1546年(天文15年)5月7日、古河公方家、簗田高助の知謀!
立花義國は鉢形城を攻略して川越城に凱旋しました。入間川河川敷にて勝利の宴を終えると、父、義秀から下総国、柏方面の遠征を命じられました。
対する古河公方家、筆頭宿老、簗田高助には秘策がありました。
1546年(天文15年)5月7日
─早暁、古河公方家本陣、柏城─
─足利晴氏、簗田高助─
「公方様、昨日、常陸国より到着した25000の僧兵達を本日から最前線に投入します。
今は手賀沼の北側に潜ませております故、立花家も未だ知らぬと思われます。」
「高助、凄いじゃないか?
25000の僧兵なんて聞いた事が無いぞ!
敵の兵力は25000、こちらは49000だ!勝負に出るのか?」
「はい、兵力差を生かして仕掛けます。
立花家の援軍が来る前に決定的な打撃を与えるつもりです。」
「作戦は高助に任せる!
それにしても凄い手腕だな?
どんな手段で味方に導いたんだ?」
「公方様、都の周辺には争乱が続き、帝や朝廷の命令にも従わぬ程の兵力を備えた仏教宗派が多数ございます。
興福寺、石山本願寺、比叡山延暦寺等、数千の僧兵軍団を擁してる宗派もございます。
それらに倣い、関東の仏教寺院も戦乱を生き抜く為、武装しております。
古河城周辺の寺院も武装しており、梁田一族にも多数の縁者が僧侶となっておりました。
その縁で声掛けして集めたのでございます。」
「高助、詳しく教えてくれ!
どんな手段で25000もの僧兵を集めたんだ?」
「公方様、古河公方家の領内、常陸国では真言宗の寺院が4割を占めております。その常陸国真言宗、元締めとなる寺院の住職に簗田一族の者が就任しております。
その者を通して真言宗、天台宗、曹洞宗、浄土宗、日蓮宗の筆頭住職を集めて味方になる利点を勧めました。
①寺領加増
②利根川、霞ヶ浦等の水運利権の提供
③僧侶の官位の朝廷工作
④足利一族、簗田一族との婚姻
大きく4つに絞り、協力を取り付けました。結果として常陸国800余の寺院から30名ずつ兵力を提供して戴き、25000の兵力となりました。
手賀沼の北側に到着した僧兵は2つの軍団に分けております。
西側に曹洞宗を主力にした浄土宗、日蓮宗の軍団10000、東側に真言宗を主力に天台宗との軍団15000を隠しております。」
「高助、それにしても簗田一族には凄い住職が居たもんだな?
巧く僧侶の欲望を掴んだと見える!
僧侶にしておくのも勿体無いぞ!」
「公方様、それより、常陸国の佐竹家が上総国の戦いで立花家に寝返った様です。
その為か、佐竹領内の寺院は僧兵の出兵をしておりません。
この戦いを済ませたら、佐竹征伐を考えねばなりません。」
「解った。佐竹征伐となるなら、僧兵達を先鋒にすれば、こちらの消耗を避けられそうだな。便利に使っても良かろう。」
「公方様、佐竹征伐の先鋒に僧兵?!
良策にございます!」
さて、この日の早暁から動く古河公方家の頭脳、簗田高助は軍議を召集します。
軍議が始まると簗田高助から川越上杉家、前橋上杉家の敗退と立花義國が大軍を率いて柏方面に向かってる事を知らせました。
立花義國の軍勢は昨夜、八潮城に到着した事が判明しています。
推定20000前後の大軍が昼過ぎには小金城か、東松戸城周辺に現れると想定して作戦を練りました。
①松崎城の野田勢5000が南へ2里(8キロ)の小金城を攻撃する。
目的は立花家畠山勢12000を小金城救援に引き込む事。
②柏城の簗田高助の軍勢10000が南へ1里弱(3キロ)の高柳城、南へ1里強(5キロ)の藤ケ谷城を攻撃する。
目的は立花家、本多勢12000を高柳城、藤ケ谷城救援に引き込む事。
③曹洞宗勢10000は畠山勢が手薄にした花輪城、流山城に進出、攻略を目指す。
④真言宗勢15000は本多勢が手薄にした東部の鷺野谷城、手賀城、岩井城攻略を目指す。
簗田高助は柏城周辺の地図を広げて諸将に解りやすく説明しました。
作戦は単純に戦場の中央に立花家の軍勢を引き込み、手薄になった東西の複数の城を攻略を目指します。
そこで、古河公方、足利晴氏が質問します。
「高助?本日の昼過ぎには立花家の援軍が到着するんだろ?
援軍が来ても勝てるのか?」
「公方様、実は下野国の寺院の協力も取り付けました。下野国の僧兵が岩槻城周辺に終結します。岩槻太田家の太田資正と下野国の諸将に軍勢を委ね、草加城、八潮城方面に南下させます。総勢30000程になりましょう。
数日中に南下して我々と連携致します!」
「高助!凄いぞ!さらに30000の軍勢を産み出すなんて神業じゃないか?」
「ぶはははは!公方様、褒めすぎです。
全ては古河公方家の威光が有っての業にございます。
公方様、油断は禁物です。
川越城上杉家、鉢形藤田家は優勢に戦いながら立花家の反撃に敗れました。
我々も直接対決では優勢に有りながら逆襲されて苦杯を喫しております。
今度こそ、勝たねばなりません!」
「そうだな、高助の言う通りだ!
今度こそ、立花家に勝つぞ!」
「おぉー!」
その場の諸将が気合いの声をあげました。
古河公方家の軍勢の士気が高まりました。
古河公方家の実質的権力者、簗田高助は裕福な寺院と交渉して僧兵を味方にしました。
常陸国、下野国の僧兵を合わせると5万を越える軍勢になります。
立花家の苦戦が予想されます。




