１５４６年(天文１５年)５月１５日、高柳ケ原の激闘！
古河公方軍を牛耳る簗田高助は高柳城本陣に周到な準備をしていました。
主力決戦が始まります。
１５４６年(天文１５年)５月１５日
この日の主力決戦の為、古河公方軍の実質的な総大将、簗田高助は主戦場の西方の要衝、深井城から大堀川陣地方面に立花義秀の軍勢を導き、主戦場の東方の要衝、小野田城に立花将広の軍勢を誘い、藤ケ谷城方面に行かせて主戦場に集う立花家の兵力を分散する事に成功しました。
─主戦場、立花軍決戦兵力─
立花義國勢７０００
本多広家勢９０００
畠山忠國勢１３０００
合計２９０００
─古河公方軍決戦兵力─
足利晴氏勢２０００
簗田高助勢６０００
野田弘明勢５０００
合計１３０００
─古河公方軍、伏兵１２０００─
真言宗勢８０００
簗田晴助勢４０００
総計２５０００
古河公方軍は主戦場の奥に伏兵を配置しています。伏兵の活躍次第で戦いが左右される状況にありました。
立花義國が率いる軍勢は正午過ぎてから宿営陣地を出発しています。
敵地の高柳城本陣周辺に到着してから軍勢を整えて、戦いの陣形を組んだ頃には午後１５時を過ぎていました。
古河公方軍の高柳城本陣は城の東西に柵が組まれ、その北側に宿営陣地を配置しています。立花義國の軍勢が東、本多勢が西、畠山勢が北側に回り込み攻撃を開始しました。
「掛かれー！」
「北側へ回り込めー！」
指揮官達が叫びます。
立花義國は正面攻撃を避けて一気に高柳城本陣の北側に攻撃を集中しました。
立花義國の作戦は高柳城の東西に並ぶ防御柵に対して東へ２０００、西へ２０００の牽制部隊を残して北側へ２００００の軍勢を進ませて攻撃を集中しました。
古河公方軍は想定外の攻撃に混乱します。
正面から迎撃する想定で兵力を集中してる為、急に配置変更すると混乱を招きます。
簗田高助は釣り野伏せを仕掛ける準備をしていました。高柳城本陣を犠牲にして退却を偽装、背後に潜ませた伏兵に反撃させて包囲する策を準備していました。
ところが、立花軍が北側に兵力を集中した為、簗田高助の軍勢と古河公方、足利晴氏の軍勢がいきなり包囲されて苦しい状況になりました。
「しまった！釣り野伏せに仕掛けるつもりが先に包囲された！
伝令だ！背後に控えた真言宗勢と藤ケ谷城の北に控えた晴助(嫡男、簗田晴助)の軍勢に伝令だ！攻撃開始せよ！と告げて参れ！」
側近達が慌ただしく伝令を走らせます。
簗田高助は立花軍を引き付けながら後退して高柳城から少しずつ北へ導き、背後に控えた伏兵に包囲させるつもりでした。
開戦直後に自分達が包囲され、伝令が無事に急報を伝達出来るか？
一刻を争う状況になりました。
簗田高助が用意した防御陣地の裏側に防御柵がありません。立花軍は無防備な古河公方軍に弓隊と騎馬隊からの弓の連射を浴びせました。急遽盾兵を並べて防御しますが、連射される弓矢は上空と水平射撃の連射に圧倒されます。盾の守りの手薄な場所に連射が集中します。崩れた部隊に更なる連射が浴びせられて１３０００の古河公方軍は包囲されて窮地に陥りました。
立花軍の長槍隊が突入すると古河公方軍は一方的に崩れました。
「我が策は破れた…もうダメなのか…」
簗田高助は自分の策に自信を持っていましたが、立花義國の奇策に負けた…と諦めかけた時、後方に控えていた真言宗勢８０００が戦場に到着しました。
「援軍が来たぞー！」
「反撃だー！」
古河公方軍の指揮官達が叫びます。
ようやく包囲されていた状況が回復の兆しを見せました。
そこで足利晴氏の軍勢が包囲の一角を突破に成功しました。
旗本に周囲を守られて晴氏が脱出します。晴氏は包囲された恐怖から脱出を焦っていました。騎馬５０騎と槍隊２００程の兵士に囲まれて北へ走り、後続の部隊が晴氏を追いかけて行きます。
「古河公方、足利晴氏殿！北へ逃げたぞー！」
「捕らえろー！生捕りせよー！」
「生捕りしたら城持ちになれるぞー！」
立花軍の兵士達は立花家の報奨が桁違いに太っ腹と知っています。
立花義國の軍勢は義國の命令を待たずに追撃を開始しました。
─高柳城東、立花義國本陣─
立花義國へ兵士達が勝手に追撃していると報告が入りました。
「なんだと！馬鹿な！」
そこに簗田高助の軍勢が晴氏の軍勢を追いかけて北へ向かったと急報が入りました。
「追撃だー！簗田高助！足利晴氏の二人を生捕りにするぞー！
伝令を出せ！全軍に告げよ！
簗田高助、足利晴氏が北へ逃亡！
追撃せよ！」
側近達が次々に伝令を走らせました。
足利晴氏が包囲された恐怖から簗田高助に無断で脱出してしまいました。
簗田高助は晴氏を守る為に軍勢を率いて追いかけました。
簗田高助と足利晴氏を追撃する立花義國の軍勢と配下の本多勢、畠山勢は援軍に現れた真言宗勢の襲撃を突破して簗田高助、足利晴氏の軍勢の追撃に加わりました。
高柳城の北には田畑や原野が広がる高柳ケ原と呼ばれています。
逃げる足利晴氏の軍勢と追いかけて守ろうとする簗田高助の軍勢と野田弘明の軍勢、
足利晴氏の軍勢を追撃する立花義國の軍勢、配下の本多勢、畠山勢、さらに古河公方軍の援軍に現れた真言宗勢が加わりました。
逃げた足利晴氏の軍勢は立花義國の軍勢に厳しく追撃を受けて窮地に陥りました。
しかし、簗田高助から急報を受けた嫡男、簗田晴助の軍勢４０００が高柳ケ原に駆けつけると、晴氏を無事に保護するに至りました。
「エイ！トウ！エイ！
エイ！トウ！エイ！
エイ！トウ！エイ！
エイ！トウ！エイ！」
戦場に簗田晴助の軍勢が気勢をあげました。
古河公方軍全軍の士気を高める声が届き、簗田晴助の軍勢が前進します。
反撃が始まりました。
簗田晴助の軍勢が北から現れ、蓋をする形になり、古河公方軍２５０００が立花義國と配下の軍勢２９０００を包囲する形になりました。立花軍は防御に徹して弓矢、騎馬隊の騎射を使い、接近させない徹底防戦を続けました。古河公方軍は僧兵部隊に犠牲を厭わず、接近させて肉弾戦を図ります。蒼龍部隊の棍棒、金棒の破壊力を利用して立花軍を苦しめようと厳しい攻撃を敢行しました。
時刻は日没直前を迎えました。
そこに、藤ケ谷城方面から進む吉良頼貞の軍勢４０００は高柳城付近から北へ進路を向けて我孫子方面に進んでいました。
１キロ程先では古河公方軍と立花義國の軍勢が交戦中と判明します。
「援軍到着を報せるぞ！
掛け声をあげろー！」
「エイ！トウ！エイ！
エイ！トウ！エイ！
エイ！トウ！エイ！
エイ！トウ！エイ！」
吉良勢４０００の到着を報せる声が戦場に響きます。
「掛かれー！」
「突き崩せー！」
吉良勢の指揮官達が叫びます。
南から吉良勢が攻撃を開始しました。
簗田高助の想定から外れた戦いになりました。しかし、結果的に釣り野伏せの形になり、古河公方軍が優勢のまま戦いが続きます。
