資正、重臣の河野秀康を殺害、岩槻太田領全域が1日で河公方家に乗っ取られたと判明しました。
足利晴氏と簗田高助の対立を仕掛けたはずが、足利晴氏が意外な行動力で岩槻太田領を併合してしまいました。
─江戸太田家、江戸城─
─立花義秀、鹿島政家─
「残念だ!罠を仕掛けたが、晴氏に跳ね返されるとは思わなかった。
晴氏の側に有能な人材が居る様だな…」
「殿、次席宿老、野田弘明が岩槻太田領と領地を接しております。地理に明るく、補給に困らず、書状にも野田弘明の手腕の様だと記載しています!警戒せねばなりません!」
「次席宿老、野田弘明…目立つ事は少ないが、古河公方家の重要な戦いには必ず参加しておったな…これで岩槻太田家は滅び、古河公方家の直轄領になった。
立花家と古河公方家の領地が直接国境を接する事になり、前回の駐留軍制度を改める必要があるぞ!」
「殿、古河公方家は最前線に岩槻太田家の数倍の戦力を投入する事が可能になりました。仏教宗派の武力が加わり、次回の戦いには更なる兵力を増員するでしょう。同盟大名家の協力も必要となります!」
「ぶははは!まさか、足利晴氏が岩槻太田家を
呑み込むとは誰も予想しないだろう!
1日で岩槻太田家を滅亡させるとは…
さて、駐留軍は20000程必要になるぞ、従来通り駐留軍総大将は義弘(義秀の次男立花義弘)、副将は伊集院忠久、更に諏訪頼宗、後は同盟大名家だな、江戸太田家、世田谷吉良家、さらに南大宮城を攻略した青梅三田家から頼むとするぞ!」
「殿、川口方面の駐留軍が決まりましたら次に川越駐留軍、房総半島の駐留軍も見直しが必要でございます」
「わかった!川越と房総半島の駐留軍は府中に戻り次第見直しに取り掛かる!
それで良いな?」
「はい、宜しゅうございます」
そこに美人侍女五名を従えた松千代が現れました。椿の花の香る石鹸の匂いが辺りを包みました。
「お爺、お風呂に入ったー!
皆で楽しく入ったー!」
「何ぃー!松千代?侍女と一緒に?」
「うん!一緒だよ!」
「う、羨ましいな…」
「お爺も一緒に入りたいの?」
「当たり前だろ!入りたい!」
「ダメー!大人はダメー!」
「そんな…狡いぞ!」
孫と祖父のやり取りに…
「殿、必要とあらば御用意致しますが?…」
政家が笑顔で唆します。
「ぶははは!冗談だ!松千代は子供の特権で羨ましくてな…」
「お爺、この石鹸の椿の香りはね、京の都から取り寄せた香料と椿の花と油を合わせて作ってみたよ。肌もスベスベになるし、量産したら売れるよ!」
松千代が差し出した椿の石鹸を手に取る義秀が笑顔になりました。石鹸は義秀の若い頃から交易品として販売していました。
「新作の石鹸か?良い匂いだな?
これは売れるぞ!でもなぁ、椿の花を増やさなきゃならんよなぁ…」
「お爺、伊豆諸島に椿の花があるよ!大島、新島、八丈島等、立花家が領有する伊豆諸島の椿油と花びらを大量に使えば全国と交易可能な程生産出来る!更に橘類の皮を使用した石鹸も作ったよ!」
松千代から渡された柑橘系の匂いの石鹸も良い香りに出来上がっています。
「良し、松千代!椿の香りの石鹸と柑橘類を混ぜた石鹸を交易品にするぞ!」
「お爺、朝廷に献上してから全国に交易すると高級品で売れるはずだよ!」
「承知した!朝廷に献上してから交易品として流通させる!利益から松千代に開発した功労金を支払うぞ!
松千代が作った虎護符、戦国人生双六(人生ゲーム)、年齢別、男女別に作られた流行和服、商人用作業着、農作業着、武家の若者に流行した色鮮やかな和服など、交易品だけで無く、紙芝居、芝居興行まで確立したからなぁ、ぶははは!
利益から松千代にご褒美あげているが、随分
貯まったはずだな?」
「ぷぷぷ、お爺、笑いが止まらない位貰っているよ。だからね、次に作る物にたくさん資金を使えるからお爺には感謝してるよ!
さて、お爺、立花家の商船は羅針盤を使ってるでしょ?」
「あぁ、使ってるが、それがどうした?」
「八丈島の南に小笠原諸島があるでしょう?
羅針盤があれば探索可能なんじゃないの?
立花家が領有して確実に日本領にする必要があるよ!」
「ほぉ、了解、探索させて確保するぞ!」
「お爺、小笠原諸島で椰子の実等の南国の産物、薬草などが役に立つかも?」
「そうだな、伊豆諸島の明日葉みたいに良い物が見つかるかもしれんな?」
「お爺、コーヒー栽培が出来るかも?」
「コーヒー飲みたいなぁ…
ぶははは!松千代のお陰で、古河公方家に反撃喰らった事が吹き飛んだぞ!」
「お爺、足利晴氏は岩槻太田家を騙して滅亡させたから暫くは内政に忙しくなるはず、煽れば岩槻太田家の旧臣達が暴れたり、立花家に亡命するかもしれないよ」
「なるほど、政家!
古河公方、足利晴氏が援軍に来たと騙して太田資正、重臣河野秀康を殺害して岩槻太田家を滅亡させた!有る事無い事付け足して噂を流せ!」
「はい、承知致しました!」
松千代が軍師の如く義秀に提案を出しました。頭脳には前世の記憶や知識があり、切っ掛けがあれば次々にアイディアが湧いてくるのでした。
岩槻太田家を騙して滅亡させた足利晴氏に、太田家旧臣が全て従うとは思えません。
騙した反動がありそうです。




