1546年(天文15年)5月11日、立花将広の魔術発動!
先月の和議で対面して以来、簗田直助、大掾正興と久々に顔を合わせます。
泥酔軍師、立花将広の魔術が発動します。
1546年(天文15年)5月11日
立花将広宛てに山入義友から連絡が入りました。簗田直助と対面、要望に対する回答は保留、夕刻に回答する事になり、昼食と夕食の提供を取り付けた事が報告されました。
さらに小弓城から簗田直助が立花将広の陣営に訪問すると連絡がありました。
─上総公方家領、市原城─
─立花将広、嫡男、立花頼将─
「ぶはははは!想定内の反応だな?
笑いが止まらんぞ!すでにこちらの掌に乗って来たぞ!」
「父上?また何か企んでますね?」
「企んでるぞ!今回は青梅から取り寄せた幻の銘酒、大吟醸、女神の涙と、新作焼酎、桜霧島を呑むぞ!ツマミも厳選してあるから心配するな!」
「父上!泥酔する前に要点を決めて合意して下さいね!聞いてないぞ!などとなれば後始末が厄介になります。」
「ぶはははは!心配するな!
それより、兵士達に相撲合戦をやらせろ!
部隊毎に5名の代表を選んで団体対抗戦だ!
勝った方に賞金10貫(100万円)出すぞ!
地面に棒切れで線を引いて土俵を20箇所作れ!勝ち組に即金払いする!
房総半島を1ヶ月転戦した兵士達は本当は疲れてるはずだが、兵士達は目の色変えて戦うだろう。
簗田直助達に立花家の軍勢は元気があると印象付けるのが目的だ!
博打も許可する!
太鼓を叩いて盛り上げろ!
手分けして直ぐに取りかかれ!」
「はい!直ぐに支度致します!」
立花将広は房総半島を転戦中、嫡男の頼将に軍勢を率いる武将の心得から、補給路の確保や、補給部隊の指揮や、食事の手配等の裏方の仕事までやらせて鍛えていました。
やがて、簗田直助が大掾正興を伴い市原城に到着しました。
城外では立花家の軍勢が甲冑を装着した相撲で盛り上がっていました。
太鼓が鳴り響き、歓声が上がります。
「エイ!トウ!エイ!
エイ!トウ!エイ!
エイ!トウ!エイ!
エイ!トウ!エイ!」
掛け声が上がり、勝者達に賞金が渡されて大いに盛り上がっていました。
立花将広は市原城の本丸最上階に彼らを招きました。
市原城からは小弓城、鎌取城や周囲に配置された下総公方家の軍勢や支城の幾つかが丸見えになっていました。
市原城の東に4キロ先に上総公方家の潤井戸城が築城中です。さらに東に3キロに築城中の瀬又城を紹介しました。
─立花将広、簗田直助、大掾正興─
「ご覧あれ、潤井戸城の辺りには新納勢9000、瀬又城付近に吉良勢8000を配置しております。市原城付近に我が軍勢13000が滞在中で、合計30000。
今は退屈な兵士達に相撲合戦をやらせている。今は貴殿達と戦うつもりが無いが、しかし、常陸国の兵士達を帰国させる為、貴殿達には古河公方家が抱えた課題を支える必要があるだろう?
古河公方家の為に正々堂々戦い、異国の地にて捕虜になった兵士達に罪は無い故、こちらまで連れて参った。
今後の支援を貴殿達に託し、5000の兵士を郷里の家族の元へ無事に送り届けて頂きたいのだが、如何であろうか?」
「はい、本日は常陸国の軍勢に昼食と夕食の提供を約束します。
明日には利根川を船で渡れる様に手配致します。それから、古河公方家が報酬の未払いが有るとの事ですが、我が兄、古河公方家の筆頭宿老、簗田高助から常陸国の軍勢には支度金の名目で先払いにて半額支払い済みで、帰国後に残りの支払いと成果報酬が支払われると聞いておりますが?」
「ほぉ、それは常陸国の兵士達から聞いた事と異なるぞ、常陸国の兵士達を搾取した疑いは晴れぬ!さぁ、簗田殿なら解決方法を見つけて下さらんか?
大掾殿は如何かな?」
二人には立花将広の罠に掛かりました。
古河公方家の未払いの肩代りをするのか?
未払い金の対応策を示さない限り、立花将広が納得せず、小弓城が攻撃されるかもしれません。
大掾正興にも、良い方法が見つかりません。
「はい、…それは…立花様!貴方の知恵を貸して頂けませんか?」
「ぶはははは!大掾殿、それなら二人の時間を借りるぞ!酒だー!
用意したツマミと酒を持って参れ!
我々三人で答えを考えるぞ!」
「それは…!」
大掾正興は一枚上手の立花将広を止められません。
立花将広は最初から酒を呑むしか無い状況に持ち込むつもりでした。
小姓と給仕の侍女達が青梅の清酒、大吟醸、女神の涙、新作焼酎、桜霧島を運び、盃に注ぎます。
「さぁ呑め!乾杯だ!ツマミも上手いぞ!
小籠包は熱いから気をつけろよ!」
やられた…抵抗も出来ずに苦笑して目配せする簗田直助と大掾正興は諦めて呑み始めました。青梅の酒蔵から取り寄せた清酒、女神の涙は一口呑むと、ほのかに甘い香りが鼻腔に満ちて甘口ながら、最後に清涼感が残る不思議な清酒でした。
手羽先、焼鳥、唐揚げが運ばれ、薩摩国から取り寄せた桜霧島は甘口のとろみ、桜の花の香りが特徴の極上品です。
ツマミのコロッケ、ポテトフライが食欲をそそり、清酒と焼酎を交互に呑みながら三名は常陸国の兵士の支援策を考えました。
立花将広は冗談交じりの対策を語ります。
「実はな、上総公方家から打診があったのだが、茂原周辺の管理には手が足りぬから立花家の軍勢を常駐配置をするか?佐竹義廉に所領として与えるか?常陸国の軍勢が帰国困難なら茂原周辺で預かるのも良いと申し入れがあるのだが、もう面倒だから立花家が全部報酬を立て替えても良いぞ!
しかし、立花家が立て替えたら常陸国の兵士達は古河公方家から離反するだろう。
こちらには佐竹義廉殿と3000の佐竹勢が服属している故、佐竹家の本国も揺れるぞ!少なくとも常陸国の半数は立花家に靡くだろう?その時に小弓城はどうなる?」
立花将広は事実と誇張を混ぜながら盛り込んだ話しを語り、主導権を確保しています。
「将来の事だが、古河公方の足利晴氏殿に隠居して頂き、下総公方の足利晴宗殿に兄上の地位を引き継いで頂く、現在の古河公方家筆頭宿老、簗田高助殿にも隠居して頂き、簗田直助殿、貴殿が兄の地位、古河公方家の筆頭宿老を引き継いでは如何かな?
立花家は千葉家も引き込み、実現したいと考えておる!
どうだ?現在の古河公方家は室町幕府と対立しており、朝廷に反発して孤立しているだろう?
昨年は朝廷から勅使を遣わして失政を咎める戒告を受けた事を存じておろう。
簗田高助殿が優秀な人物なのは衆目が同意する事だが、古河公方家が朝廷の意向に従うのならば、立花家は古河公方家と手を取り合う事が出来る!
少し考えて見ろ!
4年前、古河公方家が大國魂神社と、我が立花家が経営する品川湊を強奪する計画をしてから、八王子滝山城を狙い、府中城攻略を計り、小弓公方家を侵略して公方様を殺害、房総半島を侵略して、全て古河公方家が野望の為に関東に争乱を起こしているではないか?
下総公方家が古河公方家を乗っ取る形で代替わりしてみないか?
千葉家が承認すれば常陸国の大半が寝返るだろう。俺から千葉家を口説いても良いぞ!」
「立花殿、酔い過ぎでありましょう。
私は兄の地位を脅かす事や、古河公方家に対して野心は持ちません。
私は兄、簗田高助を尊敬しています。
聞かなかった事に致しましょう。」
「ぶはははは!そうだな、夢を語った迄だ!
戯れ事と、聞き流してくだされ!」
「殿ぉー!相撲合戦に常陸国の兵士達が参加したいとやって来ております!
如何いたしますか?」
近習が将広に問いかけます。
「ぶはははは!全部受け入れろ!
来る者拒まず仲間になれば良いぞ!」
「はい!承知致しました!」
そして暫くすると、又近習がやって来ました。
「殿ぉー!小弓城の兵士達から相撲合戦に参加したいと申し入れが来ております!
如何いたしますか?」
「ぶはははは!全部受け入れろ!
盛り上がれば楽しいだろう!」
「はい!承知致しました!」
やがて市原城付近に設けられた相撲合戦の盛り上がりに潤井戸城や瀬又城に配置した兵士からも出場したいと打診がありました。
将広が許可すると相撲合戦の会場はさらに盛り上がりました。
「殿ぉー!鎌取城の兵士達からも出場したいと打診して参りましたー!
如何いたしますか?」
「ぶはははは!全部受け入れろー!
鎌取城の兵士は?古河公方家の派遣した部隊だろう!?皆受け入れろー!
楽しめー!」
「はい!承知致しましたー!」
さらに、上総城の上総公方家の兵士と里見家の兵士、さらには立花家宿老、奥住様の兵士からも出場したいと嘆願が来ましたが如何いたしますか?」
「ぶはははは!ぶはははは!笑いが止まらん!全部受け入れろー!みんなで楽しめー!」
「はい!承知致しましたー!」
命じられた近習も笑顔で楽しそうに去りました。簗田直助、大掾正興も酒とツマミを楽しみながら驚くばかりの状況です。
市原城本丸最上階から相撲合戦の会場が見えています。会場からは太鼓が鳴り響き、兵士達の応援と歓声が聞こえて来ます。
「どうだ?敵味方の壁を超えて、兵士達は相撲合戦を楽しんでいるじゃないか?
常陸国の兵士達を無事に家族の元に帰すには何をどうすれば良い?
兵士達の半分は農民であろう。
早く帰してやらないと田植えに間に合わぬ!
報酬の行き違いに困っている兵士を見捨てるならば、古河公方家は信用を失い、常陸国は乱れるだろう。」
「立花殿、兄、簗田高助が報酬の半分を先払い、残り半分を帰国してから支払うと聞いております。何かの行き違いの可能性があります。」
「ほぉ、ならば、古河公方家の簗田高助殿から出された銭の行方だが、財政を預かるのは誰だ?常陸国の何処かに流れて止まってる訳だな?探る方法はあるのか?
何かの行き違いでは済まされぬ!」
「ありますが、兄を疑う事になります。」
「違う!簗田高助殿なら姑息な事はせぬ!
多額の銭を懐に隠した者が誰か?
単なる行き違いなのか?
簗田直助殿、貴殿が常陸国に乗り込めば良いだろう?
不正を暴き、懸命に戦った兵士達に分配するのが正義だろう?
貴殿の留守中は停戦する事を約束するが、国境の兵力は維持したままにする。
もし、立場上、小弓城から離れる事が出来ぬならば、貴殿の代わりに大掾正興殿に頼みたい!鹿島神流の神の剣を学ぶ者ならば、必ず正義を貫き、常陸国の兵士に正当な報酬が支払われる道を探り当てるだろう!
どうだ?」
「簗田様!私に行かせて下さい!」
大掾正興が常陸国入りを願い出ました。
「大掾殿!流石鹿島神流正義の剣士!行ってくれるか?」
立花将広が嬉しそうに頷きます。
「はい!簗田様!是非行かせて下さい!
同じ常陸国の兵士が困っています。
手伝いに行かせて下さい!」
「待て!大掾殿!古河公方家の施政に介入する事は出来ぬ!立花殿、無理でございます!」
「ぶはははは!簗田殿は頭が固いぞ!
大掾殿が軍勢2000を率いて彼らを護衛して入国すれば問題無いだろう!
鹿島神宮まで送り届ける名目で、大掾正興殿に護衛を頼みたい!
簗田殿!護衛ついでに故郷に滞在する名目ならば暫く真相解明が可能であろう。
鹿島神宮や、鹿島神流の剣士の繋がりを辿れば打開策があるだろう?」
「承知した!流石だ!泥酔軍師殿!
酔いが廻っても頭が冴えておられる!
なれど、停戦協定の書面などは残せません!
貴殿に対面しただけでも疑われます!」
「ぶはははは!先月の対面した和議の席の時、泥酔するまで呑んだから噂が出たんだな?」
「その通り、嫌な噂が出ました。
今回も貴殿に呑まされたので疑われましょう、停戦協定の書面には署名出来ませんぞ!」
「ぶはははは!それは済まなかった!
停戦協定は書面にせぬ!
互いの信義を信じて、暫定的に6月末迄を停戦期間にするぞ!
田植えが終わるまで戦をせぬ!
その停戦開けには暑くて戦する事は出来ぬだろう。自然に秋まで停戦だ!
但し、小弓城及び下総公方家領内に限るそ!千葉家や古河公方軍の軍勢が動くなら容赦無く叩くぞ!」
「はい、6月迄の停戦、承知しましたぞ!」
「それから、簗田殿、大掾殿にお願いしたい事がありましてなぁ、先月、貴殿らとの戦いの最中、佐竹義廉殿と兵士達を味方に引き抜いてしまったが、彼らの内、農民と一般兵士で常陸国に帰りたい者がおります。
彼らの罪を問わず、家族の元へ帰してやれないだろうか?この通りだ!」
簗田直助、大掾正興のまえに土下座する立花将広の姿がありました。
「立花殿!顔を上げて下され!
無事に家族に逢わせます!
罪にも問いません!
大掾正興に預けますのでご安心くだされ!」
「ぶはははは!それは有り難い!
それでは佐竹の兵士達を頼みます!
さぁ、我らも相撲合戦を見に参ろう!」
三人が城外の相撲合戦を観るために土俵際に席を設けました。
立花将広、簗田直助、大掾正興が訪れると兵士達が拍手で迎えます。
「エイ!トウ!エイ!
エイ!トウ!エイ!
エイ!トウ!エイ!
エイ!トウ!エイ!」
気合いを高める声が響き、相撲合戦は三名の観戦に盛り上がります。
土俵の中央で甲冑を装備したまま、武器は持たず、両者は腰に縄を巻いています。縄に目印の赤、白の布を巻いて目印とします。
互いの腰に巻いた縄に手を回し、モンゴル相撲と同じく両手で四つに組んだ形で行司が両者の背中を叩き、戦いが始まります。
相撲合戦は盛り上がり、勇壮な戦いに拍手と歓声が響きます。5名対5名の団体戦は熱戦が続き、勝者に10貫(100万円)が渡されて大騒ぎになりました。
軈て立花将広の提案で立花家、上総公方家、下総公方家、里見家、古河公方家、常陸国勢から代表を選び、団体戦が始まりました。
熱戦が続いた末、決勝戦は立花家と常陸国勢の両者になりました。
敵味方で戦場で戦った兵士達が相撲で勝負となります。互角の戦いが続き、最後の大将戦に常陸勢の大将が勝利して感動の幕切れになりました。最後に勝利を決めたのは小弓城に常陸勢の代表て訪れた山入義友でした。
「勝ったぞー!」
両腕を上げて常陸勢の兵士達に勝利の雄叫びを上げました。
勝利した常陸勢は抱き合って喜び、観客の兵士達も互いの熱戦に拍手を送ります。
そして、立花将広が優勝した常陸勢の兵士、大将の山入義友の手を握り優勝を讃えました。
立花将広は土俵の廻りに集まった兵士達に呼び掛けます。
「古河公方家の兵士達!立花家の兵士達!下総公方家の兵士達、上総公方家の兵士達!里見家の兵士達!常陸国の兵士達!
本日の相撲合戦は見事な戦いであったー!」
「うおーぉー!!おぉー!」
兵士達も興奮して答えます。
「立花家は、優勝した常陸国の兵士達に!
餞別としてー!10倍の報奨金、100貫(1000万円)と3日分の兵糧を与える!」
「うわぁー!うおーぉー!!」
会場の兵士達が盛り上がりました。
会場に馬に引かれた報奨金と米俵60俵と味噌樽、漬物樽ががやって来ました。
常陸国勢5000が3日食べる量を上回ります。
「本日の様な日が来る事を願う!
また、いつの日か、笑顔で逢おうぞー!」
「うおーぉー!!うおーぉー!!」
会場から歓声が上がります。
「エイ!トウ!エイ!
エイ!トウ!エイ!
エイ!トウ!エイ!
エイ!トウ!エイ!」
兵士達は気持ちが高ぶり、掛け声を上げて互いの本心を表しました。
本当は戦いたく無い、それが本心です。
立花将広は山入義友に簗田直助と常陸勢の帰国の段取りが出来た事、大掾正興の軍勢が帰国までの護衛に同行する事、大掾正興が報奨支払いの件の究明に携わる事を伝えました。
山入義友は平伏して感謝を述べました。
将広に別れの挨拶を済ませると義友は仲間に帰国が叶う事を知らせ、常陸勢の兵士達は喜びを分かち合いました。
敵味方数万人の兵士を巻き込んだ相撲合戦が終わりました。
立花将広は簗田直助、大掾正興を見送りました。
そこに、先月の戦いに古河公方軍から引き抜いた佐竹義廉が現れました。
立花将広の近習から常陸国に帰国を希望する兵士達の段取りが出来たと聞いて挨拶に訪れました。
「将広様!この度は帰国希望者の段取りをして頂き、誠に感謝致します!」
「ぶはははは!上手く便乗できたから、明朝、小弓城に向かうが良い、今宵は呑み過ぎぬ程度に別れの宴を楽しんでくれ!
それで、帰国希望者はどれくらいなんだ?」
「はい、およそ1000にございます。」
「明日、常陸国出身の大掾正興殿が2000の手勢を率いて常陸国勢を護衛して帰国する。大掾正興殿と帰国希望者1000の兵士は合流して帰国出来る事になった。
簗田直助殿に彼らの保護を依頼した故、帰国しても裁かれる事が無いだろう。
残る指揮官達と2000の兵士達は立花家が全て面倒を見るぞ!」
「はい、有り難き幸せに存じます。」
「宜しく頼むぞ!
まず、上総公方家から潤井戸城、瀬又城、周辺の警備を依頼されてる故、下総公方家、千葉家との国境の何れかの要所を任せる事になるぞ!正式には上総公方家を支援している立花家の駐留軍総大将、奥住利政と検討して決まるだろう。
それから、俸給についてだが、立花家は月給制である。毎月定額が支払われるから生活は安定する。戦の場合には戦場手当が加算される。戦いの功労者、貢献度の高い人物や部隊には各々特別報奨があるから励みになるだろう。貴殿達が服属してから今までの貢献に対して必ず加算された報酬があるから心配は要らぬぞ!」
「はい!有り難き幸せ、我が身の独断で佐竹本家の意向を無視して立花家に随身致しました。いつしか、佐竹本家を立花家に従わせたいと思います。」
「ぶはははは!武士は相身互いだろう?
立花家が困った時に力を貸してくれ!
この先、常陸国が荒れそうな気がする。
常陸勢の兵士達の無事と佐竹領内へ帰国する仲間の無事を祈ろう。」
「はい!無事に家族に…」
佐竹義廉の目から涙が溢れました。
自分の独断で立花家に服属したため、古河公方家に疑われた若き当主、佐竹義昭は古河城に預けられ、人質状態になりました。
義廉は自分の選択が間違っているかもしれない恐怖を抱えていました。
「義廉!俺が誘った為に、お前と佐竹の兵士達の人生を狂わせてしまった!それ故、俺が全力でお前達を守るぞ!」
義廉の手を握ると、義廉は前を向く勇気が湧きました。
「有り難き幸せにございます。」
立花将広は佐竹義廉の心を掴みました。
相撲合戦を通じて多数の兵士達の心を掴みました。泥酔魔術が炸裂しました。
夕刻、相撲合戦の後片付けが終わると立花将広は嫡男、立花頼将を呼びました。
「頼将!本日はご苦労だった!急な事ながら、見事に取り仕切ったじゃないか?」
「はい!多数の仲間に頼りました。
彼らのお陰です!」
「ぶはははは!謙虚だな、仲間に助けて貰え!仲間を大切にすれば大きな事も出来る!
おい、何か仕掛けたか?
参加者が多かったぞ?
敵の兵士が参加するとは思わなかったぞ!」
「はい!仕掛けました!
敵味方に関係無く、立花将広の名前で相撲合戦の参加を呼び掛けました!
父上の名前で呼び掛けると抜群の効果がありました!」
「ぶはははは!そーか!見事だ!
楽しかったぞ!」
相撲合戦が思いの外、盛り上がりました。
立花将広の魔術と嫡男、立花頼将の仕掛けが相乗効果を生みました。




