１５４６年(天文１５年)５月８日、東方より千葉家の援軍襲来！
簗田高助は千葉家の兵力再建を早める為、真言宗の寺院を中心に僧兵の協力を取り付け、小野田城攻略後の備えに千葉家の軍勢を隠していました。
１５４６年(天文１５年)５月８日
立花義弘の軍勢９０００は古河公方軍が奪った小野田城に向かいます。
小野田城の西に１０００、北へ１０００の軍勢を先行させて古河公方軍が援軍を派遣する道筋を塞ぎました。
やがて小野田城に近付くと、小高い山の上に古河公方軍を示す金色の日の丸が掲げられています。
「エイ！トウ！エイ！
エイ！トウ！エイ！
エイ！トウ！エイ！
エイ！トウ！エイ！」
小野田城を守る宇佐美勢が声を挙げて気合いを示します。
立花義弘の軍勢４０００が小野田城の西側に廻りました。伊集院忠久の軍勢３０００が小野田城の南に廻りました。
周囲は水田と畑と小さな丘と森林に囲まれています。
小野田城は城内に籠る５００の守備兵力と城の東西に宇佐美勢が展開しています。
立花義弘の軍勢と伊集院忠久の軍勢が迫ると場外の宇佐美勢はジリジリと後退します。
接触を避ける様子に立花義弘の軍勢と伊集院忠久の軍勢が城攻めに転換すると妨害するかの様に戦います。
追えば引き、宇佐美勢は消極的な時間稼ぎの様子を見せました。
その時、突然、南から伊集院勢に迫る軍勢がありました。千葉家の重臣、大須賀正成が率いる５０００の軍勢が包囲の態勢で迫ります。
さらに立花義弘の軍勢の南から千葉家の重臣、原胤長が率いる１２０００の軍勢が包囲する態勢で迫りました。
千葉家では４月の上旬に上総の国、市原城周辺にて立花将広が率いる軍勢に大敗していました。簗田高助は古河公方家の配下の最大の大名、千葉家の再建の為、仏教寺院の協力を取り付けて兵力の補充に成功しました。
千葉家の領内では真言宗が圧倒的に多数派を占めています。簗田一族は下総国の真言宗の要職に就いている者が多数存在しています。
千葉家から３０００、僧兵１４０００の動員が可能になりました。
小野田城に立花家の軍勢が進撃中と、宇佐美勢から知らされた大須賀勢５０００は小野田城から南東５キロの八千代城から進撃しています。
原勢１２０００は小野田城の宇佐美勢から立花家の軍勢接近中と知らせを受て小野田城の南５キロの吉橋城から救援に駆けつけました。
小野田城を攻撃していた立花義弘、伊集院忠久の軍勢は千葉家の軍勢１７０００の包囲にさらされる事になりました。
─立花義弘、側近─
「若君！丸に九曜紋！千葉家の軍勢に相違ありません！敵は大軍です！囲まれる前に脱出しましょう！」
「待て！まず、西と北に向かわせた軍勢達に撤退の伝令を出せ！彼らを見捨ててはならぬ！」
「はい！伝令を出します！」
立花義弘は危機にも落ち着いて指示を出します。伊集院勢に対して落ち着いて義弘の軍勢と合流する様に指示しました。
小野田城の周辺の道筋は狭く、千葉家の大軍は水田や畑を踏み荒らして立花家の軍勢を包囲に掛かります。
広く開けた場所は限られ、一気に包囲出来る訳ではありません。
「焦るな！固まれ！分散するな！」
立花義弘、伊集院忠久は廻りの兵士に声を掛けながら退避します。
「立花義弘を討ち取れー！」
「伊集院忠久を討ち取れー！」
千葉家の軍勢は僧兵部隊が主力となり、弓、長槍、に加えて装備には薙刀、棍棒、金棒と独特の武器が使われます。
棍棒と金棒の破壊力は立花家の軍勢の長槍を破壊して威力を発揮しました。
立花軍は弓矢の連射で棍棒と金棒に対抗します。
接近する僧兵部隊に弓矢の雨を浴びせながら退避します。
その戦場に佐津間城から高城勢の４０００が駆けつけ、退避する立花軍の支援に乱入しました。
高城勢は小野田城の西側に布陣した立花義國の軍勢１０００の退却を支え、さらに小野田城の北側に布陣した伊集院勢の１０００の軍勢が退却する支援を務めます。
「怯まず進めー！今こそ恩義を返す時だー！」
高城義春は兵士達を鼓舞して叫びます。
立花軍の退却を支え、危険を犯して殿軍の役目を果たそうとしました。
千葉家の軍勢は高城義春の軍勢を確認すると、２年前に千葉家を裏切り、立花家に従った怒りが込み上げます。
「高城義春を許すなー！」
「裏切り者！高城義春を討ち取れー！」
「うぉー！」
進軍の太鼓が響き、千葉家の軍勢が勢いを増して高城勢に集まりました。
原勢の一部と大須賀勢の一部が高城勢に殺到した為、伊集院勢が大須賀勢の包囲から抜け出します。
しかし、原勢の一部が伊集院勢の背後を追撃します。伊集院勢は立花義弘の軍勢から離れて退却を始めます。
伊集院忠久は立花義弘の軍勢を救う為に原勢の大軍を引き付けるつもりでした。
その様子に気がついた立花義弘は味方を励まし、叫びます。
「伊集院勢を助けるぞー！」
「押し返せー！」
周囲の兵士と一斉に義弘自らも弓矢の連射で僧兵を薙ぎ倒し、道を切り開き、長槍部隊と交互に息を合わせて進み、伊集院勢と合流を果たしました。
義弘が奮戦する伊集院忠久の姿を見つけ、馬を走らせて駆け寄ります。
伊集院忠久は
─立花義弘、伊集院忠久─
「忠久ぁー！」
「若君！何故引き返されたのです！」
「馬鹿者！原勢を引き付けて死ぬつもりだろーが、そうはさせぬ！
死ぬ時は一緒に死ぬぞ！」
「若君…」
周囲の兵士達は両者が互いを救う為にした事を理解して感激しました。
しかし、状況は逼迫しています。
原勢の包囲は厚くなり、大須賀勢も追い付いて包囲に掛かります。
「忠久！もう一人馬鹿者が居るぞ！
高城義春の軍勢を救わなければ男が廃る！
救援に来てくれた高城勢を救いに参るぞ！
全軍北へ移動！高城勢を救えー！」
「おぉー！」
周囲の兵士達が声を挙げました。
「エイ！トウ！エイ！
エイ！トウ！エイ！
エイ！トウ！エイ！
エイ！トウ！エイ！」
義弘は兵士に掛け声を挙げさせて周囲の兵士を集めながら、原勢、大須賀勢の追撃を受
け流して、高城勢に合流を果たしました。
混乱の最中、義弘は高城義春の無事な姿を目にしました。
乱戦の中にあり、簡単に義春の側に近寄れる状況にありません。
義弘は伝令を出して全軍で南へ突破する事を伝えます。
伝令は高城義春が指示を承諾したと報告しました。
小野田城の周囲２キロ圏内に両軍３５０００の兵士が集まり、古河公方軍２２０００、劣勢の立花軍１３０００が包囲されています。
立花軍は西へ１キロ程移動出来れば佐津間城が近くに有り、立花軍の支配地域へ逃げ込む事が可能です。
しかし、敵の包囲は西側に集中すると予想した義弘は南へ進む方が突破出来る可能性が高いと決断しています。
「怯まず進めー！」
弓矢で連射だ！
棍棒と金棒を持つ僧兵を狙えー！」
立花義弘は兵士達を鼓舞しながら指示を出して進みます。
僧兵部隊の棍棒と金棒の破壊力は脅威でした。力自慢の大柄の僧兵集団にまともに立ち向かうのは危険でした。
立花義弘は徹底して弓矢の連射で彼らの戦力を低下させて突破を計りました。
やがて立花義弘、伊集院忠久、高城義春の軍勢は敵の包囲を破り、追撃を受けながら各々南へ退避するに至ります。
その頃になり、西から立花義國の先鋒部隊が現れます。
午後１７時すぎ、夕日を浴びて立花家の軍旗を掲げた福島正義の軍勢４０００、さらに後続の軍勢が戦場付近に迫ります。
「エイ！トウ！エイ！
エイ！トウ！エイ！
エイ！トウ！エイ！
エイ！トウ！エイ！」
援軍到着を戦場に知らせる為に、気合いを込めた掛け声を出しながら、千葉家の軍勢に迫りました。
原勢、大須賀勢は追撃を諦め、立花義國の援軍に腹背を攻撃される事を避けて、小野田城方面に撤収を始めました。
戦場に到着した立花義國の目に入ったのは戦場に残された多数の兵士達の亡骸でした。
古河公方軍の亡骸より遥かに立花家の兵士達の亡骸が多く、弟、義弘の軍勢と合流したのは日没後になり、義國は無事だった弟の姿を確認して安堵しました。
─立花義國、立花義弘─
「義弘！無事で良かった！
心配したぞ！」
「兄上、負けました。簗田高助が千葉家の軍勢を呼び込むとは…しかも、僧兵の大軍を集めて来るとは…包囲を破るのがやっとでした。」
「義弘、済まぬ！
俺が簗田高助の策を見破れなかったのだ。
負けたのは俺の失態だ。
多数の死傷者を出したのは俺の責任だ…」
「兄上、僧兵の棍棒と金棒の破壊力は長槍を粉砕します。力自慢の力士の様な大柄な僧兵はかなりの強者です。
弓矢の連射で倒すしかありません！」
「そうか、侮れぬ強さを持つ僧兵の大軍が相手となれば、厳しい戦いになる。
戦い方を練り直す事が必要がある様だな？」
戦場では日没後も松明を集めて死傷者の収容が続いています。
主だった武将を集めて軍議を開く事になりました。
小野田城は簗田高助が仕掛けた罠でした。
簗田高助と立花義國の腹の探り合いは簗田高助の快勝に終わりました。
昨日大活躍だった古河公方軍の僧兵達は休息出来た事で明日から手強い戦力になります。
簗田高助は次にどんな策を使うのでしょうか？
