１５４６年(天文１５年)５月１６日、大堀川陣営の攻防戦！
簗田高助は和議の提案をした息子を騙してでも立花義秀を討ち取る事に執念を燃やしています。
１５４６年(天文１５年)５月１６日
簗田高助、晴助親子は大堀川方面に向かう為、各々軍勢を率いて高田城から西へ移動しました。父、高助の軍勢５０００は守谷街道を進み、嫡男、晴助の軍勢６０００は諏訪道方面へ進みました。
簗田親子が立花家に和議を申し入れる事は極秘扱いとされ、西へ向かう将兵は立花義秀の軍勢と戦う決意を固めて、士気が高い状態にありました。
馬に乗りながら簗田高助は何か思考を巡らしている様子でした。
「殿？本気で立花義秀に和議を申し込みますか？」
簗田高助の側近が尋ねました。
「うむ、晴助が冷静に和議を進言するとはな、正直驚いた…だがな、和議となればひと月掛かって占領した地域の大半が机上で決めた事で失われる！
晴助の判断は正しいが、血を流して勝ち取った将兵の努力を無にしてしまう…」
「殿、和議に同意なされましたが…」
「ぶははは！先鋒部隊が戦いに巻き込まれたら戦うしかあるまいぞ！
「殿…」
「僅か一里(４キロ)先に立花義秀が居るんだぞ！しかも手勢は２００００程度！
こんな機会はもう無いかもしれぬ！
晴助には悪いが、戦うぞ！」
やがて先鋒部隊から報告が入りました。
大堀川陣営北側にて、立花軍、佐伯勢と野田勢が戦闘中、野田勢が劣勢との報告です。
「伝令だ！先鋒部隊２０００は野田勢の救援に向かえ！
それから晴助に伝令だ！
こちらの先鋒部隊が佐伯勢と交戦中！
和議の余地無し！
大堀川陣営を攻撃せよ！
以上だ！」
伝令が駿馬を飛ばして駆け抜け、簗田晴助に父親、高助からの指令を受けました。
「なんだと！親父の奴！
ぶははは！仕組んだな？
狸親父め！やはり戦いに持ち込んだか！
ならばやれるだけの事はやるぞ！」
簗田晴助は大堀川方面の状況把握の為、多数の斥候部隊を放ちました。
この頃、簗田晴助の妨害工作の影響で遅れていた畠山勢１２０００の援軍がが陣営の南側の戦場に到着、瀬沼勢と協力して宇佐美勢を押し込んでいました。
その隙を突いて真言宗勢６０００が諏訪道沿いに進撃していたその時、簗田高助、晴助親子の軍勢接近の知らせが大堀川陣営に入りました。
─大堀川陣営─
─立花義秀、鹿島政家─
「単なる撤退じゃなかったな…簗田高助！
息子の軍勢までこちらに向かっているだと？ぶははは！やってくれるじゃないか！
敵ながら見事だ！
政家、畠山勢に状況を知らせて陣営付近まで呼び寄せろ！
追撃させた騎馬隊１０００も呼び戻せ！
「はい！手配致します！」
義秀は敵襲に備えて陣営の迎撃態勢を強化しました。接近する敵には圧倒的な数の弓矢で対抗する準備が整えられました。
そこに龍魂の軍旗を掲げた軍勢が現れました。瀧川道真率いる立花水軍衆５００が花輪城からやって来ました。
陣営の物見台から松千代が手を振ると水軍衆が手を振ります。
「エイ！トウ！エイ！
エイ！トウ！エイ！
エイ！トウ！エイ！
エイ！トウ！エイ！」
気合いが籠った声を上げています。
松千代は物見台から義秀の処まで走りました。
「お爺ぃー！水軍衆を呼んだよ！
火薬玉と松戸城から弓矢の輸送を頼んだよ！」
「おぉっ！なんと嬉しいじゃないか！
火薬玉に弓矢か、有難いぞ！」
陣営内に水軍衆５００が到着、主将の瀧川道真から火薬玉８０発、馬車と人力で弓矢３５０００本を運んだ事が判明しました。
しかも水軍衆全員が弓矢を扱い慣れています。火薬玉の専門家であり、貴重な戦力増強になりました。
義秀は瀧川道真と対面します。
「良くぞ、駆け付けてくれた！
なんと火薬玉に加え、大量の弓矢を運んでくれたお陰で弓矢不足の心配が無くなったぞ！」
「ははっ！松千代様から依頼がございました。この陣営の南に諏訪神社がありまして、そちらの諏訪の神様からお告げがあったからだと伺いました。」
「夢のお告げか？縁起が良いぞ！
松千代を呼べ！」
松千代が呼ばれ、義秀が夢のお告げの経緯を尋ねました。
「お爺、それはね、陣営のすぐ近くにお諏訪様が見えたからお参りに行きました。
少し荒れていたから宮司さんに寄進を申し入れ、護衛の兵士と一緒にお掃除してお参りしたら夢のお告げがあったけど、お爺に黙ってたのは水軍衆にお願いしてもダメかもしれないから、だけど届けてくれたから、瀧川道真殿と水軍衆の皆さんの協力に感謝致します！」
「ぶははは！夢のお告げがあったのだな？」
「はい、ありました。お爺、諏訪の神様が境内の掃除と寄進のお礼に参られ、火薬玉と弓矢が不足するから、花輪城の水軍衆に頼みなさいと教えて頂きました！」
「ぶははは！松千代は寄進までしたのか？
ならばこの戦いが終わったら諏訪神社にお参りして多額の寄進をせねばならん！
まずは勝利するぞ！
気合いを示せ！」
義秀が将兵に呼び掛けました。
「エイ！トウ！エイ！
エイ！トウ！エイ！
エイ！トウ！エイ！
エイ！トウ！エイ！」
腹から絞り出す気合いの声が上がりました。
援軍５００に火薬玉と大量の弓矢が届き、大堀川陣営内の士気が高まりました。
「お爺、陣営内の兵士は長槍隊も他の兵士も弓矢の扱いは出来るよね？
二刀流が出来るでしょ？」
「あぁ立花軍の兵士は全員出来るぞ！
そうか！予備の弓を与えて全員が弓矢を放てば桁違いの破壊力になるぞ！
政家！聞いたか？
長槍部隊にも弓を与えて二刀流だ！
長槍を側に置いて弓矢を放ち、いざ、出番には長槍に持ち変えて出撃だ！」
「はい！二刀流！手配致します！」
「松千代！凄いぞ！
予備の弓に目をつけたか？
それなら全部で３０００張を越えるぞ！」
「殿、元気陣営内に居る３７００の将兵に行き渡るほど、予備がございます」
側近が予備の弓を含めた数量を伝えました。
「わかった！敵を陣営に引き付けろ！
弓矢を浴びせ、火薬玉を喰らわせろ！
決して陣営内に入れるな！」
陣営内の防備が強化されました。
古河公方軍は大堀川陣営の北から簗田高助の軍勢５０００が接近します。
陣営の南からは真言宗勢６０００が諏訪道を進み陣営に迫りました。
簗田晴助の軍勢は進路に障害物があり、先鋒部隊が障害物を退けながら進みました。
やがて鹿島勢の伏兵に襲撃されて順調に前に進めない状況となりました。
攻める古河公方軍は２７０００、守勢の立花軍は３３０００の軍勢が集結、両軍合わせて６０００の軍勢が大堀川陣営を巡り、戦いが激しくなりました。
簗田晴助の軍勢は両軍の戦場をすり抜けて大堀川陣営を目指していました。
しかし、周囲は戦場で、田畑や平原は戦場になっています。
周囲の戦況を確認しながら進みます。
やがて各地から報告が入りました。
─簗田晴助、側近─
「若殿！先鋒部隊から知らせが参りました。
進路に障害物があり、伏兵に邪魔されています。脇道にも障害物があり、こちらも戦闘中です！」
「田畑から回り込めないのか？」
「あの辺りの田畑で綾部勢が敵の鹿島勢と戦闘中です。綾部勢を支援して突破するしかございません！」
「南側の進路に代えてはどうだ？」
「あちらには真言宗勢が諏訪道から進み、戦闘中で混雑しています！
物見からの知らせでは、田畑にも兵士が溢れており、我が軍勢がそちらを進むのは難しいと思われます。
更に南の地域に宇佐美勢が居るはずですが、未だ物見からの情報が有りません。
南方からの情報は少なく、状況が不明です！」
「決めたぞ！一番近くに居る綾部勢を支援して鹿島勢を崩して大堀川陣営に向かうぞ！
全軍に伝令だ！
綾部勢を支援する！
敵の鹿島勢を倒せ！」
簗田晴助の軍勢６０００は綾部勢を支援に向かいました。鹿島勢５０００と綾部勢、簗田晴助の軍勢８０００との戦いが始まります。
大堀川陣営北東では、簗田高助の軍勢が攻勢を仕掛けていました。
「後一息！佐伯勢を崩したら大堀川陣営に攻撃するぞ！伝令だ！中軍１０００！佐伯勢を崩して参れ！」
簗田高助の指示に伝令が走り、中軍の出撃を伝えました。
野田勢５０００と簗田勢２０００が佐伯勢７０００を挟撃している状況で、簗田勢に中軍１０００が加わります。
立花軍、大堀川陣営の展望台から監視兵がその様子に気付き、義秀に知らせます。
─大堀川陣営─
─立花義秀、鹿島政家─
「まずいな、政家、騎馬隊１０００は帰還したのか？」
「はい、帰還しております。出撃可能です！」
「よし！騎馬隊１０００は佐伯勢を援護せよ！」
大堀川陣営から騎馬隊１０００が出撃しました。５０騎ずつ纏まり、移動しながら弓矢を放ち、連射で簗田勢の一角を崩します。
標的を３０mから５０m先に設定すると、三連射して移動を続けます。
５０騎に狙われた兵士達に４５０本の弓矢が集中すると負傷者が続出します。
立花軍の騎馬隊は簗田勢に容赦無く連射を続けて移動します。
簗田勢先鋒部隊は佐伯勢を攻撃する余裕が無くなり、騎馬隊からの攻撃に防戦一方になりました。
簗田高助は対策を迫られました。
先鋒部隊を救わなければ大堀川陣営の攻撃など不可能です。
更に手元の軍勢２０００を投じても敵の騎馬隊は手強く、簗田勢に強力な騎馬隊がありません。危険な賭けを決断します。
「火を放つぞ！全軍に伝えろ！
この辺りの戦場の枯れ草に火を放て！大堀川沿いの枯れ草にも火を放て！
出来るだけ広範囲に火を放て！
馬が火を怖がるはずだ！
急げ！火種を撒き散らせー！」
簗田勢が大堀川周辺で広範囲に火を放ちました。少しずつ煙が上がり、やがて数ヶ所で火の手が上がりました。
簗田高助は広範囲に火を放ち、局面打開を目指します。戦いの流れが変化しそうです。
