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1546年(天文15年)5月2日、鉢形城攻防戦、反撃の奇襲!?

鉢形城攻防戦、いよいよ総大将、立花義弘は総攻撃を銘じました。

城方の鉢形藤田家、筆頭宿老、児玉勝長は逆襲策を考えます。

果たして逆襲は成功するのでしょうか?

1546年(天文15年)5月2日


─鉢形藤田家、鉢形城本丸─

─藤田友綱、児玉勝長─


本丸には外曲輪、連雀曲輪の陥落が報告されました。外曲輪、連雀曲輪に立花家の軍旗と秩父藤田家の軍旗に秩父神社、三峯神社、宝登山神社の神旗までが風に靡く様子が見えています。

御殿下橋、二ノ丸橋、二ノ丸、三ノ丸の4ヵ所に攻撃され、荒川の対岸から諏訪勢、三田勢が進撃開始する様子が報告されました。

城内の兵士達は秩父神社、三峯神社、宝登山神社の神旗を見ると神様に逆らう気がして多数の兵士が不安になりました。


「勝長?敵の総攻撃が始まったみたいだが、前橋上杉家の援軍は来ないのか?」


「殿、前橋上杉家の軍勢は秩父藤田家、立花家の軍勢に大敗して壊滅しています。

殿に藤田家を継承させた恩人、筆頭宿老、長尾憲長殿が亡くなられ、後ろ楯を失いました。援軍は来ません!」


「援軍はダメか?…降伏したらどーなる?」


「降伏しても惨めな最後になりましょう。

前橋上杉家の命令で奪った当主の地位ですから、殿は秩父藤田家に恨まれております。

惨めな最後になりましょう。」


「降伏しても許されぬのか?……」


「殿、刺し違える気持ちがあれば策はございます!」


「降伏しても死ぬしか無いなら、戦うしかないだろう?やるぞ!」


「殿、敵方は優勢になり、油断が有ると思われます。敵方の総大将、立花義弘の首を狙います!」


「そんな事が出来るのか?」


「やるしかありません!立花義弘の軍勢は外曲輪を制圧しています。御殿下曲輪の橋を巡り鬩ぎ合いをしております。

優勢な敵は油断が有ると思われます。

我らは本丸を抜けて東の笹曲輪から外曲輪に廻り込み、背後から立花義弘の軍勢に攻撃致します!」


「それで勝てるのか?」


「いや、勝てはしないでしょう。

座して本丸で自害するより、立花義弘を道ずれにするか?敵に討たれるかの博打の方が少しは楽しくなりましょう。

殿は本丸に残り自害する最後か?

敵に立ち向かい死ぬのか?

好きな方をお選び下さい。」


「解った、自害はしたく無いからな、勝長!

俺も一緒に行くぞ!」


「承知致しました。

準備が出来たら直ぐに出発します!

本丸には殿の影武者を残します。」


児玉勝長は本丸に残る兵士を集め、声を掛けました。

「鉢形藤田家の兵士達よ!

我が殿、藤田友綱様が乾坤一擲、敵の総大将、立花義弘の首を取りに向かう!

これより東に向かい、笹曲輪から外曲輪に入り、立花勢の背後を奇襲する!

行くぞー!」


「おぉー!」

声を張り上げる児玉勝長に本丸の兵士達が応じました。

藤田友綱の兵力は僅かに800、本丸から東に向かい、笹曲輪から立花勢に悟られずに外曲輪へ向かいました。


藤田友綱と児玉勝長が目指す立花義弘の軍勢5000は御殿下曲輪と外曲輪を通路となる御殿下橋を巡り戦っていました。

橋を突破すれば御殿下曲輪を制圧して本丸へ進撃をするつもりです。

橋の下を流れる深沢川の東から1000、西から1000を進撃させて傾斜のきつい土手を上がり、橋を守る阿佐美信隆以下600を包囲する様に攻撃を仕掛けました。


阿佐美勢は橋に逆茂木さかもぎ土嚢どのうを重ね、橋の真ん中に陣地を構え、弓矢と石礫いしつぶてを投げて橋を守りました。


橋の東西両側から土手を登る立花勢には弓矢と石礫の雨を浴びせます。

傾斜のきつい土手を上がる立花勢は楯を使う事が出来ず、負傷者が続出します。

土手を登った先には150センチ程の竹柵が並び、侵入を妨げます。

土手を登り、漸く竹柵を超えた少数の兵士は阿佐美勢に囲まれてしまいます。

立花義弘の軍勢は苦戦していました。



─外曲輪、立花義弘、側近─

「殿!鹿島勢から投石機が2台到着しました!」


「良し!直ぐに御殿下橋の逆茂木と土嚢を吹き飛ばせ!」


立花義弘は守りの固い御殿下橋を突破する為に鹿島勢から投石機を借りました。

1台は人の頭程の石を橋上の陣地に向けて低い弾道で放ちます。

もう1台は火薬玉は高く放ち、地面に落ちて破裂しました。

「次々に放てー!」

現場の指揮官が叫びます。

投石機の直撃弾が橋の逆茂木を破壊し、土嚢の壁を崩します。

火薬玉は橋の奥に控える軍勢に上空高くから落ちて破裂、鉄片を撒き散らして多数の負傷者を出します。


やがて橋の陣地は投石機の威力で破壊され、立花義弘の軍勢は御殿下橋の陣地を突破に成功しました。


「橋を渡れー!

御殿下曲輪を制圧するぞー!」

指揮官達が寄せ手の軍勢を一斉に橋を渡らせました。

阿佐美勢の抵抗が弱まり、深沢川上流側から土手を登る軍勢も次々に土手から上がり、竹柵を超えて御殿下曲輪を包囲します。

立花義弘の軍勢4000が御殿下曲輪の攻撃を開始しました。


─外曲輪─

─藤田友綱、児玉勝長─


笹曲輪から外曲輪に潜入した藤田友綱の軍勢は立花義弘の軍勢に気付かれぬ様に接近すると斥候部隊に様子を探らせていました。

やがて、立花義弘の軍勢の大半が御殿下曲輪に攻め込み、義弘の旗本は1000程と知らせが入りました。


「殿!勝負の時が来ました!立花義弘の旗本は1000、こちらは800!

これなら立花義弘の首が狙えます!」


「そうか?勝ったら凄いぞ!」


「殿、立花義弘の首を取るが先か?

殿と私が死ぬのが先か?

時間との戦いになります。

敵は奇襲に気がつけば直ぐに援軍が来ます!

立花義弘の首だけを狙います!」


「わかった!

間も無く死んで楽になってやる!」


藤田友綱も最後の覚悟が出来ました。

二人の会話を聞いた兵士達も覚悟を決めました。死兵になった800の軍勢は物影に隠れながら接近を量ります。

見通しの良い道を避けて静かに進みました。


やがて、藤田友綱の軍勢は立花義弘の旗本の軍勢の油断を突き、先頭部隊が100メートルに迫った時でした。

矢倉から監視していた兵士が奇襲に気が付きました。

「敵襲!出会えー!」

「敵襲!出会えー!」

矢倉の監視兵は御殿下曲輪の戦いや、二ノ丸方面を監視していた為、ギリギリまで藤田友綱の軍勢に気が付きませんでした。


─立花義弘、側近─


「殿!敵の奇襲です!

味方を呼び戻します!」


「待て!慌てるな!

落ち着いて出迎えるぞ!

長槍隊!弓隊!落ち着いて密集隊形を取れ!」


義弘の旗本の危機を知らせる引き鐘を鳴らしてしまうと、旗本の兵士達が慌てて退却と誤解して部隊が崩壊する恐れがあります。

義弘は奇襲されても冷静な判断が出来ました。


義弘の旗本に接近した藤田友綱の軍勢は急ぎ長槍を揃え、200名が密集して突入を試みます。

「突っ込めー!」

「うぉーぉー!」

ここが死に場所と決めた兵士達の集団に弓矢の雨が一斉に降り注ぎますが、急な接近を許した為、連射する間も無く突入を許しました。長槍対長槍の激突は先に密集隊形を組んだ藤田友綱の軍勢が押し込み、突いて叩いて立花義弘の軍勢が押されてジリジリ下がりました。


藤田友綱の軍勢を指揮する児玉勝長はさらに軍勢を投入します。

残る600の軍勢を密集させて前進します。

密集した団子状態で押し込みを狙いました。


「密集しろ!敵を押して押し倒せー!

踏み潰せー!押し倒せー!」

児玉勝長が叫びました。

一気に押して高価な甲冑の武将を探せば直ぐに立花義弘が見つかるはずです。

「突きまくれー!叩きまくれー!」

児玉勝長の気合いに藤田勢が死ぬ事を恐れずに戦いました。


押し込まれた立花義弘の廻りに200の兵士が楯になり護りを固めていました。

その時でした。

ダダダン!「エイ!トウ!エイ!」

ダダダン!「エイ!トウ!エイ!」

ダダダン!「エイ!トウ!エイ!」

ダダダン!「エイ!トウ!エイ!」

太鼓が響き、龍魂の軍旗が風に靡きます。

松千代直属の瀬沼信勝、藤原家長、日奉宗政の騎馬兵600が現れました。


義弘の旗本の兵士が叫びます。

「龍魂の軍旗!松千代様の騎馬隊です!

援軍が来ました!」

義弘の旗本の兵士達に勇気が湧きます。

松千代が来たから絶対に大丈夫だと確信しました。


松千代の指示で2頭の空馬20組が放たれました。2頭の馬に5間(9メートル)の縄を胴回りに巻き付けて放馬します。

2頭の空馬は巾4メートルから5メートルの縄を張ったまま駆け抜ける為、密集した軍勢に放馬すると多数の負傷者が発生します。

密集した藤田友綱の軍勢に飛び込む空馬達が多数の兵士を突飛ばし、踏み潰しました。


密集隊形が崩れた軍勢に藤原家長の200騎、日奉宗政の200騎が弓矢の連射を浴びせました。

この間に立花義弘の旗本勢が立ち直り、藤田友綱の軍勢を押し返しました。

弓矢の連射と長槍隊の容赦無しの突き、叩きを喰らい藤田友綱の軍勢は散り散りに分断されてしまいます。

多数で少数を囲んで潰す立花家の戦法に鉢形藤田勢は圧倒されました。

「藤田友綱殿、討ち取ったりー!」

「児玉勝長殿、討ち取ったりー!」

鉢形藤田家当主、筆頭宿老が討ち取られ、包囲する軍勢の中から歓声があがりました。













筆頭宿老の児玉勝長は日陰だった自分を取立ててくれた前橋上杉家の筆頭宿老、長尾憲長に恩義を感じていました。

長尾憲長が亡くなり、鉢形藤田家は後ろ楯を失いました。

前橋上杉家は立花家と戦い大敗、援軍の支援はありません。

自害に追い込まれるより勝てぬ事を知りながら反撃する事を選びました。

散り際に武門の意地を貫き、鉢形藤田家の灯が消滅しました。


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