1546年(天文15年)5月18日、静かなる謀略
立花家と古河公方家家の戦いは停戦となり、後始末の段階になりました。
松千代の提案で足利晴氏と簗田高助の離間工作が実施されて二人の間に楔を打つ事が成功しました。
次に打つ手は?
簗田高助を苦しめる策とは?
1546年(天文15年)5月18日
深井湊にて武器と甲冑の取り引きが始まりました。10000名分の武器と甲冑が立花家、高城家の御用商人から簗田家御用商人達が買い付けします。一般的な取引所価格に輸送手数料が上乗せされた価格が加算されます。種類別に纏めて評価金額が出されて金額が決ます。
夕刻まで掛かりましたが取引総額が決まりました。
総額13000貫(13億円)と常陸国僧兵の未払金15000貫(15億円)が支払われ、古河公方家、簗田高助宛てに領収書が届けられました。
支払われた金額は大堀川陣営の立花義秀に知らされました。銭は日没前に大堀川陣営に届く事になりました。
「武器、甲冑が輸送費込みで13000貫!
常陸国僧兵の未払金回収が15000貫!
ぶははは!10000名の捕虜達の武器、甲冑より常陸国僧兵の手当てが高くついたか?」
「商人の評価は武器も甲冑も大量生産で良質な物が少なく、平凡な質であったそうです。中古品の取り引きですから高値にならぬ様にございます」
「立花家と古河公方家の武器、甲冑の質はかなり違う様だな、まぁ立花家が良質な武器と甲冑を使用してるのが判明しただけでも良いだろう。何より高城家の復興資金が手に入り、常陸国僧兵部隊に支払金が手渡せるなら上出来だ!」
「はい、松千代様が先手を打てと仰有られた事が運を引き寄せました。間も無く取引代金と常陸国僧兵の支払金を輸送部隊が運んで参ります」
「政家、簗田高助が常陸国僧兵部隊に未払金を支払った事を広めよ!
未払金が支払われた事実が常陸国内に知れたら火の手が上がるだろう?
簗田高助は簗田一族の不正問題の火消しに真剣に向き合う事になるぞ!」
「はい、手配致します!」
午後18時、日没前に大堀川陣営に輸送部隊が到着しました。取引代金と常陸国僧兵達の未払金が届きました。
立花義秀は大堀川陣営に高城家当主、高城義春と常陸国僧兵部隊主将、蒼空を招いて武器、甲冑の取引代金13000貫(13億円)と僧兵部隊へ未払の報奨金15000貫(15億円)を披露しました。
運ばれた現金を見せた後、対面の席に招かれた二人は鹿島政家から説明がありました。
「高城家には古河公方家に売り払った武器や甲冑の売却金と先日決定した支援金20000貫(20億円)の高額紙幣を用意致しました。高城家の方々は既に2年前からご利用なさって慣れていると思われますが、復興の為に自由に御使いください。
明日、居城の船橋城へ現金と紙幣をお届け致します」
「それは、なんとお礼を申して良いのか、誠に感謝申し上げます!」
高城義春が頭を下げました。
「それから、蒼空殿と僧兵部隊の方々は明日以降に発表される任地の城に報奨金と高額紙幣にて2000貫(2億円)を届けます。金銭管理の専門家を派遣しますので、彼らに管理を任せて任地にて生活必需品等諸々の用途に使って頂きます。
武器や武具など装備品、食料等は立花家から支給いたします。その他困った事は全て専門家を派遣して支援致しますので宜しくお願い致します」
「はい!過分な支援に伏して感謝申し上げます!我ら3000の将兵は立花家の為に全てを捧げる事を誓います!」
頭を下げる蒼空に未来を切り開く意欲が湧きました。
「蒼空殿、この地域に配置されると古河公方家との最前線で、北は筆頭宿老、簗田高助の領地であり、東に古河公方家の配下の大名、千葉家の領地になっています。
高城家と協力してこの地域の民を守り、治安の維持を任せる事になりますので、宜しくお願い致します」
「はい、こちらこそ、ご指導の程、宜しくお願い致します」
蒼空が覚悟を示しました、
最後に立花義秀が二人に語ります。
「先日の戦いで古河公方、足利晴氏を捕えて殺さず、簗田家高助の命もとらず、交渉で戦いを終えた事で、将兵の一部に不満の声が有るのは聞いているだろう」
高城義春、蒼空が頷きます。
「まず、足利晴氏を討ち取れば幕府を完全に敵に回す事になり、朝廷からも容認されず、利益より大きな損失になると判断した故、生捕りにして交渉で終戦に持ち込む事にした。
捕虜の足利晴氏には簗田高助が跡目を決めて晴氏の地位と命を奪うと諭して先に帰国させたのだ。
次に、簗田高助を殺さず、捕虜にもしなかったのは古河公方家が抱える全ての戦闘地域に停戦命令を出せるのは彼だけであり、交渉により高城家の領内から撤退させる方が利益が大きいからであった。
更に、簗田高助を常陸国の僧兵や国衆の報奨金未払問題に巻き込み、常陸国内の支配力を削ぐ為であったのだ。
既に簗田高助は僧兵達の未払金を支払った故、帰国した国衆5000の支払に応じなければ争乱は確実、支払いに関わる簗田一族の着服疑惑が浮上しており、まぁ、古河公方家は足利晴氏と簗田高助の対立と常陸国の争乱の種があり、暫くは内政に専念するしかなかろう。如何かな?納得されただろうか?」
「驚きました」
高城義春が呟き、蒼空は笑顔で頷きます。
対面を終えた二人は各々の軍勢の待つ宿営に戻りました。
もしも足利晴氏を討ち取ればどうなったのか?
足利晴氏を捕縛して罪人として都に護送していたら?
幕府と完全決裂して厳しい状況になったでしょう。晴氏を先に帰国させて正解?
さて、足利晴氏は簗田高助との対立が予想されます。簗田高助が帰国すると何かが起きる?




