1546年(天文15年)5月15日、古河公方軍、簗田高助の秘策始動!
松千代と義秀が大堀川の陣営に到着しました。
古河公方軍の大堀川陣地は陥落、味方の軍勢が追撃中と聞きましたが、急報が届き、敵の反撃が始まりました。
1546年(天文15年 )5月15日
立花義秀は花輪城から松千代を連れて出発すると、1里半(6キロ)離れた敵軍の大堀川陣地方面に向かいました。
1時間半ほどで義秀の軍勢は大堀川陣地の戦場に到着しました。
古河公方軍、曹洞宗勢、瀬能勢11000が守っていた大堀川陣地は陥落しており、敗走した敵を追撃して佐伯勢10000、鹿島政勝の5000の軍勢が追撃しており、陣営には鹿島政家の4000が待機していました。
「殿!松千代様!宇都宮勢4000の軍勢を粉砕したと聞きました!
ご無事で何よりで御座います!」
「政家、松千代が4000の敵を1000の軍勢で翻弄しておったぞ!
少し手伝ったら敵は総崩れになったぞ!」
「殿、それは何より喜ばしき事に御座います。
こちらは陣地を攻略致しました。
現在、佐伯勢と嫡男政勝の軍勢15000が敵を追撃中に御座います。」
「おぉ、皆の奮闘に感謝するぞ!
さて、日暮れも近いから撤収せよ!」
「はい、すでに伝令を出しております。
間も無く引揚げて参ると存じます」
時刻は17時半過ぎ…この時期の日没は18時半頃になります。
立花義秀と松千代達は慌ただしい1日が終わりに近づき、やっと落ち着きました。
そこに急報が入ります。
曹洞宗勢を追撃していた佐伯勢が敵の援軍に奇襲を受け、曹洞宗勢も反転して包囲されたと報告されました。
義秀は直ぐに地図を確認します。
陥落した大堀川陣地の東に3キロ先に高田城がありました。援軍が潜むには最適な場所でした。
しかし、立花義秀は鹿島政家に命じて事前に高田城の兵力を調べてあり、援軍が隠れている兆候がありませんでした。
「迂闊だった!政家、その先に松ケ崎城だ!
高田城に潜むと我らに気付かれるから、その先の松ケ崎城に隠れてたのだろう…」
義秀が呟きました。
「殿!昼過ぎに松千代様の伝令から知らせがあった古河公方軍の援軍!?
新たに現れた援軍に違いありません!」
「ならば、佐伯勢を救うには大回りだが、北から騎馬隊で向かうのが良かろう!
誰に任せるかだが…」
「殿、追撃を命じた私に責任が御座います!
騎馬隊3000を私にお任せ下さい!」
義秀の留守を任された鹿島政家が責任を感じて申し出ました。
「政家!頼むぞ!騎馬隊3000を託す!
佐伯勢を頼む!」
「はい!行って参ります!」
鹿島政家が救援の騎馬隊3000を率いて出撃しました。
見送る義秀に松千代がやって来ました。
「お爺!政勝にぃ(鹿島政家嫡男、鹿島政勝)が追撃して帰りが遅いよ!
迎えを出さなきゃ心配だよ!」
その時、伝令の兵士から鹿島政勝の軍勢が敵の反撃に晒され、包囲されたと知らせが届きました。
「やられた!佐伯勢も政勝も簗田高助の策にやられたぞ!助けに参るぞ!」
そこに松千代の護衛、瀬沼信勝が前に出ました。
「殿!私が参ります!
私も宿老の嫡男にございます!
同じ宿老の嫡男、政勝の軍勢を救いに参ります!殿は本営にて采配を取る必要がございます!」
「わかった!
瀬沼信勝!兵力1000を託す!
鹿島政勝の軍勢を救って参れ!」
立花義秀は瀬沼信勝を送り出すと松千代の護衛、藤原家長に軍勢1000を与え、佐伯勢の進路を追いかけ、退却を支援して帰還するを事を命じました。
藤原家は武蔵国府の国司の家系です。
立花家と大國魂神社の大宮司、猿渡家の家祖の家系として一門親族の高い地位にありました。義秀は彼にも一門を代表して戦う機会を与え、将来、松千代の支えとなる武将に育って欲しいと願いました。
次に松千代の護衛、一門親族の日奉宗政を呼び出し、兵力1000を与え、佐伯勢と鹿島勢の帰路に篝火と松明を用意して日没後の闇に迷わぬ為に灯りを備えさせ、帰還する兵士を導く事を命じました。
篝火や松明だけでは闇夜の灯りは足りません。日奉宗政は兵士達に命じて枯れ草や、周囲の家屋から木材や可燃性の材料を調達して道沿いに灯りを用意しました。
やがて日没となりました。
大堀川の陣営に多数の篝火が周囲を照らし、連なる道筋には篝火、松明や焚火の灯りが照らされ、義秀と松千代は味方の兵士達の帰還を待ちました。
「お爺、父上達の知らせが無いけど、大丈夫かなぁ?」
「おぉ、そうだな、もうすぐ知らせが来るだろう。心配いらんさ、大丈夫だろう」
義秀は少し不安ながら、松千代に心配させない為に気を使いました。
松千代に言われて心配になり、近習に高柳城の攻防戦の情報収集を命じました。
最後に松千代が呟きました。
「あのねぇ、お爺、夢でさぁ、将広爺(立花将広)に頼んだからきっと父上(立花義國)の軍勢は大丈夫だよ…」
「んん?…夢で頼んだ?…」
義秀は考え事で精一杯…松千代の言葉の意味を理解出来る余裕がありませんでした…
古河公方軍の反撃が始まり、日没となりました。援軍を出して、松千代と立花義秀は味方の帰還を祈ります。
松千代の父、立花義國は簗田高助が率いる軍勢と主力同士の決戦をしています。
松千代と義秀に情報が入らず、全体的な戦況が掴めていませんでした。




