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1546年(天文15年)5月3日、立花義弘は秩父藤田家に大きな支援を申し入れします。

鉢形城の戦いが終わりました。

攻撃部隊の総大将、立花義弘は周辺の安定を保つ為、城下町の復興と秩父藤田家の安定を支える支援を表明します。

1546年(天文15年)5月3日


─早朝、鉢形城─


激しい戦いが終わった鉢形城では、城兵達の帰宅が始まりました。

籠城していた3500の兵士は死者500、負傷者900、損耗率は40%と高い数値になりました。

死者は鉢形城付近に弔われて埋葬されます。埋葬された場所には慰霊碑を建てる事になりました。

負傷者は鉢形城内と周辺の寺院にて治療する事になりました。

秩父藤田家、立花家や同盟大名、三田家、大石家の軍勢の合計した死者は400、負傷者が800、損耗率は4%となりました。

戦いが長引けばさらに多数の犠牲が発生したに違いありません。


─立花義弘、藤田康邦─


「藤田殿、奪われた地位と領地は奪還出来ました。最後は相手も立派な戦い振りでした。

思いの外、鉢形城の将兵の結束力は固く藤田友綱殿、児玉勝長殿が将兵達に支持されていた事がわかりました。」


「はい、それにつきましては叔父の藤田浄心に指摘されました。

鉢形城の結束が強かったのは日陰の者に光を与えたからだと諭されました。

鉢形藤田家では多くの次男や三男など、過去に報われていなかった者達に仕事を与え、抜擢していたと聞きました。

我が身に振り返り、日陰の地位にある者に気を配っておりませんでした。

これより改める様に気を配るつもりでございます。」


「藤田殿、立花家でも同様に気を配らねばと思います。さて、阿佐美信隆殿の待遇をどうなさいますかな?」


「はい、先日服属した猪俣信綱と同じく、阿佐美信隆も宿老として迎えます。」


「それは善き配置になりましょう。

鉢形藤田家の重臣2人を迎えて藤田家が元通りの結束となれば立花家も大歓迎です。

さて、寄居、小川方面の吉野城、中城、青山城の3つの城は立花家で攻略しました。

こちらも秩父藤田家にお返しいたします。

鉢形城の後始末が終わるまで当家にて管理しておきましょう。

落ち着いたら受け取りをお願い致します。」


「立花様、なんと申し上げたら宜しいのでしょうか。立花様、藤田家は立花家を主家と奉じてお仕え致します!

お父上、立花義秀様にご挨拶の為、府中まで参りたいと思います!」


「藤田殿、親父の意向は秩父藤田は同盟大名として大切にする事で、臣従を求めてはおりません。お気持ちだけで充分です。」


「承知致しました。秩父藤田家は立花家の為なら命を惜しまぬと、それだけでもご承知下さい。」


「はい、藤田殿、親父(立花義秀)にはお気持ちを伝えておきます。それから、鉢形城に立花家の駐留軍を配置させて頂きたいのですが如何でしょう?」


「それは是非に、こちらからお願いしたいと考えておりました。

ご要望があれば何なりと、お申し付けください。本丸に駐留して頂いてもかまいません。」


「いえ、本丸は遠慮致します。当面は雨さえしのげれば構いません。まずは城下町の再生に必要な兵士と警備の兵士として2000の兵力を駐留させます。

城下町の再生を優先にしますので藤田家からも必要な人材の提供をお願い致します。

さらに鉢形城の修復が必要な場所も応急措置を致します。

城下町の再生と鉢形城の修復や駐留軍の経費は全て立花家で負担いたします。

それから藤田家には諸々必要な経費がありましょう。

父、立花義秀より、1万貫(10億円)を預かっております。秩父から算出する石灰石、砂金、硫黄、湯の花、金、銀、銅等の先払いとしてお渡し致しますので、宜しくお願い致します。」


「立花様、なんと豪快な…有り難くて何とも…言葉が見つからぬほど感謝申し上げます!」


「単なる先払いです。気になさらず、ご自由にお使いください。

秩父藤田領は前橋上杉家、松山上杉家との国境にあり、立花家にとって頼もしい同盟大名として期待しています。」


「それでは有り難く使わせて頂きます。

立花義秀様にくれぐれも宜しくお伝え下さい。」


立花義弘、藤田康邦の2人で大まかな方針が決まりました。

細部に関しては秩父の近衛中将府主将、岡本政國と秩父藤田家、筆頭宿老、園田清正との折衝に任せる事になりました。


秩父藤田家には既に秩父神社の周辺に近衛中将府の駐留軍3000が常駐しています。さらに鉢形城には更に3000の駐留軍が常駐する事になりました。

秩父藤田家は鉢形藤田家の兵力を吸収した事により、常備軍の再編成が急がれます。

領民から募集した秩父防衛隊は臨時召集の兵士に過ぎません。正規軍兵士への再教育が必要でした。

秩父から石灰石や硫黄、鉱物資源を立花家が先払いで現金を与えた事により、5000程の軍勢を確保可能となりました。

今後も立花家が支援する限り安定的に兵力維持が見込まれます。


早朝から忙しく後片付けを済ませ、立花義弘は勝利した諸将と朝食会を開きました。

松千代が考案した朝粥に乾燥させた豚の角煮を混ぜた戦場飯を振る舞うと藤田家の諸将が旨いと絶賛して大層喜びました。


松千代は立花義弘の隣で諸将が旨そうに食べる姿に満足の笑みを浮かべました。

さらに梅干しの蜂蜜付けを振る舞うと諸将から絶賛されました。


松千代が藤田康邦へ訪ねます。

「藤田のおじさま、鉢形城は誰にまかせるのか決めましたか?」


「松千代様、実は悩んでおります。

立花家に相談したいと考えておりました。」


「おじさま、私心が無くて皆の気持ちや配慮ができる人が良いよね。

小前田の諏訪神社の神様は城主は青龍寺の藤田浄心殿に任せて、副城主を3名選び、輪番で持ち回りにするようにおっしゃっています。

他の城も副城主を輪番で任せて人を育てなさいと教えをいただきました。

いかがですか?」


「松千代様、諏訪神社の神様が仰るなら素直に教えに従い、早速その通りに致します。

松千代様、神様のお言葉を授けて頂きまして誠にありがとうございます。」


「おじさま、諏訪神社の神様からお導きのお話があります。

鉢形藤田家は所領内の寺院と神社から領地を削りました。

それは恵まれぬ家臣達に領地を与えたい気持ちから、心苦しく思いながら、恨まれるのを承知で行いました。

これより寺院、神社に領地を戻し、家臣達から領地の代わりに俸給を少しばかり加算して与える様にと仰られておりますが、いかがですか?」


「はい、諏訪神社の神様に従います。

寺院、神社の領地を元に戻し、領地を返上した家臣達には俸給を加算して与えます。」


「おじさま、領地を返上した家臣達の俸給に関しては経緯を諏訪の神様のお告げと知らせて下さい。全員に小前田の諏訪神社にお参りに来る様に仰られています。」


「承知致しました。諏訪神社の神様のお告げに従います。必ず家臣達にお参りさせます。」


2人の会話を聞いていた諸将達は神様と意志疎通が出来る松千代に驚きました。

朝食会が終わり、鉢形城攻撃部隊は撤収が始まりました。

藤田康邦、藤田浄心が諸将を見送ります。

秩父藤田家の軍勢が連雀曲輪の見晴らしの良い場所から感謝を込めて声を張り上げます。


「エイ!トウ!エイ!

エイ!トウ!エイ!

エイ!トウ!エイ!

エイ!トウ!エイ!」


松千代が率いる鹿島勢と総大将、立花義弘の軍勢に対しては殊更大きな声を張り上げました。


「松千代様ぁー!ありがとうございまーす!」


「義弘様ぁー!ありがとうございまーす!」


鉢形城から南東へ向かう軍勢が見えなくなるまで秩父藤田家の兵士達の声が響きます。

立花義弘の軍勢は戦勝報告の為、父、立花義秀が待つ川越城に向かいました。


鉢形城攻略を果たして立花義弘が軍勢を率いて川越城に凱旋します。

立花家が抱える関東の戦場4ヵ所の内、川越城と鉢形城の攻略が完了しました。

残るは下総国、柏方面と房総半島の2ヶ所となりました。

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