1546年(天文15年)5月7日、古河公方軍、1日で7つの城を攻略!
藤ケ谷城に危機が迫りました。
古河公方軍は綾部勢と真言宗勢の大軍の攻撃にさらされました。
高城義春は藤ケ谷城から撤退して佐津間城に退避する事を決意します。
1546年(天文15年)5月7日
藤ケ谷城からの撤退を決断した高城義春は城主、藤ケ谷正勝に伝令を送りました。
必ず城を取り返す事を約束するから一緒に佐津間城へ撤退する様にと指示しました。
藤ケ谷正勝は高城義春を無事に佐津間城に撤退させる為、殿軍を任せて頂けるなら承知すると回答します。
伝令の使者は困惑します。
即答出来ない使者に対して藤ケ谷正勝は笑いながら話します。
「勝手ながら殿軍を引き受けます。地勢に詳しい我らに任せて佐津間城で会いましょうと、お殿様に伝えてください。」
伝令の使者は正勝の言葉を高城義春に伝えました。
高城義春は、正勝の配慮に驚きますが、義春は自らが東から迫る戦いの最前線に出向いて
殿軍を勤めました。
東から攻撃する真言宗勢を押さえて、藤ケ谷正勝達が退避する時間を稼ぐ為でした。
やがて藤ケ谷正勝と城兵が城の南から退避する時に見えたのは高城義春の旗本の軍勢が真言宗勢を押さえて戦う姿でした。
「殿!間も無く南から包囲されてしまいます!急ぎ撤退しましょう!」
側近が高城義春に叫びます。
しかし、高城義春は藤ケ谷正勝達らの城兵を逃がす時間を稼いでいました。
「あと一息粘るぞ!
正勝達が退避する時間を稼ぐぞ!」
叫ぶ高城義春に退避して来た藤ケ谷正勝と城兵300が駆けつけます。
「殿ぉー!」
藤ケ谷正勝が叫びながら城兵を引き連れて合流します。
「正勝!一緒に佐津間城まで退避するぞ!」
「殿!…」
藤ケ谷正勝と城兵を見捨てぬ主人に一同感激する間も無く、真言宗勢は厳しい攻撃を仕掛けて来ます。
逆茂木や防御柵を金棒と棍棒で破壊して陣地の奥まで侵入すると、死ぬ事を恐れず、集団で念仏を唱えながらゆっくり前進する姿は不気味でした。
高城義春は接近戦を避けて弓矢で僧兵の金棒と棍棒部隊を狙わせます。
金棒と棍棒の破壊力が強く、長槍で対戦しても敵わない事が解りました。
そこに南から迫る真言宗勢7000が迫り、高城義春の軍勢は東と南から包囲されました。
「殿様ぁー!」
南から迫る真言宗勢の勢いを弾く集団が現れました。小森城から退避して陣地の守備を任されていた小森和正と400の兵士達でした。
彼らは先に退避を命じられていましたが、高城義春が自ら殿軍をしていると聞きつけて引き返して義春を探していました。
高城義春は藤ケ谷正勝と小森和正の兵士と合流して退避を続けました。
義春の旗本1000と藤ケ谷正勝300、小森和正400、合計1700に過ぎません。真言宗勢は東から7000、南から7000が包囲に掛かります。
苦戦しながらの退避になりました。
日没の時間が迫ります。わずかな松明の明かりを頼りに佐津間城に向かいます。背後からは多数の松明を用意している真言宗勢が追撃します。
そこへ西から本多広孝の軍勢が現れました。
「太鼓を叩けー!軍旗を掲げろ!」
多数の松明を掲げて数千の軍勢が援軍に現れた様な演出をしています。
さらに掛け声を挙げます。
「エイ!トウ!エイ!
エイ!トウ!エイ!
エイ!トウ!エイ!
エイ!トウ!エイ!」
日没が迫り、薄暮の状況では真言宗勢も本多広孝の軍勢の兵力は把握出来ない状況です。
真言宗勢は立花家の援軍の先鋒部隊と感じて、更なる援軍が来ると想定して追撃を停止しました。
本多広孝は自身が守る高柳城に古河公方軍、宇佐美勢5000と野田勢5000が迫りましたが、本格的な攻撃をする意思が無いと判断して、少数ながら1000の兵力を引き連れて救援に駆けつけました。
─本多広孝、高城義春─
「高城殿、無事で何よりでござる。
佐津間城へお入りください。」
「本多殿、救援に来て頂き、九死に一生を得ました。感謝致します!」
「高城殿、国府台湊に上陸した立花義弘様の軍勢が佐津間城の南の鎌ヶ谷城に向かわれております。今夜中に 9000の軍勢が到着すると聞いております。
更に、松戸城には義國様(立花義國)の軍勢が上陸なされました。
明日には状況が良くなりますぞ!」
「はい、それを伺い安堵致しました。
我らは佐津間城に向かいます。」
「こちらは高柳城に戻ります。
高城殿、佐津間城から反撃出来る準備をお願い致します。鎌ヶ谷城に到着する立花義弘様は立花家の援軍の副将と聞いております。
義弘様から指示があれば、その指示を優先して構いません。
本日より、我らは総大将、立花義國様、副将、立花義弘様の指揮下に入ります。」
「本多殿、承知致しました。
これにて失礼致します!」
佐津間城には高城義春、藤ケ谷正勝、小森和正も無事に到着しました。
藤ケ谷城は陥落、真言宗勢は1日に5つの城を攻略する大きな実績を果たしました。
─古河公方軍本陣、柏城─
─足利晴氏、簗田高助─
本陣に伝令が到着、真言宗勢が綾部勢と協力して藤ケ谷城を陥落させた事が伝えられました。
「高助!真言宗勢は凄いじゃないか?
本日だけで、5つの城を攻略したぞ!
曹洞宗勢も2つを加えて7つだぞ!
高助の策は見事!完璧だぞ!」
「公方様、順調に見えますが、油断出来ません。僧兵の軍勢は初陣を飾りましたが、初めての戦で疲れもありましょう。
明朝、僧兵達の様子を確認してから動く事になります。」
「そうか、慣れぬ戦で僧兵達には疲れが残るかもしれぬのだな?流石、高助は先が見えておる。
高助、明日も頼むぞ!」
既に祝杯を手にしてご機嫌な晴氏は簗田高助に丸投げで、勝利を祝いました。
古河公方軍は真言宗勢と曹洞宗勢の活躍で7つの城を攻略して優勢な状況で1日が終わりました。
僧兵達は明日も元気に動けるのでしょうか?
僧兵達の疲労の具合が気になります。




