1546年(天文15年)5月16日、終戦交渉合意!
立花義秀、簗田高助の最高権力者同士の交渉は義秀の優位に進みます。
1546年(天文15年)5月16日
立花家と古河公方家の終戦交渉は立花義秀が主導権を握りました。
義秀の思い通りの展開になり、簗田高助が次々に案件を承諾する流れになりました。
交渉は食事休憩を設けて中断すると、立花義秀が満面の笑みで休憩に入りました。
同席していた鹿島政家も表情が緩んでいます。二人は交渉内容を纏め、公式文書作成に取り掛かりました。
そこに松千代が現れました。
「お爺、足利晴氏を旗本達に託して、簗田高助よりも先に帰国させたら楽しくなるよ!」
「ぶははは!松千代?……有りだな!
簗田高助は晴氏を隠居させたがってる!
晴氏は公方の地位にしがみつくだろう?
政家はどう思う?」
義秀は鹿島政家の冷静な意見を求めました。
「殿!捕虜になっている足利晴氏の旗本達に簗田高助の企みを伝え、晴氏を彼らに与えて真っ先に古河城に戻れば、晴氏と簗田高助が対立します!
松千代様の仰有る通り、楽しくなります!」
「ぶははは!それだ!松千代!凄いぞ!
政家!晴氏の旗本の捕虜60名から半分の30名にに晴氏を託して急ぎ帰国させろ!馬を与えて深井城付近まで護衛を着けろ!簗田高助の野望を吹き込め!残りの30名の旗本の捕虜はまだ利用価値があるから残すぞ!
旗本を伝令に仕立て、深井城に知らせて晴氏の出迎えと護衛を要請させろ!
高助が暗殺する可能性が有りと伝えろ!
これで晴氏は古河城に辿り着けるだろう。
晴氏の側近に何時でも立花家に亡命するなら受け入れると伝えろ!」
「はい!手配致します!
深井城付近には宇都宮勢、足利晴氏の直属軍が居るはずです。合流すれば古河城まで安全に辿り着けるでしょう」
「お爺、停戦期日を設定するの?
8月迄とか、年末までとか?」
「ほぉ、それも良いなぁ、年内は停戦になれば房総半島、柏周辺や川越等の被災地の復興が進むぞ!打診してみる価値はある!」
「お爺、晴氏は結局地位を失うけど、古河公方家の内部に簗田一族に対する反感を育てる事になる。常陸国の僧兵達と国衆の未払い問題も熱くなりそうだよ。」
「ぶははは!松千代には見えてるのか?
不動明王様が教えてくれたのか?」
「お爺、不動明王様の声が聞こえた。
頭の中に入って教えてくれたよ。」
「そうか、先月は川越で百済神社の神様に出会い、今回は不動明王様か…不思議だな?」
「お爺、不動明王様は将広(立花将広)のお爺の守護をしてるから、今は近くに来たから松千代に教えてくれたよ。」
「そんな事があるんだな、それなら俺の守護は誰なんだ?見えるだろう?」
「キャハハハ!見えませーん!
必要無い事は見えないみたいだよ。
でもねぇ、少なくともお爺、父上、松千代の守護神は大國魂の大神様に間違い無し!
だって、大國魂神社に呼ばれて大神様と源義家公に立花家を託されたでしょう?
出雲大社の大神様であり、日本国創世の神様が守護神様だよ!」
「そうか!安心したぞ!大國魂の大神様が我が守護神様、出雲大社の大神様であり、日本国創世の神様が守護神様なんだな!」
「お爺、安心しても善いけど、慢心したら神様から罰があるからね。」
「ぶははは!わかった!気を緩めぬぞ!
まるで孫に説教されてるみたいじゃな?」
休憩が終わり、立花義秀、鹿島政家、簗田高助と終戦交渉が再開しました。
梁田高助は立花家の捕虜になった足利晴氏の処遇について迷いましたが、引き取る事を決めていました。晴氏返還の見返りに何が要求されるか不明ですが、晴氏を受け取らぬ回答をした場合に非難を浴びる事や、都に護送されて謀叛人として裁かれる事を恐れました。
立花義秀が口火を切ります。
「簗田殿、足利晴氏殿の事だが、本人がなぁ、早く帰国したいと希望した故、護衛を付けて帰国させた。
今頃は宇都宮勢、足利晴氏の直属の軍勢と合流しているはずだ。
手間を取らせたが、許されよ!」
「はぃ?…帰国させた?」
出鼻を挫かれ、唖然とする簗田高助…
立花義秀に仕掛けられた罠だと悟りました。
「それは…感謝申し上げる…」
足利晴氏に罵声を浴びせた事や、立花義秀に無用の公方と態度で示した事を後悔しました。
「それからなぁ、古河公方家が里見家の反乱に介入した際に雇われた常陸国、僧兵と国衆の報酬未払い問題だが、下総公方家、足利晴宗殿と貴殿の弟、簗田直助殿の手配で常陸国の大掾家の一族、大掾正興殿が調査を命じられたそうだな、我が弟の立花将広から知らされたのだがな、大掾正興殿は鹿島神宮の支援を取り付けて調査中との事、不正は必ず暴かれるだろう」
簗田高助は千葉家から大掾正興が調査に向かった事を知らされていました。
その報告の中に立花将広と下総公方、足利晴宗と簗田直助の癒着疑惑が報告されていました。
両軍の兵士が相撲大会で交流した事案があり、立花将広の軍勢が下総公方家の領内通過を黙認した結果、千葉家の軍勢が大敗した事が報告されています。
その立花将広の軍勢が柏の主戦場に到着した為、古河公方軍の優位が崩れ敗戦に繋がりました。
簗田高助の頭の中に弟、簗田直助が足利晴宗を次期古河公方に推戴を企む噂を思いだしました。敗戦の悔しさ、弟への疑念、報酬未払い問題……古河公方家の最高権力者、簗田高助は一気に疲労を感じました。
負傷した胸の傷口は塞がり、出血は止まりましたが、微熱が頭の働きを鈍らせています。
「さて、このひと月余り、立花家、古河公方家の両軍は戦い続けたが、8月末日迄か、12月の末日まで停戦をせぬか?
貴殿も戦の後始末を取り仕切るのも大変だろうな?12月末日迄の停戦でどうだ?」
「12月末日迄の停戦に同意する!」
簗田高助が同意した事により両軍の終戦交渉の内容が決まりました。
やがて主導権を握る立花義秀から交渉内容を記載した公式文書が提示されました。
義秀は内容を確認して同意するなら署名を求めました。
簗田高助が内容を確認して署名しました。
続いて立花義秀も署名して交渉が成立しました。
交渉が終わり、簗田高助は帰陣しました。
義秀、鹿島政家がお茶を啜り、談笑していましす。
「楽しい交渉だったぞ!」
「簗田高助が終始悔しそうな顔でございました」
「古河公方家では最高権力者だろうが、鼻をへし折ってやったぞ!」
「はい、痛快にございます!」
「実はなぁ、足利晴氏を帰国させずに罪人として捕らえ、都に護送してみたかったがなぁ、堺の湊で朝廷に歯向かった罪人として公開した上に、都まで行軍して朝廷に裁いて戴くのだ。但し、室町幕府から反感を買うだろう。
しかし、危ない橋を渡らずに護送に代わる事を思い付いたのだ!」
「殿、それで終戦の合意文書が三枚だったのは理由がありますかな?」
「ぶははは!当たりだ!
立花家、古河公方家に加えて、高城家に渡す為と称して三枚に署名させたが、三枚目の文書は都の朝廷に提出して古河公方家の犯罪の立証に使わせて貰う!」
「お爺!凄い!かっこいい!」
松千代がやって来ました。
「ぶははは!立花家は朝廷の為に戦っている事を示さなければ官軍を名乗れぬからな。
朝廷の後ろ楯があれば、古河公方家の後ろ楯の室町幕府が怒っても立花家に手出し出来ぬからな!今は幕府と古河公方家は仲間割れの状態だが、利害が一致すれば手を結ぶから油断が出来ぬぞ!」
「お爺!やっぱりかっこいい!
今の室町幕府将軍、足利義晴は近江坂本に逃れてるから、史実通りなら間も無く嫡男義輝が次の将軍になりそうだよ!」
「松千代、あの剣豪将軍か?
やがては松永久秀に討たれるのだな?」
「お爺正解!義輝は10歳で将軍になるから、権力を握るのは管領の細川晴元なんだけど、三好長慶に地位を奪われるはず、幕府は権力争いで更に酷くなるはずだよ」
「それで織田信長の台頭に繋がるのだな?」
「史実通りなら予測出来るはずだけどね、朝廷は立花家が管理する近衛家、九条家の荘園の収益と立花家からの献金で史実よりかなり裕福だから、微妙に歴史の流れに変化があるかも?将軍継承問題や幕府の政治に介入する事になれば流れが変わるかもしれないよ」
「ほぉ、そうだな、上方の状況も把握しながら関東を制覇しなきゃならんなぁ」
笑顔で会話する義秀と松千代との会話…
立花家親子三代の転生の秘密を知る鹿島政家には少しだけ理解出来る会話なのですが、その他の側近や護衛の兵士達には理解不能の会話が続きました。
「父上!遅くなりました!
只今到着致しました!」
立花家嫡男、立花義國が軍勢を率いて大堀川陣営に到着、陣営周辺にはその他の立花軍が集結、簗田親子の軍勢を包囲する様な形になりました。
泥酔軍師、立花将広が巻いた謀略の種が下総公方家を通じて常陸国に撒かれました。
下総公方家の多数の兵士が立花家に対して敵意を失いました。常陸国に帰国した大掾正興、常陸国の僧兵、国衆も立花将広の人柄に触れた事により、立花家に対する敵意が消失しています。常陸国で波乱が起こりそうです。
終戦交渉が合意に至り、成立しました。
松千代と義秀は古河公方軍の撤退が完了するまであと数日は滞在しなければなりません。
それから岩槻太田領へ向かい、後始末が待っています。




